第16話 立て直し
「作戦とか色々と立て直さないと」
ヒョウコさんが改めて場を仕切り出した。
「キーマンのネギシくんがいなくなっちゃったもんね」
「ええ。せっかくの強力な能力だったのに。ヨシユキちゃんたら何やっているんだか」
いなくなったネギシくんに責任をなすりつけるようなことを言っている。
「いえ、ヨシユキちゃんを責めるよりは、あのノッポちゃんの方を評価するべきね。相手が悪かった。たとえ攻撃を跳ね返す能力を持っていても、あの反射神経と運動能力がなければ、爆弾の前に出るのが間に合わなかったはず」
「すごい動きだったもんね。あれが普通くらいの運動能力の人だったら、ネギシくんもやられず、3人とも倒せたかもしれないのにね」
「ええ。だからあんまりヨシユキちゃんをみんなで責めるのは可愛そうよね」
ネギシくんを責めるようなことを言っているのはヒョウコさんだけだと思うが、ノノはスルーした。
「ヨシユキちゃんを失ったのは大きな損失だけど、代わりに貴重な情報を入手できたわ」
「あの攻撃を反射する壁ですね」
セトくんが言った。
「ええ。もしあのノッポちゃんに対してアタシの火炎を吹きかけることになっていたらと思うと、ゾッとするわ」
その時はヒョウコさんが丸焦げだ。
「ヨシユキちゃんの犠牲のおかげで今後アタシがあの壁の反射でやられる事態は避けられるわ。ありがとうヨシユキちゃん。アナタの犠牲は無駄にしない。残ったアタシたちだけでも生き返るからね」
何かいい話風にしようとしている。
「といっても、あの半透明の壁の細かい仕様、跳ね返せる対象はわからないんだけど」
「火炎は跳ね返されないかもしれないということですか?」
「物質的なものしか跳ね返せない可能性はゼロじゃないけど。でも、根拠もなくそう想定するのは危険すぎる。
防壁にはなるにしても、爆弾や石のような物体しか跳ね返させないってのは流石に効果対象が限定的すぎると思うし。
相手に向かって飛んでいくような攻撃は跳ね返せるものと想定して。
ホウジョウちゃんの大太刀はどうなるのかしら? 弾かれるような形になるのかしら?」
「わたしのブーメランはやっぱり跳ね返されるのかな?」
ノノは口を出す。自分にも関わることだから黙ってもいられない。
「アナタのはブーメランだから、もともと自分に戻ってくるじゃない」
「それもそっか」
ブーメランの特殊仕様を考えると、跳ね返されても怖くないのかもしれない。
「もともとブーメランで機能が機能だから、あの壁の跳ね返す効果は意味をなさないかも。それにあの壁には弱点もあるし」
「弱点?」
「ええ。よく思い出してみると、ノッポちゃんは手を伸ばしてすぐに壁を張らなかった」
「ためが必要ってこと?」
ノノのブーメランのようにパッと出せず、出るまで少し時間がかかるということか?
「いえ。おそらく違う。出すのにタイムラグがあるんじゃなくて、出せる時間が短いんじゃないかしら? 爆弾が当たる直前に壁が出て、当たってすぐに消えていたし。一秒程度しか出せない。
数秒間出せるならば、手を伸ばしてすぐに壁を出して待てばいい。それをしなかったのは持続時間が短いから。タイミングを計って出さないと、飛んできたものがぶつかる前に壁が消えてしまう恐れがあるから」
「へぇ、なるほどね。ヒョウコさん、あの状況でよく冷静に観察できたね」
ノノは感心する。
「別にアタシもあの状況で冷静だったわけじゃないけど。落ち着いて何が起きたのかを思い出して分析してるの。
あとは手を伸ばした方、一方向にしか出せない。なら、三方向は無防備」
「挟み撃ちの形ならなんとかできそうですね」
セトくんが意見を出す。
「ええ。けど気になるのはあの壁の跳ね返し効果。正面側にしかないのかどうかってことね」
「どういうこと?」
ノノは聞いた。
「壁の反対側にも跳ね返し効果があるとしたら。ノッポちゃんが前の方に向けて壁を出していて、アタシが背後から火炎を浴びせようとしたら、アタシに向けて火炎が跳ね返ってくる恐れがあるのよ。その場合、相打ちになるけど」
「ああ、なるほどぉ」
「距離次第で火炎は壁に届かず、跳ね返されないってことはあるけど。
