第3話 突然の出逢い
放課後____
「もっと、先に回ってターンしろ!それでは敵のボールとなってしまうぞ!!」
「ハイッ!!」
今度は体育館で逞真の声が響く。部活中だ。逞真は頭の回転が速く、こういうゲームも数学的に考え、実践に移す。だから、北中女バス部は市内を誇る名門だ。
♪キンコンカンコ~ン♪
そこに呼び出しの放送が流れた。
〈駿河先生、駿河先生、お客様がお待ちです。職員室までお戻りください。〉
「先生、呼び出しですか?」
「みたいだな。じゃ、私は職員室へ行ってくるから、今の練習を続けてくれ。」
「はい!」
逞真は職員室へ向かった。返事はしたものの、女バス部員は気になって仕方がなかった。
「先輩、お客さんって、誰でしょう?」
「気になるよね。覗きに行ってみよっか☆」
「そうしましょ!」
ということで、女バス部員は逞真の後を追った。
その頃、逞真は職員室に到着していた。
「斉藤先生、客とは?」
「ああ、駿河先生、こちらです。」
ソファには女性が一人座っていた。ロングヘアーでカールした綺麗な茶髪。端整な顔に泣きぼくろが目立つ。どこか金持ちの娘のような感じだ。心当たりがなく、眉根を寄せるときには女バス部員は職員室の中をドアから覗いていた。
「こんな姿で申し訳ありません。御用とは?」
女はまるで再開を待ちかねたように笑顔を見せたかと思うと
「・・・駿君っ!!」
と叫び、逞真に抱き着いた。
「何っ!?」
逞真は思わず声を上げて驚いた。職員も女バス部員もぽかんと二人を見ている。
逞真は本当に心当たりがなかった。以前真夜中に酒に酔って口説きでもしたのかとまで思ってしまうほどだ。
「待て。」
逞真は突き放した。”お前は誰だ”と訊こうとしたがそれはできなかった。
何故なら・・・・
「ん゛っ・・・・」
柔らかなもので口を封じられたからだ。その柔らかいものは・・・・唇だ。一同は増々驚いた。
「っ、止めろ!!」
思い切り彼女の肩を押し、鋭くいった。
「あんたが誰だか知らないけどな、・・・ここは職員室だ。」
女は俯いた。
「ごめんなさい。だったら、場所を変えましょう。」
「・・・あぁ。」
逞真は女を連れて廊下に出た。あとでどうフォローするか考えて。反対側のドアには女バス部員がこちらを眼見している。逞真は溜息を吐いて睨んだ。
「うわっ!駿Tが怒った!逃げろ~!!」
「茜。」
逃げる部員の中、部長は足を止めた。
「な、何でしょう・・・。」
足が震えている。逞真が怒ると恐いのは嫌になるほど身に染みている為、余計だった。
「見ての通りだ。私は部活に行けなくなったから、帰宅するように伝えてくれ。」
「は、はい・・」
部長は力が抜けた。
「よろしくな。」
背を向ける逞真と色女を不安げに見つめる部長であった。
やがて逞真は、歩きながら彼女に話し掛けた。
「先ほどの行為といい、貴女は誰ですか?申し訳ないが、私は貴女に会った記憶がありません。」
女が悲しそうな顔をしているのは逞真も背後で感じ取っていた。
「本当に忘れちゃったの?あんなに深く愛し合っていたのに。」
「もっと具体的に言ってくださりませんか。私はまったく・・・」
「駿君って、鈍いよね。昔っから変わってない。まさか、あの”約束”を忘れたわけじゃないよね。」
「・・・・・・」
思えば彼女はさっきから逞真を”駿君”と言っている。昔・・・約束・・・それらのワードから、逞真はハッとして振り向いた。
女の顔をよく見てみると、確かに薄く覚えている部分があった。泣きぼくろに一重の目。
「・・失礼。」
逞真は冷や汗をかきながら女の前髪をゆっくり掻き分ける。左側の額には古い傷が残っていた。
「まさか・・・」
逞真は確信した。
「__萌・・・」
萌はにっこりした。
「やっぱり覚えててくれたんだね。逢いたかった・・・・ずっと・・・・駿君。」
逞真はどこかもどかしい表情をする。
「是非、私の家へきて話をしたい。」
萌は頷いた。
その頃、職員室では____
「いやあ、駿っちにガールフレンドがいたなんて意外だなぁ。ハハハハww」
逞真と仲の良い伊東先生がのん気に笑っていた。
「笑い事じゃありませんよ。いきなりあんなことされたら誰でも驚きますからね。」
「一体あの二人はどんな関係なんでしょうかねー」
逞真のせいでパニックになっていたのだった。
逞真の家でどんな話をするのか・・・
次回もよろしくお願いします☆
wokagura