二章 デパエワール・ハンター
巴里には珍しい出で立ちだった。
カウボーイハットにウェスタンブーツ。
風刺画でしか見たことがない格好をしていた。
身長は百七十ほどの筋骨隆々の偉丈夫だ。
金髪の髭をしごきながら、興味深くあたりを見回している。
「これが蛇女、こっちは熊女だ。
おい、隠れてないで姿を見せるんだ!」
支配人に怒鳴られてエレーナは飛び上がった。
膝に載せていたスープのトレイが盛大にひっくり返って音を立てる。
マレー熊たちがびっくりして、吠えながら檻の中を走り回る。
「うるさいっ!
静かにさせろ!」
「ははは。これも芸のうちですか?」
男は檻に近づくとエレーナをまじまじと眺めた。
会計士の持っていた紙と特徴を照らし合わせる。
「どうでしょう?
ちゃんと飼育許可証があるでしょう?」
ラファエルは足が震えているのを感じた。
「……では、次へ」
エレーナに満足したのかハンターの男が促した。
来客を見てマリアンヌの表情が曇った。
「これがうちの看板女優だった鳥女だ。
マリアンヌ、この紳士に挨拶なさい」
マリアンヌはいわれたとおりにスカートの裾を掴むと、腰をかがめて挨拶をした。
懸命にリハビリを続けてはいるが、まだ飛べる状態にはない。
そもそも毛が生え揃うまでは物理的に不可能だ。
怪我をして以来、マリアンヌに対して支配人は辛辣だった。
特別待遇はなくなり、ファンからの差し入れもすべて没収された。
檻の中は止まり木とベッドだけの寂しい空間になっている。
ジョーは先程と同じように書類とマリアンヌを見比べ、次の半獣人を催促した。
「まだお気が済みませんか。
仕事熱心ですな」
支配人は大きな顎を撫でて皮肉を言う。
ジョーはまったく気にするそぶりも見せなかった。
ラファエルはおずおずと支配人に質問する。
「この方は……?」
「公認ハンターのジャンさんだ」
「ジョーです」
「これは失礼」
ラファエルは彼のチョッキに留められたバッジを見た。
ひっくり返った異形の魔物に槍が刺さっている。
聖ゲオルギオスが、人々に仇成すドラゴンを刺し殺した場面がモチーフになっている。
教会が発行している半獣人退治のスペシャリストであることを示す公認証だ。




