二章 嵐の予感
「大丈夫?」
クララは言い訳をするように一気にまくしたてた。
「別に、なんともないさ。
あんな奴を相手にしたって仕方がないから、ちょっと脅してやっただけだ。
私はあんな連中を何人も見てきた。
金のためなら人も殺す、ああいうのがよっぽど獣だ。
平気だ、構わなくていい、口輪を戻してくれ」
ラファエルは何ともないとは思わなかった。
いつもより饒舌な時点で、きっと怒っている。
「ハンターってクララたちにとって危険な存在なんでしょう?
支配人も酷いよ。
こんな場所に連れてきたりして」
「仕方がないさ。
私たちはお前たちにとって害獣なんだからな」
「そんなことないよっ。
僕にはクララさんも、他のみんなも全然危険だなんて思ってないよ」
ラファエルは言った。
クララは鼻をならす。
「お前たちが勝手に差別しているから暴れるしかない者も多い。
油断して取って喰われぬよう気をつけるんだな」
「なんだよ。そんな気もないくせに」
「ふん」
クララが口輪をつけるように催促し、ラファエルは仕方なく再び口輪をつけた。
檻の隅で丸くなるクララの背中にはまだ憤りが残っているように見えた。
それがあの不遜なハンターに対してなのか、珍しく感情的になった自分に対してなのか、ラファエルにはわからなかった。
声をかけたかったが、かける言葉が見つからない。
ラファエルは後ろ髪引かれる思いでその場を後にする。
この騒動はラファエルの胸にいつまでも残り続けていた。




