第17話 ホワイトデーというものは・・・
あの日、バレンタインデーのとき自分の想いに気づいてから、俺は胸がいっぱいになっていた。
萌のことが好き・・・・
「・・・る、する?駿!」
・・・・あん?
「駿って!!」
「あっ、ごめん。なに?亜樹。」
「今日、うちら日直でしょ?もう8時だから日誌取りに行こうよ!」
「・・・あぁ、そうだったね。行こうか。」
俺と亜樹は職員室に行った。
一年生の先生方の机の端にある棚から勝手に日誌を奪う亜樹。それに大原先生が気付いた。
「あ、先生、持ってきますね。」
俺がそう付け加えて、なんとかフォローOK☆
「今日、駿書いてね。めんどい。」
「うん、わかった。」
職員室を出て亜樹に言われて日誌を受け取った。
ぱらっとめくってみて、俺は思わず目を見開いた。
え?ちょっ・・・まっ・・・・
ゲフン!ゲフン!きょ、教室でまたゆっくり見てみることにするか・・・・
そして教室。俺は再び日誌を見てみた。
うん、やっぱ、幻じゃないのね。なんだい、これは。
前のページには欠席の所に大原と書かれていた。感想には、英語がクソつまんなかったwwwと。本人に面と向かって書くなよ・・・・
大原先生のコメントは、ヒド・・・それからもっと具体的に書いてね。と書いてあった。よくそれだけでおさめたもんだ。
これを書いたやつは・・・・一輝か・・・やっぱ、そうか。
その前のページは、それぞれの教科の授業について書くところに、他の先生は大柄先生など、先生が付くけど、大原先生だけ消されていた。
その前のページは、色ペンで大きく、う〇こ。これはこれは、また大胆に・・・・
しかも、女子が書いてるって・・・・
ほかの日誌もよく見ると、先生が書いたコメントに、色ペンでまたもコメントされていた。
例えば、現実みろよwwww
だったり、
ブスのくせに偉そうなこと書くな!
とか、
担任代われ!
などなど。
いつの間にかいたのか、これは酷かった。勿論、達之介だとか萌とかは真面目に書いてるけど。
当然俺も真面目に書くんだ。
そして、朝の会。
俺たちが前に出て司会するんだけど、亜樹は携帯小説なんて持ってきて読みながら始めた。
「これからー朝の会を始めまーす。目標はありませーん。」
確かに、黒板に書くべき目標が書かれていない。
「係りからー、ないねー」
あったとしても、亜樹はあてないんだろ。
「今日の給食当番ー、大原。」
これには皆爆笑。
「掃除当番ー、なし!」
やった☆と、一同。大原先生が
「ないわけないでしょ!」
というと、
「日直がないって言ったらないんですっ!」
みたいなことを誰かが言った。そうだ、そうだ!と大盛り上がり。
「これで、朝の会を終わりまーす!」
先生の話をなくして、皆終わったように立ち上がった。はは、いつものことだけど、日直になって改めて思ったよ。うちら、酷い。
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今日は、ホワイトデーだ。
男子どもは、そもそももらってない為、だれもなにも持ってきていなかった。
「なぁ、達之介。お前は萌にお返しあげた?」
達之介に訊くと、頷いた。
「俺は、朝登校前にあげたぜ。家結構近いし。お前はあげた?」
「まさか。真逆の道だし、学校に持ってくるわけにもいかないだろ?」
「それもそうだ。」
「達之介は何あげたの?」
「俺?・・・菓子。」
「なんの。」
「市販の。手作りよりはマシだろ。ホワイトチョコの板チョコだ。」
「ああ・・・そう。板チョコね。」
「お前は何あげるの?」
「・・・・花なんだけど。」
「花!?なんでまた!?」
「いや・・・・菓子よりその方がいいかなって。萌に似合いそうな花があったんだ。」
「ふぅん、俺は花より団子だが・・・坂下は団子より花だよな。いいチョイスだったと思うぞ。」
「ホントか!?よかった!」
「でも、お前らしくないぞ?駿なら、菓子とかで済ませそうで、華のない男だと思ったのに。」
「それ、貶してんのか?確かに、他の子にもらったら、きっと菓子だったな。」
「じゃ、なんで坂下には?」
俺は思い切ってこう言った。
「・・・俺、萌が好きだって言ったら、笑う?」
「・・・・」
達之介は少し黙ってそれからニッと笑った。
