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『約束』  作者: wokagura
☆本編☆
22/39

第22話 その後の二人

本編です☆

逞真視点から無視点に変わりましたので、ご注意を。

また、これに出てくる地名はリアルとは一切関係ありませんので。



「はぁ・・・・・」



 逞真は過去を思い出し切って一息吐いた。


「あの時は本当に酷かったな。教師になって思うが、あそこまで酷いところは見たことなかった。」


 萌はフフッと笑った。


「確かに、先生に向かって反抗するって珍しいことよね。・・・でも、私懐かしいなって思うんだよね、なんでだろう?あんな酷くて、死にたいって思うほどだったのに、今ではいい思い出なの。」

「そう言われてみれば、確かに・・・」

「ね?」


 萌が逞真のほうに身を乗り出した。


 逞真は思わず心臓がドクンと脈打った。萌との過去を思い出したせいか、やけに萌を意識してしまう。今も、顔が近くにあるだけで、この様だ。



「・・・どうしたの?」

「あ・・・いや、なんでもない。萌、訊きたかったのだが、お前はあの後どこにいたんだ?」

「あー、えっとね、ここのもっと北にあるばしょなんだけど、雨別(うべつ)っていうところ。知ってる?」

「雨別といえば羊だの雨祭りだので有名な場所か。なんだ、そんなところにいたのか。そこでの学校はどうだったんだ?」

「もう、ビックリした。全く違うんだもん。クラスにもすぐ馴染めたし、いい人ばかりで良かったわ。」


 逞真は微かに切ない顔をした。


「北中よりずっとよかったんだな・・・。だがあの酷かった学年も萌が引っ越した後真逆に変わったんだぞ。それからの2年間一回も悪い噂を耳にせず、涙して卒業したほどだからな。」

「え、そんなに変わったの?」

「あぁ。」

「なんだーっ、だったら戻りたかったな・・・」

「でもいいじゃないか。こうして巡り会えたんだ。」

「そうだけどね。」



「では、その雨別から、どうしてここまで来たんだ?お前の教え子の優花に私のことを訊いたなら、その前にここに来る根拠があったはずだ。」

「・・・・だって、今頃駿君先生になってるかなって思ったら待ちきれなくて・・・・、駿君はまだ故郷に残ってるのかなって思って、それでピアノの講習区域を変えてきたんだよ・・・?」


 萌は頬を赤くして恥ずかしがるように言った。


「なっ・・・それだけの理由で・・・?」


 逞真が真に受けながら驚いて呟くと、萌は悪戯っぽい笑顔で、


「なーんてね♡そうだったらロマンチックだよね!」


 と言った。


「なに?」

「あ、怒っちゃった?ごめんなさい。」

「つまり、それは嘘か。」

「そうよ。本当はこっちの講師の人手が足りないから来たわけ。それで、優花ちゃんに訊いて今に至るのよ。」


 逞真ははぁ・・・と溜息を吐いた。


(しばらく見ないうちに萌も言う女になったじゃないか・・・)


「じゃあ・・・萌の派遣場所がここではなかったら、再会していなかったってことか・・・。それもそれで凄いな。」

「偶然って凄いよね。」


 萌はニコッと笑った。


「じゃあ、今度はこっちが訊くけど、他の先生に訊いたら女子バスケット部の顧問みたいね。どうしてバスケ?」


 逞真はウッと顔を歪ませた。


「どうしてそんな顔するの?」

「あ・・・いや・・・別に・・・」

「え、なになに?そんな顔されたら気になるよ。」


 逞真は諦めて口を開いた。


「中2のときにな・・・お前がいなくなった後、どうにも心残りがあったために、吹っ切れるため適当に始めたバスケットボールが、どうしたわけか、ハマってしまってな・・・。明け暮れていたら、高校でも結構うまくいって、教員になった今、顧問になったわけだ・・・。」


 すると萌は思わずプッと笑った。


「じゃあ、私のせいでバスケの顧問になったわけ?」

「萌のおかげで、だがな。」

「あ、ってことはよかったんだ。」

「まぁ、そうだな。」


 不機嫌そうに目を逸らす逞真。


 萌はそんな逞真の手を握った。


「ハッ、止めろ!!」


 逞真は声を荒げた。萌は一瞬ビクッとしたが、微笑んだ。


「そんなに怒鳴らなくてもいいでしょう?私たちの関係はそんなに薄くないじゃない。」

「そうだな。済まない。」

「やっぱり、駿君、変わったみたいね・・・・」

「・・・・」


 自分の手の上に恋人の手と頬が乗っており、逞真は頬を染めた。正直、こんな行為をされたのは全くといってなかったからだ。


「駿君・・・」

「なんだ」

「”約束”、叶えてくれる?」


 不意に呟いた萌の言葉に逞真は押し黙った。


(運命を誓う・・・・そうなると、俺の教員生活はどのように変わってしまうのだろうか?)


