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第1話:30日の経過とはじめての人間

さっそく今回から魔法が出てきます。

そこで少し注釈を。

<魔法名>

『呪文の詠唱』

基本的に『』はこの世界の言語ではないです。

気がつけば小屋の中で目が覚めた。

まだ何かが不安定なのか急に視界が暗くなり次の瞬間には頭痛が起きた。

体全体もうまく動かせない、右手を動かそうとして何故か左足が動いてしまう。


「……これが不手際なら許さないからな神様、というかせめて説明してから送れ」


神様と会った時の事を思い出し怒りが沸いて来る。

さっきは感じなかった怒りを感じている辺り感情はしっかりと取り戻せたようだ。


「……確かに、記憶は有る。にしてもよく作りこんだなこんな膨大な記憶」


6歳ほどから約10年ほどの記憶がしっかりと存在する。

育ての親の記憶も教えられた魔法の記憶も本物と大差ない。

俺は赤ん坊の頃に親に捨てられ、俺の魔力を感じ取った先代の魔法使いが俺を拾い、世間から隔離して育てた…と言う設定らしい。

この小屋はその先代と共に暮らしてた森の奥にある小屋のようだ。


「大分体も動くようになったけど…魔法は使えるのか?」


記憶の中から魔法を引っ張り出し浮遊の魔法を使ってみる。

とたんに体が浮かびようやく部屋を見渡せる。


「全部木でできてるな、記憶の中にある様子と誤差は無しか……これなら魔法込みで生活に不便は無さそうだな」


魔法頼りだがお風呂も存在している。

前世の記憶がほとんど無い故に過去を振り返る事も無いし帰りたいと思う事も無い。


「世界に魔法を広める……か、まぁ魔法が広まるのは俺も望むところだ」


広めると言っても、基本的に魔道書を国に渡せば後は国が勝手に広めてくれるだろう。

そうこうしている内に体は大分動くようになっていた。

俺は浮遊を解除して床に降り立つ。


「一ヶ月、この世界の生活に慣れるには必要な時間かな?」


こうして、俺の異世界での生活は始まった。




この世界で生きるには覚えるべき事が多かった。

躊躇無く獲物を殺せるようになるのに10日もかかってしまい後20日。

恐らくこれでも早い方だろう、新しい記憶が無ければもっとかかったはずだ。


獣の放つ殺意、攻撃、予想外の事態。

それらに冷静に対処できるようになるのに15日。

のこり5日。

一番苦労したのはこれだ、どれだけ膨大な魔力を持っていて強力な魔法が使えても冷静を欠けば台無しだ。

最悪の場合、準備していた魔法が不発に終わる場合もある。

詠唱破棄で魔法を使うにはそれなりの集中力が必要だからな。


そして残りの5日は……旅でも通用するような料理や野宿についての知識を付けるのに使った。

本当はこの世界の情勢なども知りたかったのだが、残念ながらこの家にあるのは魔法関連の本と生きるのに必要な雑学ばかりだ。


「今日で30日。いやまぁ…この世界じゃ別の言い方らしいけど」


日が沈み、月が昇った夜空を見上げながら明日の事。この森を出て行くことに思いをはせる。

とはいえ、一度も森の中から出た事が無いのでどこに向かえば良いのか分からないんだが。

こんな時は勘を頼りに行くに限る。

魔法使いは使える魔力が大きいほど第六感や予知夢などの的中率が高くなる。

チートレベルである俺の魔力量ならば的中率はかなり高い。

実際何度かこの勘に助けられた。


「さて、一番の問題は何か嫌な予感がすることだな」


森の奥から嫌な感じがする。ただ、上手く説明できないが今まで感じたものと少し違う気がする。

千里眼を使っても良いが…不測の事態にすぐに対応できるように魔力を飛ばしての感知を使う。

俺は師匠の形見…という設定の大きな杖を振り魔力を放出した。

魔力が森を駆け抜け、型を取る様に森の全体像が頭に浮かび上がってくる。

木々、動物、獣……ここまでは問題ない。

花、湖、魚、再び森、女の子、獣……!?


「女の子に獣!?」


ちょ、マジで食べられる数秒前な状況じゃねーか!

距離にして1キロちょっと、飛翔じゃ間に合わない。

だが、魔力を飛ばしておいて正解だった。この状態なら飛ばした魔力を使って遠距離で魔法を発動できる。

成功率は落ちるが、時間が無い!


「成功しろよ…<マジックシールド>!!」


女の子と獣の間に魔力で作られた盾が出現した……はずだ。

感知に使っていた魔力を使ったので感知ができない。

けど、場所の確認は既にすんでいる。


『運べ、繋げ、導け我が魔力。我はこの世ならざる場所を知るもの、我は次元と次元を繋ぐ者。我が魔力を鍵として開け! <ゲート>!!』


最上級の上、超越級の魔法。

さすがにこのレベルの魔法は詠唱破棄はできないが、その効果強力だ。

今回の効果は単純、どんなに離れた場所でもその場所を知ってさえいれば次元に穴を開けて繋げる事ができる。

開いた<ゲート>を通して<マジックガード>に阻まれた獣と尻餅をついて獣を見上げている女の子が見える。

良かった、ちゃんと<マジックシールド>は発動していたようだ。


「大丈夫?」

「は…はい」


歳は10~12と言ったところかな。

相当無理をして走ってきたのか、服は所々破れ体中小さな擦り傷だらけだ。

今すぐ安全な場所に連れて行ってあげたい所だが、俺が通った時点で<ゲート>は消滅している。

そして、再びゲートを開くより<マジックシールド>が破られる方が早い。


「もう大丈夫だ、後は任せてくれ」


俺は女の子の前に出て獣に杖を向ける。

その瞬間<マジックシールド>が砕け散り獣が向かってくる。

ゴリラの様な体に狼のような牙、そして鋭い爪、大きさも2メートルほど。

本当、よく無事だったなこの子。


「その凶悪な見た目は子供には刺激が強すぎるな」


杖を横に一振り、それだけで空中から鎖が出現し獣を縛る。

それを確認して今度は杖を獣の足元に向ける。すると今度は紅い魔方陣が出現した。


「終わりだ」


そして、杖を振り上げると同時に火柱が獣を包み込み完全に焼失させた。


「ふぅ、これでよし。もう大丈夫だよ」


俺は女の子へと振り返り優しく笑いかける。

元の世界では完全に不審者だが生憎、この状況で他の選択肢を知らない。


「は、はい」


少女は半ば放心状態で返事をしてきた。


「えっと、とりあえず…」


どうしようかと言葉に詰まっていると近くで鳥が羽ばたいた。

その音にビクッと体を震わせる女の子。

今更だがここにはまだ獣の気配が満ちている。


「とりあえず、安全な場所に行こう」


俺はまだ尻餅をついている女の子へ手を差し伸べる。

女の子は少し迷いながらも俺の手を取ってきた。


「よし、それじゃしっかりついてきてね」


女の子を立ち上がらせると再び<ゲート>を開く。女の子は驚いたようだが生憎と時間がない。

そのまま女の子を引っ張って<ゲート>を超える。


「ようこそ、俺の…魔法使いマサキの家へ」


後から思えば、今日は初めてこの世界の人間と出会った記念すべき日だったのかもしれない。

ちなみに、ストックはこれが最後だったりします!

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