二章 願い
「ねえ、どうしてクララさんは火の輪くぐりをしないの?」
食事のあと、口輪をはめる前にラファエルはいつもの質問をした。
クララは気怠げに鼻を鳴らしただけだった。
「なんで団員のひとたちはクララさんや、エレーナたちと仲良くやっていこうって思えないのかな?」
クララは痛みを堪えながらもうんざりした表情で声を出す。
口に出すのさえ面倒だと言わんばかりだった。
「本当にお前は、
どうして?
なんで?
ばっかりだな」
手ひどく鞭で打たれた傷の手当てをしながら、ラファエルはクララに食い下がる。
「だって変だよ、絶対」
「別に変じゃないさ。ただ私たちが家畜以下ってだけだ」
「クララさんは毎日のように鞭で打たれて辛くないの?
火の輪をくぐってしまったほうが楽だって思わないの?」
「また質問か。
私は飛びたくないから飛ばない。
それだけだ」
「エレーナもいじめられたくないから抵抗しないのかな?
でもいじめられたくないなら抵抗しないと、結局いじめられ続けるだけなのに」
「力を使う側ってのはな、抵抗されると余計腹が立つもんなんだよ。
今日の傷を見ろ。昨日と比べてどうなっている?」
「酷くなってる……」
「自分の意志を示すことは場合によって痛みを伴う。
エレーナは痛い思いをしたくない。
そういうことさ。
当人同士の問題だ、放っておけ」
「そんなのやだよ。
僕はエレーナにいじめられて欲しくないし、
クララさんにだって打たれて欲しくない。
なにか僕にできることはないのかな?」
ラファエルの言葉にクララは迷いをみせたが、
「……いや。何もない」
と口を閉ざした。
ラファエルが何を聞いても、クララはもう何も答えなかった。