「やっぱりか。そうだと思った。」
「なんでわかったんだよ。」
「見てればわかるさ。坂下は気づかなかっただろうがな。」
「・・・自分でも最近気づいたんだ・・・。でも、この気持ちははっきりしてると思う。」
「そう見えるよ。お前はそういうの、大切にしそうなやつだもんな。」
俺と達之介は微笑み合った。
放課後、俺は萌のお返しを持って萌の家に向かった。
なんだ、凄い緊張しているぞ、俺。こんなの初めてだ・・・・。
インターホンを押すと、萌のお母さんが出てくれた。
「あら、駿君じゃない!いらっしゃい。」
「萌はいますか?」
「えぇ。上がってちょうだい?」
「あ、いえ。今日は外でいいんです。萌に悪いですが、呼んでもらえますか?」
「え、いいけど、駿君は寒くないのかな?」
「全然平気です!」
正直、家の中ではなく、萌と二人きりで話したかったからなんだよね・・・・。
すぐに萌が出てきた。
「駿君!?どうしたの?わざわざこんな遠くに。」
「・・・前の、お返し。」
俺はちょっとぶっきらぼうに言って、萌に花の入った紙袋を渡した。
「うわぁ・・・っ。ありがとう・・・。開けてみていい?」
「うん。」
萌は袋をカサカサ開けて、中にある花を手に持った。
「お花?」
「うん。おじぎ草っていうんだ。ツンツンしたら葉をパタッて閉じるんだって。面白いだろ。」
「うん!・・・でも、この時期によくお花なんてあったね。」
「外じゃなくて家内で育てた花らしいよ。小さなカップに入ってるから、可愛いなって。・・・それから、萌に似てるなって。」
「どうして?」
「お辞儀するって、いい子じゃん。萌も凄くいい子だからね。そして、一度葉を閉じたってまた葉が開くだろう?イジメにも負けない前向きな感じが、これは萌だって。これから暖かくなったら、花も咲かすんだ。萌みたいな、可愛い花に。」
「え、褒め過ぎだよぉ!」
「そんなことないって!ホントにそう思ったんだから!」
萌は照れくさそうにはにかんだ。
「・・・・バレンタインデーのときは、ありがとうな。とても美味しかった。人に物をもらって、こんなに嬉しかったことはなかったと思うよ。」
「そんな・・・大袈裟だなぁ、駿君。」
「大袈裟なんかじゃないよ。・・・・大好きな女の子にもらったりしたら、誰だってこんな気持ちになるよ・・・。」
・・・・萌は一瞬吐息を止めた。少し戸惑ったように笑った。
「そ、それって、友達として?それとも・・・」
「異性のほうだよ。」
はっきり俺が言うと、萌は目を見開いた。
「前、俺は萌に親友だって言ったけど、それ以上に君を想ってる。萌が好きだ。」
俺は萌の手を握った。
「だから、俺と・・・・付き合ってくれないか・・・?」
萌は少しの間、一秒か二秒ぐらいのことだ。静かに黙ってそれから、ゆっくりその手を握り返してくれた。
「はいっ!」
満面な笑顔だった。
「でも、お願いがあるの。」
「なに?」
萌は少しためらいを見せたように俺を見たが、決心したように言った。
「これからも、その気持ちでいてほしいの。私を好きでいてほしい。一人ぼっちになるのは、もう、嫌だから・・・・・」
萌の手が微かに震えていた。俺は両手で強く握った。
「当たり前だろ!?絶対に一人にさせないから!ずっと、ずっと・・・大好きだから・・・・。」
萌は頷いて、笑った。急に照れくさくなって、俺はそっぽを向いた。正直、素直じゃないな、俺は。
「じゃあ、そういうことだから。」
背を向けようとすると、不意に萌との距離が縮んだ。
「駿君・・・!」
「え・・・?」
・・・・・・
一瞬、時が止まった気がした。
今、萌に何をされたか、全くわからず、頭が混乱する。
萌の距離が遠ざかったとき、やっとわかった。頬に、萌の柔らかくて暖かい唇が触れた。
キスをされた・・・・。
萌は照れながら言った。
「私も、駿君が好きだよ・・・・。大好きだから。」
「・・・・おう。」
俺たちは微笑み合って、そして別れた。
帰り道、萌に口付けられたところに触れてみた。まだ、心臓がドクドク激しく脈打っている。
・・・・・ホワイトデーというものは、こんなにドキドキするものだったかな?
告った!駿君告りましたぁ~!!
なーんて、一人で盛り上がって馬鹿みたいですね(笑)
次回もよろしくお願いします☆