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二章 新しい女優(エトワール)

彼女は残酷なまでにきっぱりと背を向ける。


しばし逡巡し、ラファエルはやっとのことで声を掛けた。


「そんなことないよっ。

 素晴らしい演技だったよ。

 お客さんも感動してたしっ!!

 最初は確かにびっくりしてたかもしれないけど、あんなこと凄いこと誰にでも出来ることじゃない」


エマは一瞥もしないで言葉を返す。


「私は特別なことなんて何も出来なくて良かった。

 ただ普通でありたかったわ。

 早くどこかに行って。

 お願いだから」


ラファエルはそれ以上かける言葉が見つからなくて、すごすごと引き返した。


途中で檻に向かうエレーナとすれ違う。


エレーナはあちこち見渡しながらラファエルに聞いた。


「ねえ、マノンさんは?」


ラファエルは首を振る。


マノンの檻はすでにここにはなかった。


団員たちの様子から逃げ出してはいないようだったので、すでに倉庫に帰されているのかもしれない。


エレーナはいかにマノンのこととは言え、思わずラファエルに話しかけてしまったことを後悔しているようだった。


ラファエルは何か言おうと言葉を探す。


だが、マノンのほうが早かった。


「ずいぶん興奮してるみたいだにゃ。

 お前さんはマノンさんのことよりエマさんの初舞台のほうが大事なんだにゃ」


エレーナは言った。


そんなつもりはなかったが、まっさきにエマに駆け寄ってしまったのでそう受け取られても仕方なかった。


「……最低にゃ」


ラファエルはごめんと呟いた。


その日、ショーの帰りには


『新しい女優エトワールエマ』


とミシンで刺繍された帽子、ハンケチ、ネクタイ、はたまたキャンディーが飛ぶように売れた。


ガーナムの円形劇場はさらなる名声を得たと、誰もが口々に言った。


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