第6話 能力の教え合い(前編)
チームを組んで戦う以上、お互いの能力を教え合わないとどうにもならない。
単純にそれぞれ異なるという超能力にどんなものがあるのかと興味津々、好奇心が湧いていた。
ノノの能力が特殊なブーメランをどこからともなく出すものだから、みんなも何か特殊な効果を持った武器、アイテムを出すものなのか。
それだとバリエーションに乏しそうだから、もっと色々とありそうだけど。
自分のブーメランも早く試してみたかった。
本当に出そうと思うだけで、出てくるのか?
実際、投げたら本当にノノが移動しても、ノノの手元に戻ってくるのだろうか?
深刻な状況のはずなのにワクワクしている自分がいる。
いやまあ、人を傷つけるような真似をすることにためらいがないわけではないのだけど。
それでも、尋常じゃない特殊能力の行使なんて、普通体験できるものじゃない。
体験といえば、これは臨死体験ということになるのだろうか?
臨死体験は死にかけた時にするもので、ノノたちは実際に死んでいるのだから当てはまらないか?
じゃあ、なんて言えばいいのか?
瀕死は臨死とそう変わらないだろうし。即死は違うし。
決死?
違うかな。
何々死にこだわらないなら、普通に死後の世界体験になるか。
まあ、この世界は多分死後の世界の一部に過ぎないんだろうけれど。天国とか地獄って感じじゃないし。
じゃあ、どこかと言えばどこなのだろうか?
思いつかない。
天国でも地獄でもない、天国か地獄に行く前に通過する場所って感じなのかな?
まあ、考えても分かりそうにない。
空からの声が教えてくれなかった以上は知りようがない。
知的好奇心みたいなものがないではないが、生き返ってしまえばここでのことはどうせ忘れてしまうのだ。深く考察しても仕方がない。
名前をささっと教え合って、次は能力を教え合うことになった。
そうなると、誰が最初に自分の能力のことを話すのかという問題が出てくる。
チームを組んだとはいえ、自分の能力を最初に話すのは、手の内を先に晒してしまうようで抵抗がある。
なんていうことを全くこれっぽっちも考えない者が1人いた。
ノノである。
真っ先に自分の能力について、話すことにしたのは彼女であった。
ほかの4人が言いにくそうだから気を使ったわけではない。
とにかくブーメランを出してみたくて、ウズウズしていたのだ。
だから話すというよりはまずは見せる。実演することにした。
「見てて」
ノノは右手をかざす。
「ブーメラーーン!」
べつにブーメランと言う必要などないのだが、雰囲気だ。
ヒョウコさんとセトくんが呆気に取られているように見えるが、きっと気のせいだ。
パッと出現したブーメランをバッとノノは掴んだ。
ずしりとした重みがある。片手で保持し続けるのは大変だ。
出し入れ自由だし、投げて使うわけだし、長時間持ち続けることはないから心配は無用だろう。
「このブーメランを出すのが、わたしの能力。ただのブーメランじゃないよ」
言葉で事細かに説明するよりも、これは見てもらったほうが早いだろう。
「見てて」
ノノは明後日の方に向けてブーメランを投げた。
巨大なブーメランは唸りを上げながら回転して飛んでいく。
そして、ある程度まで飛んだところで動きを止めると、ノノの元へと戻ってくる。
ノノはそっと手を差し出す。
ブーメランはノノの手の中にすっぽりと収まった。
大きさと重さの割に衝撃というほどの衝撃はない。せいぜいオモチャのブーメランを手にとったくらいの感覚だ。
それなのに、ずしりと重みがあるのは不思議な感じだ。
自分の手を痛めてしまうとか、体のどこかにぶつかってしまうとか、ちょっぴり不安がなかったわけではないが、頭の中にあった情報の通り、ブーメランはノノ自身を傷つけることはないようだ。
「すごいでしょ。このブーメラン、わたしの手に綺麗に戻ってくる。もう一回やるよ」
宣言してまた投げる。
こんどはその場でブーメランが戻ってくるのを待っているのではなくて、横に数歩移動する。
ブーメランはごく当たり前のようにノノの元に向かってくる。
キャッチ!
