2歳になりました。あれ?親の顔を知らない…?
メイドエイラとの様々な戦いをくぐり抜け、ことあるごとに訓練場へと顔出すようになった僕。
というよりは行動範囲内であるバルコニーくらいしか今のところ訓練場を見に行ける術はないのだが...因みに僕の行動範囲は今のところそんなに広くはない。なぜなら二歳児である僕が住んでいるのは大きな屋敷の2階であるからだ。
さすがに体的にまだそこまで大きくは動けないというのも理由の一つである。
他にも理由としては、 一度だけ階下に降りようとしたところエイラに見つかりめちゃくちゃ怒られた。まぁ今現在ベッドから脱走しているのを見逃されているのも正直2階以外へは行かないだろうという漠然とした考えの元だと思うのだが。
それでいいのか?と思うが甘いならそれはそれで助かるので何も言わない。
さて、我が愛しの師匠(勝手に呼んでいる)こと、アイナ・シルフィリアさんですが…どうやら彼女はそんなに頻繁に訓練場には顔を出さないという事がわかった。大体週に2・3回騎士達に魔法戦の指導をしているらしい。
ちなみに、1週間とは8日らしい。
曜日的な物として、魔法になぞらえているらしい無・火・水・風・雷・土・光・闇の8つ。一年は12ヶ月、四季の概念はなく三季がある。春季・夏季・冬季である。
大体が4ヶ月くらいで季節が変わる、秋がないだけだね。
なんとかして魔法を覚えられないだろうかと試行錯誤してみたが全くと言っていいほど何もわからなかった。うちに宿る力をー…的な感じで叫んでみたが子供の姿でなければ微笑ましいとすら思わなかっただろう。
正直痛いと思った。
一年間を通して訓練風景を見ていたのでどうやら呪文を唱えないといけないようだというのはわかった。誰だ無詠唱ができるなんて言ったやつ!
なので舌っ足らずではあるが遠巻きに聞こえる師匠の真似をして呪文を唱えてみる。
「たしか…大いなる風のせいれいよ?親しき隣人たるわれの?願いを聞き我が眼前の者をふきとばせ!」
恐ろしいほどの静寂に一人戦慄する。
顔から火が出そうになるほど恥ずかしかった。
(誰にも聞かれなくてよかったー!!!)
結果何も起こらなかった。他に何か必要な道具でもあるのかとりあえず魔法は不発に終わったようであった。
その後も通い続け一月ほどが経った頃であろうか…小躍りしながらエイラが僕のところへ飛んできた。
「坊ちゃま!旦那様と奥様が後数日でお帰りになられますよ!」
すっかり忘れていた。
そういえば僕は両親の顔を知らない、母乳をくれていたのは間違いなく母親であったのはエイラの僕に対する独り言、もとい語り掛けで判明していたが視力がはっきりする前に父親である領主の仕事についていきその顔を見たことはなかったのだった。
(なんか…少し緊張する…)
と、時は早く過ぎるものでとりあえず二足歩行できるようになった僕は…あ、僕歩けるようになりました。
エイラに目いっぱいのおめかし的な感じに着飾らせていた。それはもう盛大に、七五三かというくらいに。まさか実の親に会うというだけでここまでかしこまった格好をするとは思いもしなかった。
「さぁシルド坊ちゃま!旦那様と奥様ですよ!」と意気揚々としたエイラに背を押され食堂として使われている大部屋へと連れていかれた。
扉を開けた瞬間の出来事であった。視線が高くなり柔らかいものが顔を覆い尽くした。
「あぁ私の可愛いシルド!」
もがきながら上を見上げるとソコには瞳に涙を溜め赤みがかった長髪の金髪に優しそうな目をした巨乳のものすごい美人がいた。
この美人が母親であるオルフィリア・グロークである。
と、その奥でそわそわしながらこちらをうかがってる男が一人、こちらの視線に気づくとはっとしたのか居住まいを正し「やぁ我が息子よ!」と叫んだ。
銀髪を短く切りそろえ貴公子風といった清潔感のあるこのイケメンが、父親ジェスタ・グローク男爵である。
なんでもこの二人は領民や騎士団など多くは持たないが広大な領地を持つため日夜領地開発や魔物と呼ばれる害獣駆除に時間を取られてなかなか帰ってくる時間がないらしい。その割に平時騎士団が訓練をしている気がするが遠めで気が付かなかっただけでローテーションを組んで休暇・訓練・討伐を繰り返していたらしい。
師匠もどうやら訓練以外の日は同行して狩りをしていたらしい。なんでも魔物化した獣は魔力が宿り爪やら毛皮やらはいろいろと需要があるとか。まぁこの話はこの後二人にもみくちゃにされながらも聞いた話である。
質問をするたび「この年でそんなことを考えるとは!」とか「天才だ!」とかもてはやすのはやめてほしい。
正直中身が中身なので少し申し訳ない感じがする。
こうしてひとまずは無事?に両親との会合を済ませたところで瞼が重くなってくるのを感じた。
体にどうも引っ張られる。
両親もそれを察したのかエイラに僕を寝かしつけるよう言いつけた…
「旦那様!奥様!」
と思った矢先目を輝かせながらエイラは言った。落ち着きのない子である。
「今日は3人でご一緒にお休みになられてはいかがでしょう!」
改めて言おう。落ち着きのない子である。
だが、意外にも二人も頭の上に光がピーンと立つかのごとく大きく頷く
まさにその手があったか!と
対する僕はもうすでに夢の入り口に立ち始め船をこぎ始めていた。
両親と川の字になって寝ていたことに気付くのは翌日になってからの事であった。
どこか心が温かくなったような気がしたのは気のせいではないだろう。
小説って難しいですね。
拙いですが頑張ります。