微妙ね。細かい効果範囲の調整が効く能力じゃないから。
かなり弱目の火力でいけば、跳ね返される心配は少なくなるけど。その場合、一撃で倒しきれず反撃を受ける恐れが出てくる。
やっぱりアタシがあのノッポちゃんを倒そうとするのはリスクが大きすぎる。
ブーメランなら、うまいことやれば」
「わたし?」
「わざと外してから、モモセちゃんが移動すればブーメランの軌道を変えられる。それを利用して、ノッポちゃんに当たるように誘導するのよ」
「なるほど。ちょっと難しそうだけど」
試してみる価値はあるかな。
「あとはエイチちゃんが言ったように挟み撃ちね。モモセちゃんが正面。ホウジョウちゃんが回り込んで背後からって言う風に。ブーメランがホウジョウちゃんに当たらないか心配だけど。うまいこと連携を取らないと」
「でも、そうするとほかに3人敵が残ることになりますよ? 不意をつくにしろ、カサイさん1人でどうするんですか」
セトくんの眉が下がる。
「僕を戦力に数えてもらっても困ります」
「うん。エイチちゃんの能力は重宝するからね。無理に無理させるつもりはないわ」
セトくん自身が無理をする気ならば、戦闘時に何かしてもらうのもやぶさかではないということかな?
「当面の間は、あの4人組は放置よ。もし見つけても離れる。少なくとも4人組のうちは」
「ほかの人たちとの戦いでリタイア者が出るのを待つわけですか」
「それもあるけど。都合よくそうなってくれるかどうか。ほかの連中と対戦しても、メンバーが欠けることなく勝ち残ることだってあるわけだし。だから、まずアタシたちがやるべきことは体制を立て直すこと」
「体制を立て直す?」
ノノはヒョウコさんの言葉を繰り返した。
「チームが4人体制になったのを、5人体制に戻すってことよ」
「え、そんなことができるの?」
ネギシくんはもういなくなっちゃったのに。
「出来るのよ」
ヒョウコさんはきっぱりと言った。
「1人で行動している人を仲間に加えればいいのよ」
「え? いいの? それって?」
「いいのよ。そもそもアタシたちがチームを組んだのは、スタート地点が同じだったからというのが理由。組んだ方が勝ち残れる確率が上がるから。それがベストな選択だから。
だけど、チームを組むことは強制ではないし、1人で行動するのも自由。組むとしても、誰と組むかは自由。
そして一度組んだチームのメンバーとしか行動しちゃいけないなんてこともない。
メンバーに欠員が出たら補充したっていい。ちょうどいい人が見つかればだけどね」
「そっかー。そんなこと考えてもみなかったなぁ」
「まあ、アタシも黙っていたというか。こんな風にチームに空きが出るまでは言わない方がいいかと思って。最初に組んだ5人で勝ち残りを目指すのを目標にした方がいいっていうか。チームからリタイア者が出ても、補充すればいいんだっていう考え方をして欲しくなかったというか。まあ、団結力? を高めるために」
チームの編成が不変であることを言わなかった理由をくどくどと述べるヒョウコさんにノノは感心していた。
「チームのために色々考えてくれたいたんだ」
「ええ。まあ、そういうことね」
ちょっとホッとした様子のヒョウコさん。
ノノは思いつきを口にする。思いつきというよりは気づいたことだ。
「あれ? ってことはほかの人たちも同じことができるんじゃないの? さっきの4人の人たちが5人目を加えることも」
その言葉にヒョウコさんがどきりとした様子を見せたのは気のせいか。
「そうね。だからたとえ5人のままで勝ち残れていたとして、残り人数がある程度減っていって気が緩むようなことがあったら言おうとは思ってたの。一度人数が減った、アタシたちが減らしたチームがあっても、また増えている可能性があるってことはね」
「ふうん」
ノノはつくづく感心する。
「じゃあ、急いだ方がいいんじゃない? もし1人でいる人がいても、さっきの人たちのチームに入っちゃうかもよ」
ヒョウコさんはホッとした様子だ。
「そうね。それは言えているわね」
そういうわけで、これ以上は移動しながら話すこととなった。
セトくんの探知があるとはいえ、一箇所に長々止まっているのもよくないだろうし。




