決戦
不思議な力を手にしても、探し物の方法は恐ろしく旧式だった。大通りに出て、路地裏に入り、しばらく建物のすきまを歩きまわってからもう一度大通りに出る。すると、おもちゃの集団が私と男のところへやってくる。黒魔術師と魔女の組み合わせは、カラフルな色彩あふれるこの場所では逆に目立つのだ。
「いいですよー取りましょうか。ほら、君も」
促されるまま集団に加わる。シャッターを切る音。男はとても楽しそうだ。私はいつまでたっても慣れない。慣れたいと思っているわけでもないのだけれど、アグレッシグに見知らぬ通行人と自分の適応力が低いのかと後ろ向きな気分になってしまう。
「よく来るんですか、こういうところ」
「まあな。栄のコレには初回からずっと参加してる」
ドシン、大きな音がした。同時に地面が揺れた。
「なんだ」
巨大な怪獣が一歩踏み出したら、きっとこんな音と揺れがするだろう。
「怪獣が出現したとかじゃないよね」
「怪獣だったら、足音が規則的に聞こえるはずだろう」
もう一度地面がぐらりと揺れる。音源はこの通りのどこかだ。周囲を見回すと、遠くの方に何か巨大な影が地面に振りおろされるのがみえた。
急いでそちらに駆け付けると、通りの真ん中で二人の男が向かい合っているのがみえた。私はこんなシーンを何かの漫画で読んだことがある気がした。片方の男は、片手に刀を持ち、赤い和服を着て髪を後ろに束ねている。もう片方の男は普通の制服姿だが、片手に巨大なハンマーを携えていた。金属的な光を放つ円柱は二メートルほどだろうか。その打撃面は数人の大人ならまとめて潰してしまえそうなほど大きい。柄の部分も非常に長く、リーチは四メートルほどありそうだ。使用者には不釣り合いなほど大きな代物。
周囲のアスファルトが一部割れていて、その間から地面がみえて砂埃がたっている。さきほどの大きな振動は、男が巨大なハンマーを振りおろしたからだろう。誰に向かって振りおろしたのかは、目の前の状況をみればすぐにわかる。
しかし、あんな大きなものを通常の人間が振りまわせるのだろうか。制服の彼も、この不思議空間で巨大なハンマーと怪力を手にしたのかもしれない。
制服は、武者の頭上にハンマーを振りおろした。武者はすばやく前進し、ハンマーの打撃面から逃れた。巨大な金属の塊をコンクリートをたやすく破壊し、轟音とともに砂埃を巻き上げる。周囲から悲鳴があがる。
ハンマーが振りおろされた瞬間、わずかに硬直した瞬間を見計らい、武者が一気に距離を詰めた。速い。ハンマーのリーチと威力は脅威だが、リーチが短く取り扱いが容易な刀の方が接近戦では有利だろう。
武者が刀を構える。制服が切られてしまう、そう思ったところで、制服はハンマーを横一線に振り払った。
ハンマーの長い柄が武者の脇腹につきささった。武者はその勢いで吹きとばされて、地面に倒れ込んだ。
「止めるか」
「逃げた方がいいと思うよ」
周囲の人々は慌てて逃げ出す。けれど男は、一歩踏み出して武者と制服の間に割り込んだ。
私は慌てて逃げ出した。なぜかというと、人が死んでしまう瞬間をこの目に収めたくなかったからだ。
再びビルのすきまに逃げ込んだ。なぜ今日は大手を振って通りを歩くことができないのだろうか。ハンマーによる振動が、ビルの壁と地面を伝って体中を振動させる。
「大丈夫かい?」
声は私の背後から聞こえて来た。けれど、振り向いても私の後ろには誰もいなかった。四方を見回しても誰もない。
「下だよ」
足元にいたのは、黒猫だった。真黒な毛並みに、夜空に浮かぶ月のような色をした目。これはクロだ、と思った。




