3才からの魔法特訓…
両親と顔を会わせてから数日後、大型の魔獣が現れたとのことでまた両親は出かけてしまった。
精神的にはいい歳でも肉体は相応に引きずられるらしい。
さ…寂しくなんてないんだからね!
なのでまた暇になった。
最近は普通に歩くのは余裕になったので両親の書斎にお邪魔している。文字体型が前世とは全く違い本気の異世界言語?ファンタジー文字?と言えば良いのか…象形文字のようなという感じで読めなかった…
だがつい最近文字が読めるようになった!
というのもこれまたエイラのおかげである。
寝る前に物語の読み聞かせをしてくれるので何回も聞いてるうちに文字も読めるようになったのだ。
冒険譚から難しい領地経営の知恵のような本まで数十冊もの本があった。
子供向けの絵本のようなものは残念ながら無かったのは少し残念である。
なので、エイラの語る物語は大体が冒険譚が多い。かなり分厚い本である。
子供に読ませる量ではないと思う。
でもそのお陰で早いうちに文字を覚えることができたので良しとしよう!
冒頭に戻るが今、僕は書斎にいる。一週間ほど前に文字の勉強と言うことで勝手に書斎にに入り浸っているなかで魔法と書かれた背表紙の本を見つけたのだ。
これで僕も魔法使いは確定したようなものである。えっへん!
「では早速」魔法の教本を開く。
「ふむふむ、なるほど。」
全くわからないや…
どうやら目論見が大分甘かったらしい。
表紙を見て気がついた
『魔導入門上級』
…はい。
入り口ですらありませんでした。
いきなり応用編だったよ!
「異世界人にどんな無茶ぶり求めてんだよ!」
当然誰も求めていないし誰のせいでもない。
「あるよね…本屋行ったら2巻はあるのに一巻が無いパターン」あきらめるのも癪なので暫く眺めていた。
「うーん…なんとなく上級魔法は威力と規模をこうごわっと上げるイメージなのはわかるんだけど魔法の発動自体ができないから何ともできないんだよね」…何処かに初級編はないのだろうか…
本棚を探していると初級編を見つけた。
薬学の…
くそぅ…一瞬のときめきを返してほしい。
まぁ読むけども。
「ポーションかな?体力回復薬の作り方と魔力回復薬の作り方」
ククコの実をすり潰して魔力を込めた蒸留水に…エラの葉を入れれば体力回復薬、アルの実を入れれば魔力回復薬になると…
ククコの実は確か森に生えている青い木の実で、エラの葉が雑草と見分けのつきにくい白い斑のクローバーみたいな葉っぱ、アルの実が小石位の大きさで光沢のある緑色の木の実。
回復薬には5段階あって数字が下がる程に効果が上がっていくと。初級で作れるのは5級と4級の各種薬剤ね
体力回復薬
魔力回復薬
身体能力微上昇薬
武器保護薬液
etc
うーん…
今はいいか…魔法ですよ!魔法!
もう一度棚をざっと見るがめぼしいものはそれ程なかった。
サンクナバル英雄譚
薬学のススメ・初級入門編
魔物大全
王国建国の歴史
とりあえずはこんなところか。
サンクナバル英雄譚は北国の英雄シノ=フルルという男が竜に魅入られし姫と共に世界に飛び出すという話らしい。
なかなかに読み応えのある作品であった。ただ結論から言ってしまうとシノという男が姫に振り回される苦労話であったりもする。
建国の話は壮大な話なのかと思いきや実は、建国200余年の若歴史のまだ若い国であるという事実が判明した。もとは未開の地であり、南西の土地で広大な森の主であった全長50メートル程の大きな亀の魔獣を初代王が討伐に成功そのまま住み着き。少ない人数であったが魔法を駆使し住みやすい土地に開拓していくという、これまた英雄譚とも苦労話ともとれる話を悠然と語ったものだった。
しかし王の有能さが恐ろしいほどであったのはいうまでもないだろう。書斎の壁にかけてある大陸地図を見るとどんな成長をすれば高々数人からスタートしてこんなに広い国になるのか謎と言っていいほど繁栄している。
わかりやすく言うなら無人の東京位の面積を人が賑わうレベルまで上げ尚且つ総面積は北海道並みである。
広い…
魔物大全はどこにどんなモンスターが出るのかどんな姿なのかどのような攻撃をしてくるのかというものが記載されている名前通りの図鑑である。色で分けられていて索引しやすくなっている。森、砂漠、寒冷地、火山、迷宮などいくつかを分けて記載しているらしい。
迷宮…将来機会があったら行ってみたい所だ。
やはり、ワクワクしてしまう。
しかし、魔法が使えるようになるための何か、というのはやはり見当たらない…
「やはり師匠(勝手に呼んでいる)に素直に教えてもらうしかないか?」
あとは、薬学のススメに蒸留水への魔力の込め方というのが書いてあったのでこれを上手いこと流用できれば魔法も使えるのではないだろうか?
とりあえずは薬品を作る訳でもないので普通の水でいいか、と、近くを通ったメイドさんにコップ一杯の水をもらってきた。
「まず、蒸留水を魔力水変換します。ふむふむ。対象となる水を囲うように手をかざし片方の手から水を経由しまた片方の手に戻るように魔力を循環させてください、と」
いきなり…つまずきそうだ。
静かに目を閉じ手の平に集中する。
10分ほどたった頃だろうかうっすらと何かが流れている感覚が掴めてきた。
(何だか脈打たない血液がものすごい勢いでぎゅおおおって感じ動くようなイメージかな?)
一回感覚がわかったせいか気がつけば魔力を循環させ続けていた。ハッとして目を開けると囲っていた水がキラキラとものすごく輝いて…
大きな音を立てて破裂した。
「びびびびっくりしたぁ~…」
全身びしょ濡れになってしまった。
かなり大きな音だったせいか慌てたメイド達が駆け寄ってきた。
「どうなさいました!シルド様!」
「な、なんでもないよ!」
ここは精一杯のぶりっこでごまかす。
唸れ俺のスキル!
普通に怒られましたけどね?
とりあえず怪我が無かったので良かったが、よくよく考えれば僕に何かあれば叱られるのは使用人の皆なのでもう少し考えて行動しよう。
一応魔力の流れというのは覚えられたようだ。