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遊雨季さんからのアイデア提供。
ということで遊雨季さんに最大の感謝を。
この国に第四王子の居場所はない。
幼いころから僕はそう言われて育った。
一番目の兄は知力があった。
二番目の兄は武術を極めていた。
三番目の兄は外交官としての才があった。
ハッキリ言って三人で完璧にこの国を統治が出来るのだ。
側室の子である僕の居場所は完全になかった。
だから、魔術師になった。
唯一僕は魔力が微量ながらあった。
それを伸ばすことだけを考え生きてきた。
その成果もあって兄たちにも「良くやってるじゃないか」と誉められるように成った。
兄たちにはわからないだろうが本当に嬉しかった。
そんなことをしているうちに21歳になっていた。
この国で僕は世界一の魔法薬剤師と呼ばれるようになった。
そこまで凄いことはしていないからきっと兄たちが情報を操作しているんだと思う。
僕としては魔力が微量しか無かったために魔法を使うよりも魔法薬を作るほうが簡単だったからそっちを鍛えただけだ。
嘘には少しの事実を入れるといい。
さすが僕の兄たちだと思った。
「エドガー!」
僕はいつもどうり研究室に閉じ籠ろうとしたら三番目の兄、キース兄さんに呼び止められてしまった。
三人の中で一番下のキース兄さんとでも11歳の歳の差がある。
「なに?キース兄さん?
ユウナ兄さんがよんでるの?」
ユウナ兄さんとは一番上の兄だ。
35歳で僕とは14歳差。
今の王でもある。
というかキース兄さんが僕を呼びに来るなんて珍しい。
いつもユウナ兄さんの脇に控えている人だから部下とか使いそうなものだ。
「そうだな。
ユウナ兄さんがお前に大切な話があるらしい」
僕とキース兄さんはユウナ兄さんのもとに行った。
そこには二番目の兄であるヴィンセント兄さんもいた。
キース兄さんは重い口をひらいた。
「エドガーよ。
すまんが、お前には我が国を支えるためにしてもらいたいことがある」
なんだろう。
兄さんが僕に頼むなんて珍しい。
つまり、僕にしか出来ないことなんだろう。
もしかして、爆薬でも作らせる気かな?
「隣国の姫であるミーシャ姫と結婚してくれ」
なるほど…。
つまり隣国との関係強化か…。
三人の兄は全員結婚済みだ。
それどころかユウナ兄さんとヴィンセント兄さんは子供もいる。
隣国の姫を側室として迎えるのは不味いだろう。
「別にいいよ」
「本当にすまんな」
「国の為だから」
こうしてあっさりと僕、エドガーの結婚が決まった。
そのあとはバタバタしてしまいなかなか魔法薬の研究に戻ることが出来なかったがそれは仕方がない。
「いよいよ今日だね。兄さんたち」
「ああ、ここまで来くるともう断れないからな。
すまないが諦めてくれ」
ときどき兄さんたちは諦めて頑張れというけど、何が言いたいのかよくわからない。
そんなにミーシャ姫とは不細工なのだろうか?
それでも僕はこの結婚がこの国の為になるのなら仕方がないと思っている。
それに極論としては僕が研究に没頭していても許してくれればいい。
そんなことを考えているとついにミーシャ姫を乗せた馬車がやって来る。
だが、普通とは違い馬車は一つしか来なかった。
隣国の姫のはずなのに一つしか無いなんて、いくらなんでもおかしい。
高貴な人はたくさんのお供を連れてくるはずだが?
そんなことを考えていると馬車のドアが開き、中から姫が…出てこなかった。
扉から覗いた姿を見て叫ばなかったボクを誉めてほしい。
中から出てきたのは巨大なミミズだった。
「初めまして、ミーシャです。
末永くよろしくお願いいたします」
ミミズが喋る。
うねうねと動き気持ち悪い。
しかも、ぶよぶよとした体を伸縮させて近づいてくる。
なんだか、近づくと生暖かい。
皮膚呼吸か…。
そして、ミミズは頭(?)を僕の頬につけた。
まさか…キスされた?
しかも、これが、僕の嫁…?
「本当に申し訳ないのですが…。
トイレいってきます」
僕はトイレで吐いた。
僕とミーシャの出会いは最悪だった。
でも、こんな彼女に惚れてしまう僕はどうしょうもない人間なのだろう。