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誰も退会できん教室…クラスLINEと日本の子どもたち

作者: 徒然生成

✦誰も退会できん教室 ― クラスLINEと日本の子どもたち ―


---


❥あらすじ


2025年、モバイル社会研究所の調査によると、

日本の小学生がスマホを持ち始める平均年齢は10.3歳。

小学5・6年生では、2人に1人(約51%)がスマホを所有している。


つまり、クラスはすでに

「スマホを持つ側」と「持たない側」に分裂しており、

その境界がいじめや孤立を生み出している。


親は「塾で使うけん」「勉強に必要やけん」と信じて買い与える。

だが、スマホの中ではすでに別の社会が動き出している。


その名は「クラスLINE」。


この物語は、福岡に住む小学6年の女の子が語る、

電波の中の現代の友達社会。

そして、日本の家庭に静かに広がる、

見えない戦争の記録である。


---


❥第一章 はじまりのスマホ


2025年。ニュースでは「小学生のスマホ普及率51%」と流れた。

そう、その調査は正しい。


だけどみんな言う。

「みんなスマホ持ってるの」

親はその言葉を鵜呑みにする。


うちの教室でも、

「持っていない子」も本当は半分近くいるんだよね。


「○○ちゃん、まだ持ってないん?」

「え、ウソ?家、貧乏なん?」

「あんた、子ども食堂行っとるんちゃう?」


そんな言葉が笑いながら飛び交う。

けれどそれは冗談なんかじゃない。


お母さんは言う。

「塾に行くとき、連絡が取れたほうが安心やけん」

お父さんは言う。

「GPSで居場所がわかるけん便利じゃ」


そうやって“防犯”や“教育”という言葉で、

スマホは家庭に入りこんだ。


でも、その中で何が起きているかを

ほとんどの親は知らない。


その静かで恐ろしい戦場の名は、「クラスLINE」。


---


❥第二章 親にねだる理由


「みんな持っとるけん、うちも欲しい」

それが、最初のお願いだった。


お母さんは「ほんとにみんな?」と聞いた。

うちは笑ってうなずいた。

“みんな”と言えば、だいたい通ることを知っていたから。


本当は2人に1人しか持っていない。

けど、“半分”が持っているという事実は、

子どもの世界では“全員”と同じ意味を持つ。


「塾でLINE使うけん」「友達と位置情報共有しとるけん」

理由はいくらでも生まれる。

でも本当の理由は、ただひとつ。


――仲間外れにされたくない。


---


❥第三章 クラスLINEの入り口


「ようこそ新入り」

初めてグループに入った瞬間、メッセージが飛んできた。


おそっ

やっと来たか


楽しいはずの会話。

でも、心の奥がざわついた。


「既読スルーしたら仲間外れ」

「返事が遅いと無視されたことになる」

「スタンプがダサいと空気が冷える」


笑顔のスタンプが飛び交うたびに、

胸が少しずつ苦しくなっていった。


言葉よりも“反応”がすべてを決める世界。

ほんの数秒の沈黙が、孤立をつくる。


---


❥第四章 無意味な防御


お母さんは言う。

「TikTokは禁止。インスタは見るだけ」

お父さんは言う。

「悪いことしたらスマホ没収やぞ」


でも、それは家の中のルール。

外の世界はもっと速い。


「親にバレん方法あるけん」

「通知オフにしたら見られんよ」


そんな“悪知恵”が、クラスLINEでは“知識”として回っていく。


親は“禁止”で守ろうとする。

子どもは“抜け道”で学んでいく。


それはもう、反抗でも犯罪でもない。

ひとつの“文化”になってしまっている。


---


❥第五章 偽りの写真


ある日、トークに自分の名前が出た。

「ねえ、これ見て!」


画面には知らない服を着た“うち”が笑っていた。

でもそれはAIが作った偽りの写真。


「マジで似とる」

「これ投稿したらバズるっちゃ」


みんな笑っていた。

でも、うちは泣きそうだった。


お母さんに言おうと思ったけど、

「自分が何かしたんじゃない?」って言われる気がして、

何も言えなかった。


夜、スマホの光で顔が照らされた。

画面に映った“うち”の顔が、

もう自分じゃない気がした。


---


❥第六章 電波のスケバン連盟


クラスLINEは、もうクラスのものじゃない。

気づいたら他の学校、他の県の子まで入っていた。


「広島の○○ちゃん、頭キレるっちゃ。しかも可愛いし」

「東京のリーダーが言っとったけん、それ真似したらバズるよ」


バイクも特攻服もいらん。

スマホ一台で“電波のスケバン連盟”ができあがる。


でも、みんな自分を“悪い子”と思っとらん。

「うちら普通」「ちょっと遊んどるだけ」

そう言いながら、誰かを泣かせても気づかん。


仲間でいることが、いちばん大事な正義になっとるけん。


---


❥エピローグ だれも退会できん国


スマホを持つことは、もう“選択”やない。

生活そのものになっとる。


親はまだ「持たせるか」で悩んどる。

でも子どもはもう「どう返信するか」で苦しんどる。


日本中で、同じような親子の会話が今日も続いとる。


「うちの子は大丈夫」

「ルール作っとるから平気」


けど、もうルールじゃ防げん。

電波は、心の奥まで入りこんどる。


昭和の不良は夜の街におった。

令和の不良は昼の教室におる。

しかも、自分を“まっとう”“頭がええ”“綺麗”と思っとる。

それがいちばん恐ろしい現実や。


教育関係者にも気づかれんように、

クラスLINEはどんどん広がっとる。


既読をつけんかったら責められ、

退会したら“消えた人”になる。

だれもログアウトできん国。


だけど、うちは信じとる。

どこかで電波を消して「おはよう」と言える朝が、

きっとまた来る。


画面の向こうで泣いとる子が、

ほんとうの笑顔を取り戻せる国になることを。


あれ? これって昭和と同じやん。

見えん上下関係、空気を読む社会。

昭和の親父が形を変えただけで、

昔と何も変わっとらん。


誰か、田中角栄みたいな政治家が現れて、

この国の“クラスLINE”を、本気で改造してくれんやろか。


あっ。

また真夜中なのに、クラスLINEが来た。

どうすればええの…。

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