第21話 さよなら・・・
新学期に入った。クラス替えをし、俺は2年1組になった。
先生について紹介しよう。
1組は大柄先生。副担は美術の林先生。
2組は新しく来た理科の小沢先生。副担は旧3年生から来た怖そ~な国語の児馬先生。
3組はもっT。副担は同じく児馬先生。
となった。全員男の先生だ。多分、児馬先生来たのは、評判の悪かったこの学年を取り締まるためだろう。
大原先生はというと、予想通りに一年生の所属となっていた。しかも副担。やっぱおろされちゃたんだ・・・・。
1組は旧1年2組の連中はそんなにおらず、ほぼ旧1年1組に染まるクラスだった。
なかなかいいんじゃないのかな。萌とも達之介とも同じクラスになったし。
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どこのクラスからも悪い感じの噂は耳にしないまま、時は過ぎていった。
登校5日目。
朝の会で大柄先生は改まった表情で話し始めた。
「みんなに伝えなければならないことがあります。坂下萌さんが急に引っ越すことになりました。」
来た。このときが。
クラスの皆は驚いて無言状態。
「じゃあ、一言。」
「はい。」
萌は教卓によって皆の前で口を開いた。あんな気の小さい萌が、今皆の前で話してるなんて・・・
「みなさん、今までありがとうございました。このクラスで過ごすのは短い間でしたが、とても楽しい日々が送れたと思います。引っ越し先でも頑張るので、皆さんも中学校生活頑張ってください。」
萌は一礼して席に戻った。皆は拍手を贈る。一年生の頃では考えがたいことだった。
そして、その放課後。俺は萌の家に行った。
萌は自分の荷物を運んでいて、俺に気づくと驚いて近づいてきた。
「駿君!来てくれたんだ。嬉しい!!」
「そりゃ来るさ。」
俺と萌は手を握り合った。萌の両親がいたけど気にしない。
「急でごめんね?私、本当はあのクラスならやっていけると思ったの。でも・・・・」
「・・・わかってるよ。決まったことだもんな。」
「駿君、絶対先生になってね!私、その時が来たら本当になってるか見に行くから。」
萌の悪戯っぽい笑顔に俺は微笑んだ。
「んじゃ、その見に来たとき、萌もピアノの先生になってなきゃ困るぞ。」
「そうだね。お互い頑張らなくちゃ。」
「あ、あと、何があってももう死にたいなんて考えんなよ。俺が待ってるんだからな。」
「はーい。・・・私、駿君にもらったおじぎ草のように頑張るから!」
「あぁ・・・」
急に切なくなってくる。こうやって話すのも、最後なんだと。
その時、萌のお父さんがこちらに声を掛けてきた。
「萌ー、そろそろ行くよー」
「はーい」
萌は返事をした後再び俺を見詰めた。
「今まで、本当にありがとうね、駿君。」
「もう、行くのか?」
「うん。時間もないし・・・」
俺は目がじわじわと熱くなってきた。
「また、逢えるよな。」
「そうだよね。離れ離れになるけど、次に再会するときは二人の運命を誓おう。」
俺はその意味が分かった。
次の再開は俺が教師になろう歳の頃だ。それまで忘れるわけにはいかない。
「うん。”約束”だよ。」
俺たちは指切りをした。
指切りなんて、久し振りにするが、この指切りはなぜか小さい子がするような薄っぺらいものじゃないと思った。
切なげに指が離れてしまう。
泣いては駄目だ。笑顔で萌を見送ろう。
俺は精一杯の笑顔を見せた。
「じゃあな、萌。」
「またね、駿君。」
萌は車に乗り込んだ。
乗り込んだ後も萌は窓を開けて、俺の手を握ってくれた。
そして手が離れ、萌の車は走り出した・・・・・_________
じゃあな、萌。俺はお前を一生忘れない・・・・。
萌が引っ越した後、この学年はがらりと評判が変わった。
悪さはしないし、授業は進むし、テストの平均点は上がるし、何より感動したのは黒板にチョークが置いてあること。
なぁ、萌。戻ってきたっていいんだぞ?
お前が来たらビックリするだろうよ。
でも、もう遅いけどな・・・・・・_______________
これにて過去編の終了です。
長かったですねー。本編のことを忘れちゃっていませんか?(笑)
これからです、これから!
本編でもよろしくお願いします☆