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二章 マノンの物語

「……どうして?」


「さっき、劇場でアダンさんと話したんだ。

マノンさんに会いたいってアダンさんは支配人ミステルと話をしてたんだけど、支配人ミステルは身請けしないと無理だって……」


「いまさら何しに来たのよ!」


突然のマノンの叫びにラファエルは面食らった。


マノンははっと我に返る。


「ごめんなさい。ラファエルのせいではないのに」


「別にいいよ」


「でもあんな子供まで連れて……

 幸せなのを見せつけに来たというの?

 あんまり、そうあんまりだわ」


「その……アダンさんはマノンさんと同郷だと言ってたけど、よく知ってる人なの?」


「同郷……。

 そんなことを言っていたのね、あの人。

 いいわ、退屈かも知れないけれど憐れな女の身の上話に付き合ってくれる?

 あなたみたいな子供に語るなんてどうかしてるけど、誰かに聞いて欲しいの」


「僕は構わないよ。

 もっとマノンさんのことを教えて欲しい」


マノンは涙をにじませ滔々と身の上を語り出した。


「私は伊太利亜の片田舎で生まれた。

 もちろんこんな忌まわしいデパエワールではなくて、純然たる祝福された人の子としてね。

 旧家の地主だった家で両親からは愛情や誇り、様々なものを与えられて育ったわ。


 そしてアダンは幼なじみだったの。

 いつからか惹かれあってお互い結婚するものだと思っていたわ。

 そうして十七の時に婚約したの。

 彼は二十一だった。


 けれども私の幸せはそこまでだった。

 ある日突然に病気が発症した。

 最初は高熱だったわ。

 じきに歩けなくなり、体が半獣人デパエワールの症状を現しだした……。


 戦争が激化して、彼はいつのまにか出征して私の元からいなくなった。

 頼みだったはずの家族も家柄を守りたい両親は私を隔離し、やがて面倒をみかねて売りはらった。

 それからは蔑まれて、疎まれて、過去の思い出だけにすがってどうにか生きている。


 それなのに彼は……、


 私を子供の見世物にするためにわざわざ……」


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