表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/106

一章 蛇女マノン

少女は巻き毛から覗くまん丸な耳と、スカートに隠れた尻尾をふるふると震わせてお辞儀をする。


照明が落ちても、拍手はしばらく鳴り止まなかった。


ふたたびの暗闇の中でアナウンスが流れる。


「これより舞台にて古代ギリシアの一大物語、

 英雄ペルセウスの冒険が繰り広げられます。

 どうぞご堪能下さい」


照明がつくとステージには荒涼とした岩場のセットが組み上げられていた。


通用口から古代ローマ風の衣装をまとった筋骨隆々とした男が姿を現す。


「我が名はペルセウス。

 王に貢ぎ物をせねばならない」


男の台詞を皮切りに場面が次々と展開する。


王に疎んじられたペルセウスは、怪女メドゥーサの首を取ってくるよう命じられる。


女神の助けを借りて鏡の盾を手に入れ、死者の国の洞窟で単身メドゥーサに戦いを挑む。


「メドゥーサはどこにいるっ」


いよいよ洞窟の場面に切り替わると、おどろおどろしい音楽と共に巨大な山車が観客の前に姿を現した。



――キャァァァ



山車に鎖で繋がれた女の姿を見て気の弱い女性の悲鳴や子供の泣き声があちこちでこだました。


「気安く名を呼ぶのは誰だ?」


それはまさにメドゥーサそのものだった。


目はつり上がり、口の両端は頬の奥まで伸びている。


青い肌に指の爪は針のように長く尖っていて、蛇の髪の毛を逆立て口を開けて長い舌で威嚇していた。


しかし何よりも恐ろしいのは彼女のへそから下の胴体だった。


上半身は女性でありながらも、下半身は蛇のような尻尾が自在に動いて山車に巻き付いていた。


メドゥーサはその体を見せつけるように観客を威嚇しながら場内を一周する。


あちこちで子供の泣き声が響き渡った。


ペルセウスは鏡の盾で顔を隠しながら、慎重にメドゥーサに近づいていく。



「こっちだメドゥーサ」


「なんと耳障りな……。どこに隠れてる?」


ペルセウスが大仰に剣を振るうとメドゥーサは雄叫びを上げてその場にうちひしがれた。


血を模した深紅の幕がメドゥーサを覆い、そのなかからペルセウスはメドゥーサの首を拾い上げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