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第4話 話し合い

 残り5人になったらって。

 やっぱり、この場にいる人数を25人から5人まで減らしなさいって言っているよね。

 なんか大変なことになってきたぞ。

 死んでしまった時点でこれ以上なく大変なことになっているのだが、ここに来てノノも事態の深刻さに気づいた。

 ノノたちは争い合わなくちゃならない。

 とはいえ、どうしたものか?

 本当に争うの?

 みんなやるの?

 疑問が出てくる。

 争い合うならば、まずこの場にいる5人で戦うことになるのだろうか?

 うーん。おかっぱの子は無表情でわからないけれど、互いが互いを警戒しているような。出方を伺っているような。

 まあ、いいや。

 このまま黙っていても仕方がないか。

 この場で気がついてから最初にそうしたように、今度もノノがまず口を開く。

「どう思う?」

 ノノは真剣かつ深刻に言ったつもりなのに、なぜだかギャルっぽい子は呆れ顔になった。

「どう思うって——アナタはどう思っているの? 空から聞こえてきた声が言ってたことをどう解釈したの?」

 探るような調子で聞き返してくる。

「そりゃ、生き返りたいなら、戦えってことじゃない?」

 ノノは、自分の考えを素直に述べる。

 ギャルっぽい子は沈黙する。

 何か間違ったこと言ったかな? それともこの子には別の案があるのかな? 戦う以外で生き返るのを誰にするか決める方法を思いついたのかな?

「違うの?」

「いえ、アタシもそう考えた。それしかないって。そうならざるを得ないって」

「やっぱ、そうなの?」

 おずおずと聞いたのは、野球少年だ。

「そりゃあ——ちょっとアナタどこに行くの⁉︎」

 ギャル女子が急に大きな声を出した。

 ギャル女子が顔を向けた方を見ると、おかっぱの子が背中を向けていた。

「どこって——別に決めてない。ここにいても仕方がないし」

 おかっぱの子が口を開いた。感情がこもらないというか、抑揚に乏しいというか。喋るとますます人間じゃなくて、アンドロイドのような印象を受ける。

「仕方がないことないでしょ? 話し合うことがある」

「なに?」

 おかっぱの子が首を傾げる。

 ノノも内心首を傾げる。ノノ自身は心の内だけで首を傾げたつもりだったが、実際に首を傾げていた。

 話し合うって誰が生き返るかを? さっき、戦うしかないみたいに言っていたのに?

「アタシたち、協力し合えるんじゃないかっていうことよ」

「協力?」

 ノノは首を傾げる。今度は自分がそうしたことに自覚があった。

「チームを組むということですよね」

 メガネ男子が言った。

「なるほど」

 その言葉にノノは腕を組んで頷き、

「どういうこと?」

 と聞いた。

 ギャル子は口を開けて呆れてものも言えないというような顔をしているが、野球少年もよくわかっていない様子だ。ノノだけが察しが悪いのではない。

 おかっぱの子は——無表情で分かりにくいが、心なしかそわそわしているような?

「生き返られる人数が限られている以上、どうしたってその権利を奪い合う争いになる」

「うん。それは分かっている。それでなんでチームを組むって話になるの?」

「5人まで生き返られるんだから、自分以外の24人全員を敵に回すことなんてないってことよ。1人で戦う必要なんてないのよ。チームを組んでそのメンバーみんなで生き返りを目指せるの。生き返ることができるのが5人までだから、チームの上限人数も5人までにはなるでしょうけどね」

「あっ。そっか」

 納得。

 ノノはなんというか、しっちゃかめっちゃかな争いーー混戦、乱戦、大乱闘になる気がしていたのだけど。

 言われてれば確かに。ただ1人の生き返りを決めるんじゃないなら、協力しあえる余地がある。

 ギャル女子の言うように最大5人までなら。6人以上だと生還の権利の枠からあぶれる人が出るから。

 6人以上は無理でも人数は多い方が有利だ。

 だから、理想的には5人チームを作りたい。

 ノノはある符号に気づく。この場にいるのも5人だ。

「ここにいる5人でチームを作ればいいじゃん! わたしたちラッキー!」

 ギャル女子がため息をつく。

「アナタはたまたまアタシたちだけ5人固まっていると思うの?」

「ん? 違うの?」

「ほかにこの世界にいるはずの20人も5人ずつ固まってどこかにいるかもしれないということですね」

 メガネ男子が発言した。

「25人が5人ずつ、五組に分けられている、と」

 ギャル女子が頷く。

「その可能性は高いわ。公平性の観点からいえばね」

「ああ、なぁるほど」

 生き返ることができるのは5人だから、チームの上限人数は5人。

 生き返りの権利をかけて戦い合うのは25人。5の5倍。

 5人チームが五つ作れる。

 運良くノノたちだけが5人固まっていたのではなく、5人ずつ5グループに分けられて、この世界のどこかに配置されていたと考えた方が自然だ。チームを組みやすいように。

 ノノが抱いていた疑問が一つ氷解した。

 なぜ、25人を一箇所に集めておかなかったのか?

 チーム分けのためだ。5人ずつでチームを作らせるためだ。

 25人をバラバラに無作為にこの世界のあちこちに配置したら、運がいい人、たまたま近くに人がいた人、少しウロウロしたら誰かに出会えた人たち同士が協力関係を結んで、有利に戦いを運べてしまう。

 運が悪い人は1人でいるところを5人組に襲われることにもなりかねない。

 そういったことを防ぎ、ギャル女子の言うように公平性を保つのに、5人ずつ五箇所に分けておく。

 25人全員が、5人組を作れるようになり、運による有利不利は無くなるわけだ。

 たまたま5人いてラッキーだったわけではなかったが、みんな条件は同じなのだから不満を言うことはない。

「チームを組む? ここにいる5人で?」

 野球少年が確認する。

「強制ではないはずですが」

 メガネくんが言った。

「空からの声は誰が生き返るかは僕たちで自由に決めていいと言っていましたし。この人が言うように、ここに5人揃っているのは、あくまで5人組を作るチャンスを平等にするための処置でしょう。その場にいる人たちでチームを作るかどうかは、僕らの判断、裁量に任されているはずです」

「そう言っても、チーム組まなくちゃ不利じゃん?」

「それはそうですが——」

 ノノの言葉に対して、さっきまで滑舌良く話していたメガネくんがにわかに口ごもった。

「おれたちーー初対面みたいなもんだよな?」

 野球少年が恐る恐るという風に口を挟んだ。初対面みたいなものというのは生前に一応、少しだけ顔を見た覚えがあるからだろう。だから厳密にいうと、この場所で初めて会ったわけじゃない。

 でもまあ、名前も聞いちゃいないんだし。初対面と言って差し支えないだろう。

「あー」

 ノノは納得する。そりゃまあ、文字通り生死がかかる戦いで、名前も知らない人たちとチームを結成するのはためらいもするよね。

「そうだよねぇ。わたしたちお互いの名前も知らないんだった。

 わたし、モモセノノ」

 ノノは真っ先に名乗った。

 こういう時、率先して話せるのはノノの長所である。

 ギャル女子はなんだが呆気に取られた様子に見えた。

「……そうね。自己紹介は必要よね」

 気を取り直したようにギャル女子は言った。

「あ」

 誰かが驚きの声を上げた。

 声のした方に注目が集まる。

 メガネくんだった。

 空を見上げている。

「見てください」

 言われるがままにみんなが空を見上げた。

「あ」

 ノノも驚きの声を漏らした。

 空に浮かぶ残り人数を示すカウントが、24に減っていた。

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