グリーンビット
次の朝、ヒカルは早くに目が覚めた。
そして一瞬、昨日の出来事は夢だったのではないかと不安になった。
いじめていた女の子を助けて、仲良くなって、今日街合わせをして、最後に連絡先を交換して…
まるで夢のような事が起きた。
何回か首を振りベットから起き上がる。
ルルル…ルルルルルル…
電話が鳴っている。
ガチャ…!!
またいつもの電話だったら昨日の事も夢だった。
震える手で受話器を耳に押し当てる。
手に汗がにじみ、緊張して話す。
「もしもし、野花ヒカルです。」
少し声が上ずる。そして表情を固くして、相手の言葉を待った。
「も、もしもし…ヒカル君…?」
たどたどしい声。少し緊張した声に思わず口元に笑みを浮かべる。
「あ、君か。どうしたの?」
「あ、あの、今日グリーンビットに12時、来てくれる?」
彼女が時間を繰り出す。
「オッケー、了解!!」
そう言うと受話器を置き、時計を見る。
今は、朝の10時。
グリーンビットに着くにはここから徒歩1時間だ。
そろそろ出なきゃ。
そう思いながらヒカルはパジャマを脱ぎ、ジーンズと赤いT-シャツを着て1階へ降りた。
そして誰も起きていないリビングへ降り立ち、彼は何か持っていけるものはないか、と当たりを見回した。
すると懐中電灯にロープを見つけた。
これなら使えるぞ。
彼はそれを部屋から持ってきたバックパックに詰め込んだ。
1時間後、彼はやっとグリーンビットに辿り着いた。
まだ一時間早い。
グリーンビットは大きな広場になっていて、辺りは少し物騒に木々が植わっている。
あまり手入れされていない芝生は黄色く染まり、彼の膝まで伸びている。
なぜ彼女はこの場所を選んだのだろう?
不思議になっていると、
「…っ。ヒカル君…?」
声をかけられて振り返ると、あの女の子が首を傾げて立っていた。
「あ,...き、君は…」
思わず口ごもる。
名前を聞いていなかった。
相手は表情も変えずに言い放った。
「コハク。」
「…え?」
急なことに聞き返した。
彼女は視線をふっと逸らして、もう一度言った。
「私の名前。コハクって言うの。」
少しためらうようにキョロキョロしていたが、口を開いた。
「ねえ、ヒカル君…私聞きたいことがあるの。」
少し驚きながら、聞いた
「何?」
「…友達、になってくれる…?」
え…?!
フット彼女に視線を戻す。
彼女の表情は真剣だ。
「いいけど…僕、もうなってると思ってた。」
「え…?なってる…?」
キョトンとした彼女に彼は頷いた。
「だって聞くもんじゃないもん。これは自然となるものなの。」
「そ、そうだったの。」
カアアアアと赤面する彼女を見てヒカルはくすりと笑い、言った。
「お腹空いてない?ここでは何だけど、ご飯、少し持ってきた。」
「う、うん…」
戸惑いながら二人で芝生に座る。
そしてそのあとは、笑ったり話し合ったりして、時間はすぐに立ってしまった。
そして帰る時間になり、ヒカルは、
「楽しかった。」と笑った。
「うん。」コハクは戸惑いがちにニッコリと笑うと、
「明日も、また合わない?」
と聞いてきた。
その問を受け、彼は元気よく頷いた。
「もちろん!!」