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『約束』  作者: wokagura
☆本編☆
2/39

第2話 不意に思い出された記憶

 北中学校の2年3組の教室は、初夏の風と日差しを浴び、静かで心地よい空間ができていた。


 その中で、教師の声が響き渡る。


 「この方程式は、もう一方の式に代入してXを消去して解きます。・・・ここポイントだからな。期末で重要だぞ。」


 この教師こそ、駿河逞真だ。整った顔をしているが、生徒からは鬼のようだと嫌われている。規則を破ったりしたら、額に血管を浮かばせ、細かいことまで説教するのだから。


「では、今日の授業はこれまで。しっかり家で復習するように。」

 

 そう逞真がいうと同時にチャイムが鳴った。

 

 「気を付け、ありがとうございました。」

 「ありがとうございました。」

 

 終礼を終えると、クラスの中が一気に騒がしくなる。逞真は気にせず、教室を出ようとしたが、クラスの女子数人に声を掛けられ、足を止めた。


「駿T、駿T!」


 このあだ名については、昔から”駿”(スル)と呼ばれていた為、TPOに合わせてくれるなら、逞真は別に嫌ではなかった。


「なんだ。」

「今、(かける)実留(みる)に告ったんですよ。」

「おう、この騒動の理由はそれか。・・・今?」

「今っていうか、授業中。席が隣だから、机に書いて。ね、実留ーっ。」

「う、うん。」

 

 頬を赤く染める実留の隣には、照れている翔。逞真は渋い顔をした。


「机に文字や絵を書いては駄目だとあれほど言ったはずだが?それに授業中にそんなことするということは、手紙を回すのと一緒だ。授業に参加していないということだぞ。」


 生徒たちは慌てる。


「あ゛~!!ごめんなさい、ごめんなさい!」

「でもいいじゃん。許してあげてよ。これで愛が芽生えたんだし。」


 (”愛”か・・・・・)


 逞真は物思いに二人を見詰め、微笑んだ。


「今回きりだぞ。次にしたら・・・・」

「はいはいっ、わかってます!」

 

 逞真は背を向け、こう言った。


 

「いい恋をしろよ。」



 教室を出ていく逞真に生徒たちは硬直した。


「駿T、大人っぽい・・・」

「駿Tもう大人じゃん。」

「そうじゃなくて精神的に。なんか、体験談を含めた大人の物言いで。」


 すると、男子が興奮しながら


「”体験”ってどっちの!?」

「馬ー鹿。変態は黙っててっ!・・・そういえば駿Tって、独身なのかな?」

「あ、確かにそれ気になる。」

「駿Tいいっちゃいいんだけどねー・・・」

「あれのどこが。」

「顔は。」

「あぁ、そっちね。面食いの人好みの人ならもう結婚してるんじゃない?」

「でも、20代だし付き合ってるとか。」

「いやいや、性格も性格だしよぉ。例え面食いの人でも生真面目で彼女困ってそう。」

「あー、わかる。それでも彼女はほんの少しの駿Tの心遣いを期待してるんだよー。」

「それ、お前の理想だろ。ひょっとしたら彼女だけデレデレかもしれねーぜ?」

「うっそぉー」


 そんな会話も知らずに逞真は廊下を進んでいく。


「あっ、駿河先生、こんにちは!」

「こんにちは。」


 通り過ぎる生徒をみて逞真は想い返した。


(丁度、こいつらぐらいの年齢だったかな、あの出来事は。)

『もう、行くのか?』


 少年の自分の台詞。


『うん。時間もないし・・・』


 女の子の切なげな声。

 

『また、逢えるよな。』

『そうだよね。離れ離れになるけど、次に再会するときは二人の運命を誓おう。』

『うん、”約束”だよ。』


__指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます指切った__二人の最後の指切り。


『じゃあな、(もえ)。』

『またね、駿君』


 逞真にとって忘れることのない深い深い約束は、今も胸の中に刻まれている。だが、逞真は叶えられることのできない出来事だと諦めていた。


(まったく、生徒のせいで不意に思い出してしまった。あの過去を・・・)

次回もよろしくお願いします☆

 

 wokagura

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