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第3話 異能力

 空からの声曰く、本来事故で亡くなるのは25人の中学生のうち20人のはずだった。

 だけど、25人全員が死んでしまった。

 なので余計に死んだ5人分、生き返りの権利が用意される。


 ちょっと呆れてしまった。

 いい加減だなぁ。

 25人のうち5人は生き残るはずだったのに、25人とも死んでしまうだなんて。

 察するに、空からの声の正体は神様か、その使いの天使か何かなのだと思うけど、神様や天使がそんなに適当でいいの?

 20人誰が死ぬかまでは決まってなかったっぽい?

 運命って、そんなアバウトなものなの?

 誰が死ぬのかさえも確定しておかないで、ランダムで死ぬ人を決めちゃう感じだから、25人みんな死んじゃった、なんてことになっちゃったんじゃないの?

 ああ、でも。考えようによってはいいのかな?

 20人誰が死ぬのか、5人誰が生き残るのか決まっていたなら。25人のうち誰か5人じゃなくて、そもそも死ぬはずじゃなかった5人を無条件に生き返らせればいい話になる。

 死んでしまう20人に含まれていたら、ノノにチャンスはなかったことになる。

 誰が死に、誰が生きるか、生死の運命が不確定だったから、ノノを含めた25人全員にチャンスが与えられることになったのだ。


 おや? ノノはあることに思い至った。

 そういえば当たり前だけど、事故に遭ったバスに乗っていたのはノノたち中学生25人だけではない。

 運転手がいる。

 運転手さんはどうなったの?

 空からの声は、中学三年生25人云々カンヌンと言っていた。

 運転手さんは生死の運命に含まれていない。

 運転手さんは無事なのか。それとも中学生25人のうち20人の死とは別枠で死ぬ運命にあったのか。

 運転手さんだけ、明確に生きるか死ぬかの運命どっちかが定められていたのだろうか。

 運転手さんが辿った運命に固執しても仕方ないか。空からの声が教えてくれでもしない限りわからないんだから。

 運転手の不注意が事故の原因かもしれないと考えると少し気にかかる。

 だからといって今現在、念頭に置いておくようなことでもない。

 すっぱり忘れちゃって構わないだろう。

 というわけで、ノノの興味は空からの声の説明に戻る。

 

 5人誰が生き返るかは自分たちで自由に決めていいそうだ。

 もしかしたら生き返るために何か大変なことでもやらされるんじゃないかと思っていたので、そうじゃなくて一安心した。

 しかし、自由にと言われると、かえって困ってしまう。

 みんな生き返りたいだろうし、喧嘩になっちゃうんじゃないの?

 譲り合いの精神なんて流石に発揮できそうもない。

 やっぱり、くじ引きかじゃんけんで決めるしかないんじゃないかなぁ。

 それにしたって、ほかの20人がこの廃墟の街のどこにいるのかわからないんじゃあ。

 まず、みんな集合しないといけないんじゃないの? それはちょっと面倒だ。

 この廃墟の街、どれくらいの広さなんだろう。

 そんなことを気にしていたら、空からの声の話の雲行きが怪しくなっていた。

 雲行きがあやしいというよりは、煙に巻かれるような話になっていた。

 ノノたち25人に超能力を与えたと言うのだ。

 1人1人別々の能力。

 1人1人異なるから、異能力。

 にわかに漫画やアニメのような話になってきた。

 それを言うなら、一度死んで死後の世界っぽいところに来て、生き返りのチャンスがもらえるという話自体が、漫画やアニメのようか。

 しかし、なんで超能力?

 すでに能力に関する情報、知識はノノたちの頭の中、記憶に入れてあるとか。自分の能力のことを考えたら、それだけで、詳細が脳裏に浮かぶとか。

 言われたようにする。

 わたしの能力は何かなっと。

 こんな状況なのに、ノノは少しワクワクしていた。

 かっこいいのがいいな。なんて期待していた。

 

【ブーメラン】

 本当に能力のことが頭に浮かんだ。

 ブーメランを出すのがノノに与えられた能力だった。

 くの字型だけど、カタカナのノの字にも見えないことはない形状。

 大きい。脳裏に浮かぶ映像では80センチくらいありそう。

 金属のようだ。

 重くない?

 と思ったら、脳内情報でノノが問題なく投げられる重量だというのが漠然と知れた。

 ただでかいだけじゃない。特殊な性質を持っていた。

 ブーメランを投げた時の位置から移動しても、引き寄せられるようにノノの元に戻ってくるとのこと。手元にすっぽり収まるように。原則的にキャッチミスでノノ自身が傷つくこともない。

 加えて、普通ブーメランは標的に当たれば戻ってこないものだが、ノノのブーメランは戻ってくるようだ。

 便利といえば便利だ。

 目標物に当たった後、回収する手間が省ける。

 狩猟用としてのブーメランの欠点を補っていると言える。

 だからといって、何?

 面白そうだけど、何に使えばいいの?

 何にというのは、何のためにと何に対して、使用目的と使用対象、両方の意味でだ。

 この世界に、ブーメランを投げて攻撃する対象がいるの?

 この世界、ノノたち以外に何かいるの?

 少なくともこの辺りにはなんの気配もない。

 ブーメランを使わなくちゃいけない対象がもしかしたらいるのかもと、辺りを見回して気づいた。何か空気が重い。

 みんなどうしたの?

 呑気なノノでもただならぬ雰囲気を感じ取る。

 

 空からの声の主の説明が続く。

 生き返りにあたっての注意事項というか、生き返ったら死ぬ時に負った傷は全て治してくれるとか。生き返った後の安全は保障するとか。生き返ったらここでのことは忘れてしまうとか。

 ここで誰が生き返るのかを決める過程での暴力行為、破壊行為が罪にはならないとか。

 ん?

 そのあたりでようやくノノにも察するものがあった。

 あれあれ?

 暴力って——

 もしかして、わたしたたち戦うの?

 暴力で誰が生き返るのか決めなくちゃいけないってこと?

 閃いて見れば、それも至極当たり前のことに思えた。

 みんな生き返りたい。

 話し合いで決められるわけもない。

 くじやじゃんけんで決めようと提案しても、そんな運任せに賛成する人はまずいない。

 そうなると、あとは争うしかなくなる。

 争い合って、蹴落とし合って、誰が生き返るかを決める。

 最初は話し合いで決めようとしても結局そうなるのではないか。

 遅かれ早かれ暴力に訴える者が出てくるのではないか。

 空からの声はそれを見越して、争いを促進させようとしている? 推奨、奨励している?

 ノノに与えられた能力がブーメラン、つまり武器なのがノノの考えを裏付けている。

 空からの声の話が続き、タイムリミットがあることが明かされた。

 タイムリミットまでに5人誰が生き返るのが決まっていなかったら、ゲームオーバー。生き返りの権利は剥奪される。5人どころか1人たりとも生き返られない。

 時間と残り人数は空にカウントが表示される。

 残り人数って——

 完全にこの場にいる人数が減少していく前提の言葉だ。

 空からの声が、ノノたちに話し合いやくじで決めることを求めているなら、そんな言葉は使わないだろうし、表示も必要ない。

 平和的に生き返る人を決めるなら、この場にいる人数が減ることはない。

 減るとしたら、非平和的な手段で決める場合だ。

 

 川に落ちたら生き返りの権利を得るチャンスは失われるという、よくわからない注意があって——

 残り5人になったらお知らせします。

 生き返りたい人はすぐに生き返らせて差し上げますと言って、空からの声は途絶えた。

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