第16話 バレンタインデーというものは・・・
2月は節分以外にもイベントがある。現代人にとってはこっちのほうが重要なイベントかもしれない。
それは、2月14日・・・・・・・そう、バレンタインデーだ。
朝っぱらから、女子たちは大騒ぎだ。
男にあげるというよりは、女子同士で友チョコを交換する感じ。先生に見つからないように頑張る人もいたが、大原先生自体あげたり、テニス部にもらったりしてるから全然大丈夫だった。
これを見て、男子たちは
「うわ、キモいな。チョコなんてもらって何が嬉しいの?」
みたいなことを愚痴っていた。確かに、俺たちには縁のないことかもね。
「あんなにチョコもらって、太んねーのかな?」
「それ、触れちゃ駄目でしょ、達之介。」
と、昼休みに俺と達之介で話してると萌がそっと近づいてきて、こういった。
「・・・二人とも、放課後教室に来てくれない?」
「え?俺と駿?」
「うん。ちょっと、用があるの。」
そっと囁くように言われ、俺たちは不思議そうに頷いた。
そして、放課後、俺たちは誰もいない1年2組の教室に来た。
「えーと・・・確かに言われたよな?」
「うん。俺が証人だ。」
「だな。」
そんなことを話していると、何かを持っている萌がやってきた。
「ごめんね、二人とも。わざわざ来てもらって。・・・はい。」
萌は持っているものを俺たちに渡した。
「え?」
「これ、チョコなんだ。二人にはいろいろ助けてもらったから、感謝の気持ち。よかったら、受け取って。」
笑顔で言われ、俺と達之介は顔を見合わせて、受け取った。
「あ、ありがとう・・・・でも、感謝だなんて、そんな立派なことしてねぇぞ?」
「ううん、私にとっては恩人なんだ。本当にありがとう!」
俺は、凄く嬉しかった。さっきまで、縁のないつまらないイベントだと思っていたが、今そんな気持ちは消え失せていった。
家に帰ってみると、聖奈が口をチョコでいっぱいにしていた。
「化け物か、お前は!?」
「聖奈ですよぉー」
「いや、わかってるんだけど、それ全部チョコか?」
テーブルの上にはたくさんのお菓子袋。
「うん。幼稚園でもらったの。」
「太るぞ。」
「いいもん。兄ちゃんはもらってきたぁ??」
「・・・・あぁ。」
その言葉には母さんが反応。
「あら!?あなたがもらってくるなんて・・・・」
「もらっちゃ悪い?」
「いや・・・モテてるのかなって。」
「馬鹿じゃないの?そんなんじゃないって。普段助けてもらってるから感謝の気持ちだって、もらったの。」
「あぁ、そう。」
俺は溜息を吐いてソファに腰かけた。そして、萌の袋を開けた。トリュフらしきチョコとともにメッセージカードが入っていた。達之介も入ってたのかな。
カードにはこう書いてあった。
”駿君、いつも助けてくれて、ありがとう。駿君のおかげで私は何回救われたかわかりません。あと、クラス替えまで1か月と少しだけど、これからも仲よくしてください。じゃあね。”
チョコを食べながらそれを見ていると、微笑ましくなってきた。
人に物をもらって、こんなに嬉しかったことはないだろう。
「ねー、聖奈にもちょうだい♡」
なんで、気分を乱すように来るんだ、こいつは。
「嫌だね。自分のだけで充分だろ。」
「えーっ」
そんな感じで、俺は萌のチョコを存分に味わった。
部屋で、俺は思った。
少し前から俺は萌に不思議な想いを抱いている、と。逢うだけで穏やかになるし、こうやって物をもらったり、前みたいに家に招待されたりしたら、これまでにないドキドキを感じていた。
萌を見ていると・・・思わず見惚れてしまうし、助けてあげたいって気持ちも充分にある。
親友・・・・・
以前俺は萌にそう言ったが、果たしてそれだけなのか?
男友達しかいなかったから、そう思うかもしれないが、普通の女友達とはまた違う。
『助けたい』、『話したい』、『一緒にいたい』、『見惚れていたい』、・・・・・『恋しい』・・・・どんどん大きく膨らんでいった俺の気持ち。それはまるで、何かの欲求を満たしたいかのようだ。
保健の授業で、習った。
人は欲求の中に、”愛情”というものがあると。性とどう向き合うかって授業でも、”恋”というものがあると先生は教えてくれた。
俺、いつの間に、こんな気持ちになったんだろう?
どうして気づかなかったんだろう・・・?
________萌のことが・・・・・好きなんだ・・・・・・___________
次回もよろしくお願いします☆