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第一話 平民少女アウレリア


ここは、世界有数の魔法の名門校。


ミスティア魔法学園。


貴族たちが集い、魔法の才を競い合う場所。


そして同時に、魔力量がすべてを決める場所でもある。


力の大小が、そのまま身分の価値を示すこの学園において、


平民が上に立つことは、まずありえない。


——本来ならば。


この物語は、そんな学園に入学した一人の少女の話。


入学初日、彼女が叩き出した評価は——最低。


落ちこぼれ。無能。出来損ない。


誰もがそう嘲笑した。


だが、その評価は真実ではない。


彼女はただ、力を隠しているだけだった。


平民でありながら、王族すら凌ぐ魔力を持つ少女。


これは、そんな少女がやがて王国の運命すら変えていくことになる物語。





☀︎


「リア、行くわよー!」


 玄関の扉を開けながら、ミリナが元気よく声をあげた。

 今にも出発しそうな勢いだ。


「えっ、お母さん、ちょっと待って!」


 アウレリアは慌てて身支度を整える。

 急ぎ過ぎて左右の靴下が逆になっていることにも気づいていない。


「よし。準備完了!」


アウレリアが胸を張ると、

ミリナは呆れたように肩をすくめた。


「お母さん待ちすぎて、ミイラになっちゃうところだったわよ」

「そんなに待ってないでしょ。」

 

 そう言いながら、二人は顔を見合わせて笑った。


 アウレリアとミリナはこの村に住む普通の平民の親子。

 父親はアウレリアが生まれて間もなく失踪してしまった。

 それでも、彼女はミリナにたっぷりと愛情を受けて育ってきた。

 だから寂しいと思ったことは一度もない。


「ていうか、お母さん。私たちが魔力測定なんて受ける必要ある? 私たち平民だよ? 魔力なんてあるわけないよ。」


 この国では、12歳になると平民、貴族に関係なく魔力測定を受ける。


「しょうがないわよ。魔力を持つ人は全員魔法学校に行かないといけないんだから。」

「よくそんなめんどくさい決まりを作ったもんだよ。」


 この決まりは昔、強大な魔力を持った者が魔法の使い方を学ばず、悪の道に進んでいったからだと言われている。 が、実際は詳しくは分かっていない。


「どうせ王族が、魔法使い”様”を全部管理したいだけでしょ?」

「ちょっとリア、そんなこと言っちゃだめよ。そんなことを言う子に育てた覚えはありません!」

「毎日毎日王族どもの愚痴ばっかり言ってる人にそんなこと言われたくないな~。」


 実のところミリナは、王族を毛嫌いしていた。

 それは、娘であるアウレリアにも理由は分からない。

 だが、この村の村長は理由を知っているようだ。

 アウレリアも18歳になったら、教えてもらうと約束をしていた。


「着いたわよ。」

「いつ見てもあんまり覇気を感じないものね」


 アウレリアがこう言うのも無理はない。

 目の前には、こじんまりとした教会が佇んでいた。

 王都にある大教会は王族の城にも負けないほど豪華なのだが、なんせここは田舎の村だ。


「でも、大丈夫よ。ちゃんと魔力測定はできるんだから。」

「まあね。でもどうせなら豪華で華やかな場所でやりたくない?」

「さっきまで、魔力測定を受ける必要がないとか言っていた人のセリフとは思えないわね。」


 そんな軽口をたたきながら、教会に入ると村にいるすべての12歳の子供たちが集まっていた。

 その真ん中に水晶が置いてあった。

 これが国宝の「鑑定水晶」である。

 一応国宝なので、王都から騎士が数名来ている。


「見てよお母さんあれ。国宝があるのにほんの数人しか騎士が来てない。どうせこんな村からは魔力ある人なんてでないとでも思ってるんでしょうね。本当に舐めやがって。」

「こらこら。そんな口きかないの。それに魔力持ちが一人もでないことは事実でしょう?」

「まあそうだけど……」

「いっつも言ってるでしょ?嫌いな人や、興味のない人には突っかからないの。体力と無駄よ。」


 そう言って、ミリナはにっこりとほほ笑んだ。

 この時アウレリアは思った。


(お母さんって、絶対に怒らせたら怖いよな。)


 と。





「今から魔力測定を始める!」


 全員集まったところで、王都から来ていた騎士の一人がそう言った。

 魔力測定は、鑑定水晶に手をかざすだけの簡単な儀式だ。

 ここでは魔力の有無が確認される。

 鑑定水晶が光れば魔力あり、光らなければ魔力なしだ。

 最初の子どもが手をかざす。

 数十秒待ってから光らなかったら魔力が無いということだ。


「あれ結構きつくない?だって何も起こらないのにただずっと手をかざしておかなきゃいけないんでしょ?めっちゃ恥ずかしいじゃん。」

「そう言ってるけどリアもやるよ?」


 そう指摘されたアウレリアは、顔をしかめながら


「うへ~最悪。でもどうせ誰も光らないでしょ。」




「最後、アウレリア・ブラウス」


 そう呼ばれると、アウレリアは拳を握る手に、ぐっと力がこもった。

 そして水晶の前まで来て、歩みを止めた。


「手を前に。」

「は、はい。」


 そうして、水晶に手をかざした次の瞬間……


「きゃあぁ!」


 目を開けていられないほどの光が放たれた。


「お、お手を引きくださいッ!」


 そう言われ、アウレリアは慌て水晶から手を引いた。

 教会の中が一瞬で静まり返る。


「ば、馬鹿な……」


 騎士の一人が、水晶を見つめたまま呟いた。


「魔力反応……確認。」 

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