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二章 折檻

ラファエルが急ぎ足で薄暗い倉庫に戻ると、マノンは既に檻の中にいた。


体を縛られて固い床に転がっている。


「マノンさん!

 大丈夫!?」


ラファエルの問いかけに。マノンは殴られて腫れた唇の端をわずかにあげて痛々しく笑った。


「縄をほどくからこっちにおいで」


ラファエルは檻の外から手を伸ばしたが、結び目をほどくにはもっと近くに寄ってもらわないといけなかった。


「いいのよ。このままにしといて」


「だってそんなの……。

 せめて傷の手当てをさせて。

 痛いでしょ?」


「痛くないわ、全然。

 こんなの心の痛みに比べたら、蚊に刺されたようなものよ」


「いいからこっちに来て」


ラファエルは目に涙を溜めて懇願した。見ていられなかった。


「うぅっ」


マノンが痛みに呻きながらもラファエルのそばに近づく。


化粧はあちこちはげて、赤黒いあざがいたる所に刻まれていた。


「ひどい。誰がこんなことを」


「……ショーを途中で放りだしたのだもの。当然だわ」


ラファエルは縄を解き、切り傷の消毒をした。


打ち傷については残念ながら知識がない。


医者を呼ぼうとしたが、きっと来ないからとマノンは引き留めた。


「ラファエルは優しいのね」


「こんなの当たり前じゃないか」


「私はショーに穴を開けたの。

 サーカスの評判が悪くなって稼ぎが落ちるかも知れない。

 他の団員たちが怒るのも当然よ」


「それは違うよ。

 今日はエマさんがとっても良かったんだ。

 だから評判は悪くならない。

 だからマノンさんをこんな風にいじめる必要なんてない」


「ふふ。ラファエルらしいわ」


マノンはじっと上目遣いでラファエルを見た。


痛みで潤んだ瞳にラファエルの心臓が高鳴る。


「そんなところが似てるのよね」


マノンがふっとため息をついた。


「アダンさんのこと?」


ラファエルがその言葉を口にすると、マノンは目を大きく見開いた。


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