一章 小さき夢
一月ぶりの母の手紙は息子への心配事ばかりが書いてあった。
「……」
自分のことより母のことを知りたいラファエルには物足りない。
あまり美しくはない文字で、最後には決して挫けないようにと結んである。
ラファエルは便せん一枚の短い手紙を一息で読み終えると小さくため息をついた。
「……大丈夫、ラファエル?」
心配そうに見つめるマノンにラファエルは微笑むと、大丈夫だよと答えた。
すぐに母に返事を書きたい欲求に駆られるが、手紙を出せるのは月に一度と決められている。
切手代がないからだ。
支配人が月に一度だけは手紙を送ってくれるというので、毎月手紙を書いては支配人に渡している。
以前は毎日のように手紙を書いたが、支配人に多すぎるとたしなめられたのだ。
伝えたいこと、知りたいことがたくさんあった。
自分でもっと手紙を出せるようにするために支配人に昇給をお願いすべきだろうか。
そうすれば自分の好きなだけ手紙を送ることが出来る。
それに切手代の他にも少しずつ貯めておけば、じきに母に会いに行けるくらいの金額になるかもしれない。
そろそろ曲芸師としての訓練もさせて欲しい。
助手になれば仕事も増えるだろう。
そう考えると給料の相談自体は悪いことではない気がした。
もう二年も働いているのだ。
次回の給料日には話をしよう。
ラファエルはそう思って母の手紙を布団の下に隠してある小箱に丁寧に仕舞った。