 それには深い深い想いを込められていた。


「どうしたの?」

「・・・お前、他に恋人はいないよな。」


 萌は顔を上げた。


「なんでそんなこと言うの?いる訳ないよ。」

「そうだよな。萌がそんなことするはずがない。」


 逞真は表情を和らげて微笑み、萌の髪を撫でた。


「・・・保留だ。」

「え?」

「もう少し考えさせてくれないか。色々と訳があるんだ。」

「わかったわ。保留ね。でも、約束は破らないでね?」

「・・・当たり前だ。」


 逞真は立ち上がった。


「さて、もう遅い。戻ったほうがいいぞ。」


 萌はやけに反応して否定した。


「嫌・・・まだ駿君と一緒にいたいよ。」


 逞真は苦笑した。


「嫌らしいこと言うなよ。それとももう泊まっていきたいか?」


 その言葉に萌はカアッと赤くなった。


「そ、そんなんじゃ・・・・」


 逞真はそんな萌が愛しく思って、衝動に駆られた。



 そして______










 チュッ・・・・・











 逞真は萌に濃厚な口付けをした。


 あまりにも急で、萌は動作を止めた。

 逞真は増々キスを深くしていく。10数年ぶりの萌とのキスを十分に味わっていった。




 それから数秒が経って逞真は唇を離した。



「駿君・・・」

「もう逢えなくなるわけではないのだから・・・」


 逞真の顔は優しげだった。


「・・・はい。」


 萌は頬を赤く染めたままリビングを出た。





 そして、玄関先で


「萌、ちょっといいか。」

「え?」


 逞真は萌を抱き締めた。

 耳元で呟く。


「また、私の家に来てくれ。夜ならいつでも構わないから。・・・待ってるぞ。」


 萌は微笑んで頷いた。


「じゃあ、また。」

「あぁ。」














 萌がいなくなり、リビングに戻ると聖奈が自室から覗いているのに気付いた。


「チッ・・・おい聖奈!」


 聖奈はヒッと声を上げ、静かに出てきた。


「あはは~見ちゃった☆」

「いつからだ。」


 逞真は既にキレモード全開だ。眉間にしわを寄せて血管を浮かばせている。


「え~と、兄ちゃんが、萌さんにキスしてる時から。・・・・テヘ♡」

「ふざけるな!!」


 逞真は聖奈の胸ぐらを掴んだ。


「まぁまぁ、そんな怒らずに。あっ、兄ちゃん赤くなってる!」

「何だと!?」



「・・・・」

「・・・・」



 沈黙が続き、逞真は聖奈のTシャツの襟を離した。


「・・・すまん。興奮しすぎた。首は大丈夫か。」

「うん。大丈夫。・・・ゴメンね?覗いちゃ駄目だったのに。」

「別に。もういい、忘れてくれ。」


「・・・萌さんとは、やっぱ恋人同士だったの。」

「・・・・」

「私、少しだけだけど覚えてるよ。小さいとき萌さん遊びに来たよね。私、萌さんに恋人なのって訊いてた。」

「あぁ、そうだ。お前は昔も今も邪魔ばかりだ。」


 聖奈はニカッと笑った。でも、不意に真面目な顔をする。


「ねぇ、そんな仲なのにあのこと言わなくていいの?」


 思わず逞真は聖奈を見た。


(全く・・・・こいつは真面目な話をするときのギャップが激しいから困る。)


「話せるときが来たら話すさ。まだ、再会したばかりだ。」

「そぉ。」



 聖奈はまた笑顔に戻った。



「そうだ、お風呂!お風呂入んなきゃー!」




 聖奈がバスルームに入ってから、逞真は溜息を吐いた。






(まだ早いんだよ。わかっていないな聖奈は。いくら萌が昔からの深い付き合いだからといって、あのことを話せるほどの仲じゃない。プライドに傷がつく。あのことは、俺にとって最悪な傷痕なんだからな・・・・)



































次回もよろしくお願いします☆

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