成功だ。
「移動しても、わたしのところに来るんだよぉ! すごいでしょ! それに出し入れ自由!」
ブーメランを消してみせる。
そしてまた出す。
本当にパッパッと瞬間的に消えて出てくる。
便利なものだ。
「すごいでしょ」
ブーメランを見せびらかすようにしつつ自慢げに言って各自の反応を見る。
全体的に芳しくない。期待していたほどではない。
「おおーっ」と明白に関心してくれたのはネギシくんくらいか。
セトくんもへぇーというくらいには関心してくれている。
問題は女の子2人。
イチズちゃんは無表情だし、ヒョウコさんは眉をひそめている。
「あれ? なんかダメだった?」
ヒョウコさんに尋ねる。もしかしてご期待に添えなかった?
「いえ、ダメってことはないわ。悪くない。悪くないけど、決定力に欠ける。うん、でも、離れた相手を攻撃できるのは悪くない。うん、むしろいいかも」
ヒョウコさんは1人で納得している。
「うん、そうよね。長距離攻撃があるのは頼もしいわね」
頼もしいと言われた。やった!
「で、ヒョウコさんの能力は?」
質問する。特に裏とか考えがあって彼女に尋ねたわけではない。ノノとしては単に話の流れで聞いただけだ。
「アタシ?」
ヒョウコさんはきょとんとした。いきなり自分に能力のことをふられるとは思っていなかったのだろうか。
「アタシの能力は——」
言い淀むヒョウコさん。理由はわからないけど能力を先に話したくなかったのかな?
だけど、ノノ以外の3人もヒョウコさんに注目している。
完全にヒョウコさんが能力を話す番と言う雰囲気だ。
「アタシの能力は【火炎噴射】」
ヒョウコさんはどうせ話すことになるんだからと割り切ったようで、簡潔明瞭に告げた。
「火炎? 炎を出すの? いかにも超能力って感じ! なんて言うんだっけ? そういうの。パイ——なんとか」
「パイロキネシスですね」
セトくんが教えてくれた。物知りだ。伊達にメガネはかけていない。
「多分あなたがイメージしているようなカッコいいものじゃないわよ」
ヒョウコさんは言った。
「火炎放射でしょ。かっこよくないの?」
「放射じゃなくて、噴射。口から火を噴くのよ。まあ、実演した方が早いわよね」
あなたがやったみたいに、と付け加える。
ヒョウコさんは息を吸い込み、口をすぼめる。
ふーっと息を吹き出すように、炎が口から吹き出された。
なるほど、火炎放射ではなくて、噴射だ。
「怪獣みたーい!」
ノノがはしゃぐとヒョウコさんは苦笑いを浮かべた。
「とまあ、こんな風に吹いた息が火炎に変わるっていうか。まあ、今のは軽く息を拭いただけだけど。思い切り息を吸い込んで吐き出せば、凄まじい火力が出るようね」
「どれくらい」
「——人1人黒焦げにできるくらい」
「うわっ」
なるほど。先程ヒョウコさんがノノのブーメランに対して決定力に欠けると言っていた理由がわかった。自分の能力に比べて随分と攻撃力が低いと思ったのだろう。
「すごい! 一撃必殺ってやつじゃん!」
「そうね。だけど、弱点もある」
「弱点?」
「火炎が届く距離が短いのよ。頭の中の情報によれば、2メートルもないわ」
「つまり、相手にかなり接近しないと攻撃を当てられないわけですね」
セトくんが言った。
「威力は高い——一撃で勝負を決められるけれども、相手に接近しないといけない分、リスキーだと」
セトくんの言葉にヒョウコさんは頷く。
「ええ。だからその辺はモモセちゃんの能力でうまく補ってもらいたいところね」
高威力だが近距離しか攻撃できないヒョウコさんの火炎噴射と、低威力とまではいわないけれど、中程度の威力で遠距離攻撃できるノノのブーメラン。
確かに互いの弱点をカバーし合えるかもしれない。




