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三章 アデュー アン・ドゥ・トロワ

ラファエルが倉庫にたどり着くと、そこにはすでに宿舎ともども火がつけられていた。


あたりは白い煙が充満している。


群衆は遠巻きから半獣人を出せと叫んでいるが、団員たちはそれどころではなかった。


商売道具を持ち出し、群衆に怒りをぶつける。


避難をする象や虎、馬たちがパニックを起こさないようにするのに必死だ。


「みんなっ!」


ラファエルが倉庫の扉を押し開けると、むっとした熱気が伝わってきた。


これでは蒸し風呂だ。


マフラーを口にあて、入り口に一番近いマノンの檻に駆け寄る。


鍵は外されていて、中は無人だった。


「げほげほ、マノンさーん!」


叫んでみるも返事はない。


無事に逃げ出したのか、群衆に連れ出されたのか、ラファエルは次の檻を見て回る。


少なくともここで鍵をかけられたまま閉じ込められているというのが最悪の状況だった。


そうなっていないだけまだましだ。


奥に進むと床に座り込むエレーナの後ろ姿が見えた。


ラファエルは大きな声をだして呼びかける。


「エレー……ッ!」


エレーナはマレー熊たちの檻の前で肩をふるわせ泣いていた。


アンは紫色になった舌を出し、ぴくりとも動かない。


ドゥとトロワの二匹も彼女のそばで、やはり動くことはなかった。


「エレーナ!

 大丈夫!?」


「えぐっ、えぐっ。

 アンが、ドゥもトロワも……。

 どうして、どうして……」


「一体何があったの?」


「アンが……、アンが……」


エレーナは泣くばかりで会話にならない。


ラファエルはマレー熊たちをそばに引きよせて顔に耳を近づけ、心臓に手を当てた。


もう呼吸もしてなければ、心臓も動いていない。


「エレーナはどうして檻を出られたの?」


アンたちの檻には鍵がかかったままだが、エレーナの檻はマノンと同じく錠前が外されている。


「きょうはたまたま別の檻に……、一緒にいれば良かったのに……」


エレーナは錯乱していて答えは要領を得ない。


「いいからエレーナ、ここは危ないから、外に出よう」


「だって、みんな置いていけないにゃぁ」


「もう助からない」


「そんなことない!

 ひどいよっ。

 なんでそんなことを言うにゃっ」


「ごめん。

 でもこのままじゃエレーナも死んじゃうよ!」


ラファエルの差し出した手をエレーナは邪険に払った。


「私も一緒に死ぬにゃ」

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