説得そして騎士団へ
15歳になったフランとセシル、今回はセシルの説得と騎士団の入団です。
ある日の夕食時・・・・・
「フランとセシルももう18歳だ、王子と王女としての仕事を任せても良いと思うが?」
18年経っても変わらずイケメンなファリスは同意を求めるように同じく変わらずイケメンなクラヴィスを見る。その視線にクラヴィスは頷く。
「うん、そうだな。二人ともいい年だ。やらせてもいい頃だろう、失敗しても我々がカバーすればいい。失敗は成功の元と言うしな」
クラヴィスは立場上副王となっているが実質的には地位、権力ともに王と変わらない。となれば娘であるセシルは副王女という立場になるが、副王女というのはおかしいから王女でいいんじゃねぇか?というファリスの言葉により副王女などとめんどくさい肩書きを負うことなく王女の地位にある。
そもそも何故王と副王がいるのだという話になってくるが、それを説明するには建国時まで遡らなければいけないので説明はまたいずれ・・・・・・
「と、いうことで。フラン、セシル、やってくれるか?」
期待を込めたファリスの目と声に、フランは意気揚々と立ち上がる。18歳になったフランは顔立ちが大人っぽくなりより赤髪が似合うようになった。対するセシルも、月の如き金髪はより一層美しく、顔立ちも大人っぽくなった。
「もちろんだよ父上、小父上!ミスなんてしない。一緒に頑張ろうぜセレス!」
同意を求めるフランに、ごめん、と目で謝りファリスとクラヴィスに言い放つ。
「申し訳ありませんが、その役目、辞退させてください」
「えっ!?」
まさかの言葉にフランの口から驚きの声が漏れる。対するファリスとクラヴィスは、ある程度予想していたように語りかける。
「何故だ?確かに地味でサポート的な仕事ではあるが、将来必ず役に立つはずだぞ?」
そもそも王女の仕事とは何か。映画では城内の見回りや適当に王子や大臣達の会議に口を挟むシーンがほとんどである。しかしこの国の王女の役割はちょっと違う。主に簡単な問題を解決したり、王と王子が忙しく時間を割けない時に代わりに、他国の大使の相手をしたり、8割裏方2割表の仕事である。ぶっちゃけ地味といえば地味だろう。セシルも地味な仕事は嫌がるだろう
「そうだぞ、それにお前にはフランと同じ内容の仕事を任せたい。フランと一緒に頑張ってくれ」
しかしセシルは首を横に振り、申し訳ないといった顔で衝撃の言葉を放つ。
「それを含めて辞退させていただきたいのです。わたしは騎士団に入ります」
「「「「「えっ!?」」」」」
セシル以外の全員の顔が驚きの色に染まった。一切口を挟まなかったナディアとリリアなど驚きのあまり口に運ぼうとしていた肉をフォークごと落とした。
「わたしは騎士団に入り、王国を支えたいと思っています。騎士団長のガルスには許可を取ってあります。父様小父様、お許しを・・・・・・」
いきなりそんなことを言われても答えられない。唖然とする一同の中で最初に声を出したのはフランだった。
「な、何言ってんだセシル? 冗談にしちゃ笑えないぞ?」
「冗談で言ってない。こんな事冗談で言えるわけ無いでしょう?」
「ふざけんなよ!?そんなの許すわけ無いだろ!」
「別にフランに許されなくても構わないよ。必要なのは王と副王である父様と小父様の許しなんだから」
フランはテーブルを叩き、声を張り上げて反対する。それに対しセシルは、大声を出すことなく冷静に言い放つ。
「父上と小父上が許すはずがないだろ!? そうだろ!?父上、小父上!」
フランの声に両者はセシルの顔を見て暫く考え込み、口を開く。
「私にはどうにも言えん。父であるクラヴィスが決めることだ」
「セシル、どうして騎士団に入りたいのだ?ちゃんとした理由がない限りは認めんぞ。騎士団は常に危険と隣り合わせの仕事だからな」
「何言ってんだよ小父上!ダメに決まって・・・」
「フランは黙っていなさい」
異議を申し立てるフランをファリスが止める。
「生まれてからずっと一緒にいるお前がわからない訳はないだろう?セシルは本気だ」
「でも!」
「これを決めるのは父であるクラヴィスだ」
「っ!」
フランは渋々黙る。
「それで、騎士団に入る理由はなんだ?」
「王女としての仕事はいうなれば王子の秘書のようなもの、代わりは城内にいくらでもいます。わたしはもっと積極的に民のみなさんの役に立ちたい。そのためには騎士団に入るのが一番だと思っています。剣技はガルスも認めてくれています、この剣技でわたしはこの国の人たちを守りたいんです。危険は覚悟の上です」
