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『約束』  作者: wokagura
☆過去編(二学期)☆
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第9話 理解と諦め




 静かで穏やかな日々を味わって過ごしていくと、あっという間に夏休みは終わってしまった。


 俺は二学期初日、重~い足取りで登校していった。


 教室に入ると、やはり騒がしかった。1時間目が英語ということで、黒板は大原先生の悪口で埋まっている。その中心には黄色いチョークで『ファンデーション!』と書かれていた。大原先生が厚化粧だと言いたいのね、そうかいそうかい。

 よく見ると、黒板消しもどこかに消えていた。どうせ消されないように隠したんだろう。


 

 大原先生は、教室に来るなり、はぁーっと溜息を吐いた。


「大原ー、何朝っぱらから溜息ついてんの?哀れぶってるつもりー?」

「これで笑っていられる!?」

「別にフツー」

「あんた達のフツーが変わってるの、わかんない!?もう消すよ!ってあれ?黒板消し・・・黒板消しは?」

「さぁー、知りまテン♪」

「自分で探せばぁー?時間潰れるけど。」


 クラスがクスクスと笑い溢れる。



 1時間目になっても黒板はそのままの状態なため、勿論授業にならなかった。増してうるさいから大原先生は我慢できなくなったのだろう、声を張り上げた。


「うっるさいっ!誰か、あたしの代わりに英語やれ。」

「生徒に命令~www」

「だって、聴かないでしょ!?ほら、だれかやってよ。」


 そこで、一人の男子がニヤッと笑って立ち上がった。その名は佐藤修人(さとうしゅうと)。悪がき代表の一人だ。


「いいよ、俺やってやる。」

「よっ、修人先生!」

「ガンバー♪」


 皆の注目を浴び、修人は教卓でこんなことを言い出した。


「ではでは、これから担任について討論しましょう☆」

「イエーイ!」

「なんでそうなるのよ・・・・」

「だって静かになったし、大事なことだろ!?いいから、大原は黙って失せてて。」


 大原先生は、押し黙った。


「大体ー、ブスだと思いま~す!」

「その割にナルシ発言多いし。」

「背低いです。」

「とにかくウザい。」

「それに、お気に入りのひいきが激しすぎ!これは駿河君もわかってるはず。ね!駿!?」

「さぁ、そんなこと忘れちゃったけどー。」


 ホントは覚えていた。忘れることはない。でもあえて言わなかった。


 それからも討論(?)は続く。


「先生としてなってない!」

「若いのに担任持っちゃって、無理に頑張り見せてる感じ。」

「舐められんのも無理ないよね。」


 本人の前で、引っ切り無しに意見が出てきて大原先生はとうとう動き出した。

 職員室に繋がる呼び出しボタンのあるところだ。


「これ以上言うようなら、押すよ。」

「押せばぁー?そんなの効かないし。」

「そーそー。あ、馬鹿だよね。ガラTでも知ってる英語の筆記体知らないし。漢字書けないし。」

「漢字書けないわ、英語書けないわ、この人どうしようもないねww」


 いつもならここで押さないのだが、今日は自棄になったらしい、ブチッとボタンを押した。


〈はい、職員室です。どうしました?〉


 この声は、2年生の英語担当の後藤先生かな。男の先生だ。


「もう、うるさすぎて押しました。何とかしてください。」

〈・・・すぐ行きます。〉


 これには生徒も唖然。焦りだしたため、俺は達之介に話し掛けた。


「大丈夫かな?」

「ふんっ、呼び出しくらっただけで皆臆したか。でも先生も駄目だね。他の先生にまで迷惑かけてるのにいいことしたぶって。そう思わん?」

「・・・確かに。」


 達之介の最もな言葉に俺は安心しつつあった。


 間もなく、後藤先生が来て・・・


「いぇす、うぃー、きゃん!はい!!」

「いぇす、うぃー、きゃん!」


 と、わけのわからん外国の大統領の名台詞を皆で叫びあった。これには後藤先生も苦笑。


「素晴らしいですね・・・一応英語ではありませんか。」

「大原先生は大げさなんですよー、ねぇ?」

「そうなんす~。」


 大原先生はふて腐れた顔をした。結局授業は進んだが、俺は教科書で顔をかくし、声も出さずに笑っていた。
















 放課後_____


 俺と達之介は職員室に大原先生を呼びに行って、廊下に招待した。


「先生・・・・」


 俺は作り笑いする。


「何なんですか、あの1時間目の授業は。」

「ね!何あのギャップ!?ありえないよねー。」

「そうではありません。それもありますけど、呼び出しですよ、呼び出し!」

「だって、そうでもしないと皆集中してくれなかったんだもん。今日はよかったでしょ?」

「先生よぉ、俺ァほかの先生にまで迷惑かけてこれでいいのかと思いました!」

「たっつ・・・」


 俺が言葉をつづけた。


「先生が言い返すからいけないんですよ。どうして言い返すんですか?」

「だって悔しいんだもん!」


 俺と達之介は顔を見合わせた。








 帰り道____


「あれは、駄目だね。」

「あぁ、駄目だ。」

「先生が。」

「おう、先公が。たかが中1に悔しがるなんて子供だ。だから俺はあいつらがやりたがる理由がわかったんだよ。」


 俺はハッとした。以前達之介がうちに来た時に言いかけた言葉だ。


『ただ、やりたくなる理由はわかるよ。』


 やっとわかった。あいつらはあの時でもう悟っていたんだ。この先生は駄目な人だ、と。だから反抗した。そうか、こういうことだったんだ。


「なるほど。」


 でも、それと同時に母さんの言葉が思い浮かんだ。


『貴方、絶対にその仲間になっちゃ駄目よ。』


 俺は慌てて達之介に振り向いた。


「でも、一緒になってやったら駄目だ。」

「当ったり前だ!!」

 

 達之介は声を荒げた。


「あ、スマン。つい・・・。当たり前だろ、そんなこと。だから俺は、お気に入りだと言われても何もしなかった。あいつらのように反抗したら、それこそ子供だからな。」

「そうだよな。」


 俺は微笑んだ。


「達之介って、大人だな。」

「はぁ!?いい奴の次は大人!?止めてくれよぉ!」


 俺たちは声を出して笑いあった。冗談言ってないと、やっていけないよな・・・。





 

 次回もよろしくお願いします☆

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