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決闘、そして歓迎

セシルとロータスの決闘になります


ロータスは使い込まれた愛剣を抜き、どっからでもかかってこいオーラを垂れ流しながらセシルを見る


「どうぞ、いつでも来てください」


セシルは剣を中段に構え、先ほど隊員達に向けていた優しい笑顔と慈愛に満ちた眼はどこへやら、一変して無表情になり、その眼は真剣そのものであった。


「始め!」


「いきます」


ガルスの合図が響くなりセシルは短く呟くと、とんでもないスピードでロータスに向かって接近する。


「なっ!?」


予想外のスピードに驚くものの、すぐに冷静さを取り戻す。


「はっ!」


懐に入ったセシルは何の躊躇いもなく頸動脈を狙って剣を伸ばす。躊躇なく、しかも頸動脈を狙ってきたことに少々恐れを抱いたものの、ロータスはニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべると、がら空きの胴体を狙いつつセシルの剣を腕ごとつかむため身体を動かす。


やはり未熟だ。団長の見込み違いだな、こんな非力な娘が私より強いわけがない。

ロータスは自身の勝利を疑わなかった。最後の最後で気を抜いた。


瞬間、ロータスの視界からセシルが消えた。


「なにっ!?」


そして次の瞬間、ロータスの首元にはセシルの剣がピタリと止まっていた。


「勝負あり!」


ガルスは手をあげて言った。


ローレンスの一言から始まった決闘。実際隊員達も実力においてはセレスは格下だと思っていた。

たとえ団長が認めようと、相手は自分たちより背も低ければ腕も細い。両手で持っている得物も自分たちの得物よりも小さい。

ならば何故一番隊入りを反対しないのか、答えは単純明快である。前にも言ったように騎士団には男しかいない、団員募集の張り紙を出しているし女性が騎士団に入ることも許可している。しかしこの4年間来るものはすべて男、女性は一人もいない。そんな男っ気しかない騎士団に入ってきた初めての女の子、しかも王女、しかも美少女。騎士団員が鍛錬している所を通りかかると・・・


「今日もご苦労様です。お体大切になさってくださいね」


と心配しつつ励ましてくれる笑顔にどれだけ癒されたことか・・・

騎士団の中にはファンクラブまで結成されている。隊員達にとっては腕前など関係ない、ただただ守ってあげたい癒しの女神なのだ。隊員達の頭の中はロータスに負けたセシルをどう慰めようかということしかなかった。


「始め!」


ガルスの合図とともにセシルが突っ込む。

セシルが飛び出し、ロータスの首元を狙おうとし、ロータスがそれを力ずくで阻止しつつセシルの胴体に向け、剣を振る。


決まった・・・。誰もがそう思った。

だがセシルの身体はとんでもない動きを見せる。


ロータスの腕がセシルの腕を掴もうとしつつ胴を狙う。セシルは強引に剣を引っ込めその勢いで身体を屈ませながらロータスの剣の下をくるりと回転し同時にロータスの首もとめがけ剣を振る。勢いの乗った剣はロータスの首もとでピタリと止まる。


「勝負あり!」


ガルスの声とともに、ほうけていた隊員達は我に返り、ロータスはペタリと座り込む。その顔は恐怖、驚愕、不思議の入り混じった顔だった。


「流石ですなセシル様、また我流の技を編み出してしまうとは・・・」


「いえいえ、単にガルスに教わった技に少し手を加えただけです。」


素直に賞賛するガルスと微笑みつつ謙遜するセシル。四人の少年を除いて未だに先ほどの状況を理解できない隊員とロータス。


「な、何をした! 何だ今のは!?」


「ロータス! セシル様に無礼だろう!!」


説明を求めわめき散らすロータスと無礼を叱咤するガルス。


「っ! し、しかし何が起こったのかもわからず、気づけば首元に剣があてがわれて終わりなど・・・一体何が起こったと・・・」


「いやぁ凄いです。一度見ただけじゃ真似できないな」


手を上げて賞賛を述べる蒼髪の青年。


「だから一体何をしたのだ!?」


「隊長がセシル様の腕を掴もうとなさったとき、伸ばした腕を強引に引き戻しつつ姿勢を低くしながら回転して、剣を隊長の首元にむけて振り抜いたんですよ。なめらかな動きもさることながら、振り抜いた時にはかなりの勢いが乗っていた筈なのに首元でピタリと止めるなんて、力加減を間違えたら隊長の首が飛んでましたよ?」


解説したのは緑髪の青年だった。


「なっ!? 何故そんな動きが・・・」


ロータスは自分の首に手を当てて青ざめると同時に、自分を超えている、もしかするとガルスですら超えているかもしれない剣技に驚愕した


「てか隊長油断しすぎじゃないですか?完全にセシル様を舐めてましたよね、あれだけ油断してたら俺でも勝てますよ」


「なっ!?貴様ぁ、言わせておけば!」


「やめとけよアベル。一応上司だぞ」


黄髪の少年アベルの生意気な口調を黒髪長身の青年が注意する。


「いいじゃんか、どうせ隊長はセシル様で決まりなんだからさ。それに俺らが忠誠を誓ってるのはセシル様だろ?元上司に気を使う必要ないじゃん。ロータスさん無駄にプライド高いしさ」


「やめなさいアベル。慕ってくれるのはうれしいけど、同じ隊の人を悪く言うんじゃないの」


エスカレートしそうなアベルを止めたのはセシルだった。


「お待ちしてましたセシル様。セシル様の一番隊入り及び隊長任命、心より祝福申し上げます」


「ありがとうギルバート。それに、アベル、ジャック、リオンもね」


セシルに呼ばれ、蒼髪の爽やかな青年リオン、緑髪の知的な青年ギルバート、黒髪長身の青年ジャック、黄髪のわんぱくそうな少年アベルの四人、はセシルを前に横一列に並び剣を地に突きたて跪く。


「「「「我らの剣と忠誠を貴方に捧げます」」」」


いきなりの四人の行動にロータスや隊員達、呼んだセシルさえも驚いた。


「えーっと・・・ガルスさん?」


戸惑ったセシルが視線をガルスに向けると、ガルスはニコリと微笑み・・・


「僭越ながら少々仕込ませていただきました」


「あ・・・あははは」


もう笑うしかなかった。だって仕方ないじゃない、予想外にも程があったんだもの!

とりあえず立たせよう。もう周りの視線が痛いのなんの・・・


「あ、ありがとう。とりあえず立ってくれない?周りの視線が痛いから」


「「「「ハッ!」」」」


立ちはしたもののまったく動き気配がない。一体なんだと・・・ああなるほどね、それも教えたのねガルス・・・。もう知らないところで何か教えたりするのは控えてね、そして教えたら報告してね。こういうのって結構心臓に悪いからさ。


「貴方達の剣と忠誠、確かに受け取りました。その忠誠が揺らぐ事のないようわたしも精進いたします」


「俺たちのセシル様への忠誠は決して揺るぎません。たとえセシル様がどうなろうとも、俺たちは付いていきますので」


この時を境に、彼らは一番隊員たちの間でセシル四人衆と呼ばれるようになった。


「それでは改めてセシル様を一番隊隊長に任命し、ロータスはワシの補佐にする」


「「「「「「「「・・・・・・はい?」」」」」」」」」


ロータスの規格外の人事に全員が素っ頓狂な声を上げた。


「ロータスは実力面では申し分ないが精神面に問題がある。ワシが鍛えなおしてやる」


この人事にロータスは喜び、体験した事のある四人衆はロータスに同情の念を送ったという。

ということで決闘編でした。


次話は訓練と実戦編になります。お楽しみに~

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