「・・・・・・・・ガルスを連れてこい」
クラヴィスは渋った顔をして、ガルスを連れてくるよう使用人に命令し、黙り込んだ。
10分して扉が開き、ガルスが入ってくる。
「お呼び出しを受けて参りました」
ガルスはフラン達に一礼して、クラヴィスの言葉を待った。
「ガルスよ、セシルの実力がお前が認めるほどだというのは真か?」
「はい、真実でございます。まだ私と互角とはいかないものの、2年もすれば私をも超えてしまうでしょう。現時点でも実力は騎士団一でしょう」
クラヴィスの問いに、ガルスは微笑みながら少し誇らしく答える。
「ふむ、セシルはお前から騎士団の入団許可を得ていると聞いたが・・・何故私に報告しなかった?」
「セシル様より、陛下には言わないよう固く口止めされておりましたゆえ」
「いつから口止めされていた?」
「それは・・・セシル様、全てを告白しても?」
「構いません。もとより言うつもりでいました」
セレスの許可を得て、ガルスは全てを話した。2年前、セシルに呼び出されたガルスは、お互いに空いている時間で構わないので騎士団で通用するまでに強くして欲しいと、そして通用するほどになったら騎士団に入れて欲しいと。セシルの真剣さを感じたガルスは、できるだけ空いている時間をセシルの鍛錬に費やした。
「・・・・・・よもやそれほどから決意を固めていたとは。分かった、騎士団入りを認めよう。リリア、お前はどうだ?」
急に振られたリリアは慌てることなく、優しく言葉をかける。
「それほど強固な決意があるのなら、反対はしません。それに、こうなることもなんとなく分かってましたから。セシル、頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます。父様、母様、本当にありがとうございます」
父の理解と母の優しさに感謝して、セシルは深々と頭を下げた。
「フラン、お前は反論せんのか?」
ファリスの空気を読んでいるとも読んでいないとも思える言葉に、フランに一同の視線が集まった。
「あんなの聞かされたら、反論のしようがないよ。わかった、認めてやるよ。けど、無茶するなよ」
「だから別にあなたに認めてもらうつもりはなかったんだけど・・・」
セシルのツッコミっぽい返事に笑いが起きた。
そして二日後。
「初めまして、セシル・ラウ・ド・ハーネストです。本日よりフローリア王国騎士団一番隊隊長になります。よろしくお願いします」
セシルの騎士生活初日。男ばかりの騎士団に初めての女の子、しかも美少女。一番隊は歓迎ムードに包まれていた。しかし、ひとり不満の声を漏らす者がいた。
「ガルス団長、私は認めません。いくら国王と副国王の認可があったとしても、一番隊のしかも隊長だなどと、実力もわからないのに」
昨日まで一番隊隊長だったロータスである。
フローリア王国騎士団は五隊に分けられており、最弱が五番隊最強が一番隊である。
「不満か?ロータス」
「そうですね。王女だというだけで一番隊の隊長などと、王女様には申し訳ありませんが私は認めません。国王様と副王様が認めたのは騎士団に入ることであって一番隊に入ることではありません。なれば、王女といえど一般隊士と同じように五番隊から始めるべきです。」
「セシル様は実力ではお前以上だ、騎士団でトップだろう」
「なっ!? しかし実戦におけるリーダーとしては・・・・・・」
「分かりました。ロータス殿の言い分はもっともです、どうしても納得できないのであれば、手合わせにてわたしの実力をご覧ください。実戦での統率力においては実際に実戦でお見せします、それでも納得できなければ私の力不足・・・五番隊から修練し直します。いかがでしょうか?」
「・・・・・・分かりました」
セシルの提案に、ロータスは内心ほくそ笑んだ。元一番隊隊長であった彼は、実力も定かではない上に実力・経験において明らかに自分より劣っている彼女が、国王の命というだけで一番隊隊長の座に立つなど納得できるものではなかった。勝負に勝利し、三番隊で苦労を知るべきだ。ガルス団長直々に鍛えたといえど所詮は世間知らずの王女、自分より強いはずがない。
ロータスは完全にセシルを舐めきっている。それを察したガルスは鍛練し直さねばとため息をつく。そもそも手合わせもしていないのに格下と決めつけている時点でそこが知れる
かくしてセシルとロータスの決闘がここに始まったのである
と言う事で騎士団入段編でした。
ロータスはぶっちゃけかませ犬です