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とりあえず1歳になりました。

 視界もぼやけてよく見えなかった生後数日からようやく1年が経ち、物の輪郭などもはっきりと見え始めた。

 あの後、ヌイからの接触は特に無かった。どうやら本当にあれが最後だったかのような感じだ。まぁもしかしたらその内ひょっこりと声が聞こえるのかもしれないが・・・


 いろいろ考えていたが、自分を管理者と言っていた以上あんまり他の世界への干渉などしてはいけないのかもしれない・・・と言っても神様の事情なんてのは所詮一般人たる自分には関わることもできないので置いておこう。


 さて、この1年ほどの間でいろいろ自分を取り巻く環境もわかってきた。

 最初全くわかなかった異世界の言葉であるが半年を過ぎたくらいからだろうか単語を拾えるようになってきた。ヌイもよく分からないプレゼントをくれるくらいなら言葉を翻訳してくれる技能でもくれれば良かったのにとも思わなくもなかったが。


 それでだ。


 生まれた家は貴族家らしい。この世界の貴族は上から大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵という八つの爵位で構成されているらしい。


 で、僕が生まれたのは男爵家のグローク家らしい。


 ああ、そうそう。最初何を言っているか分からなかったがお世話をしてくれるメイドさん達が僕に対してシルドという単語を連発していたことで名前がわかった。最近はだいぶ文法として聴き取れるようにもなってきたので日常会話位ならわかるようになってきた。



 シルド・グローク


 それが今の僕の名前だ。


 という事で、1年経ってはいはいができるようになったので自分の家・・・というかお屋敷?かなり大きなお屋敷を探検している。


 探検というと中身30代の自分を考えると大人げない気もするが、やはり経験したことの事というのは心が躍るもので、ワクワクが止まらないぜ!って感じかな?若い体に引っ張られているようであるがまぁまだ1歳児であるし異世界転生なんて他人じゃ絶対ありえない経験なんだから楽しまないとね。というか感覚的には海外旅行に来てるくらいの感覚なんだが・・・


 でだ。探検していてあるものを目撃してしまった。


 それはなんと!魔法だった!


 普段はお世話係のメイドさんがずっとそばにいてなかなか出歩けないが隙をついてちょっと抜け出してみたのだ。どうやら騎士団を持っているようで訓練場のようなところ、大きさで言うならテニスコートが10面分位だろうか。バルコニーのような所から見下ろせたのだ。メイドさんにあやされて抱き上げられるくらいしか外を見る機会なんてほぼ皆無ではあったが何度か見ていた訓練風景。ただその日は少し違っていつも通りに訓練している騎士の中に毛色の違う存在がいた。


 緑色のローブを着て30センチくらいの杖を持っている、金髪を後ろで束ねポニーテールの様にしている15歳くらいの少女がそこにいた。


 彼女は騎士団の前に立ち騎士団5名程と対峙して笑いながら何かを叫んでいた。その周りには20名近い騎士達が腰を下ろして何やら楽しそうに談笑しながらその光景を見ていた。


 少女が何かを言い終わると今度は騎士団の方から何かを叫んだ後一礼して武器を構えた。


 何かの訓練だろうか?と首を傾げた次の瞬間



 対峙していた騎士の一人が3メートル位だろうかいきなり吹き飛んでいった。


 いきなりの光景にびっくりしていると騎士たちはさも当然といわん限りに少女の四方を囲み陣形を取った。しばらく見ていたら唐突に背後から持ち上げられた。


 「シルド坊ちゃま!勝手に抜けだされては困ります!」


 (しまった!見つかった!)


 「まったく!好奇心旺盛なのもかまいませんが危ないですよ!」



 今僕を抱き上げているこのメイドさんはエイラ


 12歳の女の子で僕を世話してくれている侍女で侍女長の娘らしい。茶髪で肩くらいまである髪にくりっとした目が可愛い優しそうな子である。


 抱き上げられると訓練風景を見ていたことに気が付いたようだ。すると彼女は説明してくれた。


 「あの方はグローク家の仕えていらっしゃるアイナ・シルフィリア様とおっしゃる風魔法使いの方ですね」


 「あーな?」


 「アイナ様ですね。・・・あれ?坊ちゃま今喋りました?」


 僕はしまったと思い慌てて可愛く首を傾げてごまかす。


 「もう一回!もう一回喋ってくださいませ!坊ちゃま!」


 「むー?」

 ごまかされてくれ!そして魔法の説明を!

 喋ってしまったことによって明後日の方向に話がずれこまないように慌ててなにもなかったかのようにごまかす。この12歳の可愛いメイドは僕の世話をし始めてから僕が何かをできるようになる度に大喜びではしゃぎまわるのだ。はいはいができるようになった時はそれはもうすごかった。すごすぎて侍女長の母に怒られていた。


 なのでここはなんとしてでもごまかしてさっきの説明に戻ってもらうしかない。


 赤ん坊らしくあうあうと言いながら説明をしてくれと言わんばかりに手を伸ばしてみた。



 「うーん?さっきのは聞き間違いだったのでしょうか?」



 (よし!うまくいきそうだ!)

 内心ガッツポーズをとる。のだが甘かった、そのまま抱かれたまま寝室に運ばれて寝かしつけられてしまった。



 (まぁ当たり前か普通に考えたら1歳児の子供に詳しく説明しても解るわけないって思うよな・・・)



 (でも今日の収穫はよかった!この世界には魔法があるってことが解っただけでも良しとしよう!)


 これはもう少ししたら魔法の勉強をしなくては。などと考えていると急激に眠くなってきた。

 いくら中身が年を重ねていても体は子供ってことらしい。そのまま意識は沈んでいき僕は眠りについていくのだった。


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