第20話 決意と別れ
4月に入った。
まだ春休みだけれど、もう中学一年生ではなくなったんだ。
なんか、この一年間、いろいろあり過ぎたな。そういえば、いつ頃からクラスが可笑しくなったのか、大原先生に諦め始めたのか、忘れてしまった気がする。
覚えていたとしても、思い出したくない。
雪も融けていき、春の匂いが漂ってきたある日。俺は近くの公園に足を運ばせた。
そこは景色が良くて、四季の変わり目がハッキリする場所だから、今の時期最高だ。俺的にも気に入っている公園である。
人気のない原っぱのほうで腰かけていると、
「駿君?」
と、何度も聞いていた最近は懐かしい声が聞こえる。
振り返ると、確かに彼女はそこにいた。
「やっぱり駿君だ。」
「萌も散歩に来たの?」
「そう。今日は天気がいいからね。」
萌は俺のすく隣に座ってきた。途端に風が吹き、萌の柔らかな髪を揺らしていく。
「最近穏やかだよね。あいつらとも会わないし。」
「うん。とってもリラックスしてる。」
「しかも、2年生になったらクラス替えだ。あの仲間たちはまさか全員一緒になるわけじゃないもんな。」
「そうだね。何人かくらい一緒になったとしてもまだ平気だと思うな。あ、でも先生はどうなるんだろう?」
「俺さ、こないだ達之介にあったんだ。その時話したんだけど、大原先生、この学年とばされるかもって。」
「えっ」
「あんな問題起こしたじゃん。それに達之介いわく、あいつらは新人教師&女教師ってところで反抗したらしい。だから、男の先生ばっかになったら少しは変わるだろうって。3年生は持ち上がりだから、多分、1年生に所属するのかな?」
「でも、また担任になったら問題起きるよね。」
「うん、俺もそう思って。だからせいぜい副担とかかな。」
「だよね。・・・すごいな、駿君も達之介君も。先のこと深く考えてて。そうなると、いいね。」
萌は遠くを見つめてそう言った。そんな萌をみて俺は思った。
「萌。俺、将来の夢決めたよ。」
急な俺の言葉にビックリしながら萌は”え、なになに?”と尋ねてきた。
「中学の先生。大原先生のようには絶対にならない。生徒たちに俺たちのような思いをさせない。見返してやるんだ。」
萌を見ると、萌はにっこり笑っていた。不意に体を乗り出してきた。
「・・・凄い。いいよ!駿君数学得意だし。必ずなって!私たちのような生徒、助けてあげて・・・」
「あぁ・・・・。だから見守っててくれ!俺が教師になるまで。萌のこと、俺がずっと守るから・・・」
すると、萌は不意に切なげな顔をした。悲しそうに笑って、首を横に振る。
え・・・?
「ごめんなさい。それはできなくなっちゃった。」
「何でだ?」
萌は一回口を噤んで俺の顔を見た。潤った目が何かを訴えている。
「私・・・・引っ越すの・・・・。」
その言葉を理解するのに、数秒はかかった。
「・・・え?なんで!?」
「あのクラスで、いろんなことあったでしょう?お父さんとお母さんは知っていたの。また同じようなことがあったら、私自身の人生に影響するから・・・・だから・・・・学校を変えなければいけないって。」
俺は必死に否定した。
「でも、2年生になってあいつら変わるかもしれないじゃん!もう問題起こさないし、授業だって進むよ!別に学校変えなくったって普通の学校生活送れるかもしれないじゃん!!」
「でも、もう決まったことなんだ。近日中にお婆ちゃん家に引っ越すって。」
「そんな急な・・・・」
萌は涙を浮かべてこういった。
「私、駿君と一緒にいて、とっても楽しかったよ。もし駿君がいなかったら、私今頃いないかもしれないもの。」
「萌・・・・・」
「駿君、私もね、夢があるの。ピアノの先生になるって。だから、遠くに離れてもそれぞれの夢を諦めずに頑張っていこうよ。」
何故か、俺まで涙が出てくる。
「駿君、大好きだよ。この想いは一生心の中にある。ずっと、愛してる。」
「俺もだよ、萌。お前のこと絶対に忘れない。大人になっても、愛してるから・・・・」
「駿君・・・・」
俺たちは唇を重ねた。それぞれの涙が顔につき、一層涙が溢れてくる。
この瞬間を、俺は永遠に忘れない。
忘れて堪るか。
俺の初恋の相手。俺の愛した女の子。
___俺の・・・・掛け替えのない・・・・”恋人”・・・・・・___
とうとう別れを告白しちゃいました(悲)
”約束”近いです!
次回もよろしくお願いします☆