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25分の1の——ノノ  作者: シンサク


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第15話 さよならネギシくん

 さて。

 ようやく、とうとう、ついに、ノノにも出番が回ってきそうだ。

 イチズちゃんにも。

 撤退とならない限りは、ブーメランを投げるのは確実と言っていい。

 標的が誰になるのかは、蓋を開けて見るまでわからないが。

 女の子相手に投げるのはちょっとだけ気が引けるので、できたら男の子のどっちかになってくれた方がいいかな。

 特に自分よりもだいぶ背が低い女の子の方にデカくて重くて硬いブーメランを投げるというのはどうにも。

 まあ、やらなくちゃいけないならやるけど。背の低い女の子相手でも特大ブーメランをぶん投げられる。

 そこは今更しのごの言わない。割り切っている。

 戦わないなら、戦闘に加わらないなら、チームに加わる資格がないし。非攻撃能力持ちのセトくんは別として。

 労せず、何もせず、危険を冒さず、生き返りの権利だけを手に入れようなんて虫のいいことは考えていない。

 いやまあ、ネギシくんやヒョウコさんが頑張ってくれたり、そのほかの人たちが戦って潰し合ってくれたりした結果、特に何もせずに残り5人まで残れたら、それはそれでいいけど。

 戦おうという気持ちはあるけど、活躍の機会が訪れないなら、それはそれで一向に構わない。

 最終的に何もしないままで勝ち残りを決めても、それを気に病むような性格ではない。

 だが、今、出番待ちが来た。活躍の機会が訪れた。

 チームに貢献できるなら、やる。

 ネギシくんのようにビクビクオドオドしてブーメランを投げたら狙いを外しかねない。

 やると決めたんだからやる。

 たとえ対象が女の子になっても思い切って投げる。思い切り投げる。

 でもまあ、どうせならノノよりずっと背が高い男の子か、六本腕で見た目が化け物じみた男の子の方がより思い切りよく投げられるので、そうなってほしいというか。

 リスクとか色々考慮すると、ネギシくんが3人まとめて吹っ飛ばしてくれるのが一番ありがたい。

 その場合、投げるのは人間離れした見た目の腕六本の男の子になるし。

 反撃の心配も低いし。

 仲間が3人ともやられたら、腕六本くんが逃げ出す可能性も低くないし。

 逃げる背中に向けて、ブーメランを投げつけるのは少々心が痛むかもしれないが。

 まあ、逃す手はないだろう。

 最初の襲撃時、相手が逃げ出した時の打ち合わせをしてなかったのは、ヒョウコさんの失点かもしれない。

 その辺を詰めておけば、1人くらいノノのブーメランで、その場で倒せたかもしれないのだから。

 まあ、たとえ1人倒せたとしても、その後の展開はそう変わらなかったかもしれない。あのチームの5人中4人が脱落しているかもしれないとなると。

 まあ、結局のところ、ヒョウコさんもノノも爆弾の威力と、ネギシくんのピッチングに期待しすぎていたのだろう。

 大暴投で1人たりとも爆発に巻き込まめない可能性をつゆとも考えていなかった。

 うん。ネギシくんが悪いな。

 あれこれ自分も考慮が足りなかったとは思いつつも、結局はネギシくんの責任が大きいとノノは結論づけた。

 さて、今度こそ、ネギシくんはやってくれるのだろうか?

 ヒョウコさんがプレッシャーをかけまくったことが、いい結果を導くのかどうなのか。

 本人の発言から考えると、ネギシくんが暴投してしまったのは、超強力な爆弾を人に向かって投げることに躊躇とか葛藤があったからだ。

 でも、今回また暴投してしまったら、ノノたちはおろか自分自身さえも危険に晒されることになると指摘されたのだ。

 自分の身を守るためにも、暴投はできない。

 正確に爆弾を投げることが、自分の身を守ることにつながる。

 だから、ためらってはいられない。

 思い切ってやるしかないのだ。

 いけ! やれ! 頑張るんだ! ネギシくん!! わたしたちの命運はきみの制球力にかかっているんだ!

 相手チームに気づかれるといけないから声には出さなかったが、ノノは心の中でエールを送った。

 ノノたちは建物の影に隠れて、4人チームが来るのを待つ。

 ノノたちは念のため、ネギシくんから距離を取っている。

 うん。あんなでっかい爆発を起こすんだもの。もし、ネギシくんが自分の足元に落とすなんてヘマをした時、近くにいればノノたちまで吹っ飛ばされる。

 ブーメランは投げても持ち主本人の手に綺麗に収まるように戻ってくるので、ノノ自身を傷つけることはまずない。けど爆弾の爆発は持ち主本人でも関係なく吹っ飛ばしてしまうだろう。ネギシくんの頭の中の情報に、自分は爆風を浴びても平気なんてものはないらしいし。

 ネギシくんだって自爆なんてしたくないだろうから、流石に足元に落とすなんてどうしようもないドジをしたりはしないとは思う。ノノたちが十分な距離を取るのは念のためだ。

……正直ノノはネギシくんなら手が滑って足元に爆弾をぼとりと落とし、自爆するくらいやりかねないと疑っているが。うん、ノノ以外もそうだろう。はっきりと口にしないけど。念には念をみたいな風に言っているけど。

 頑張れ! ネギシくん! ここで好投を見せて、みんなの信頼を勝ち取るんだ! 汚名を挽回するんだ! 違った。汚名を返上、名誉を挽回だ。もともとネギシくんにも名誉なんて別にないけど。だから、汚名返上だけでいいんだけど。

 頑張れ!! ここで大活躍すれば、チーム内のエースとしての名誉を得られるぞ!!

 声には出さず応援を続けるノノ。

 まず先行する腕六本くんをやり過ごす。

 少し離れている3人が通りかかったタイミングで、ネギシくんは飛び出した。

 そして、手榴弾を投げた!

 お!

 いいフォーム!

 野球に詳しくないノノでもわかる。

 前回の腰の入っていないフォームとは違う。シュッとしている。

 これはいけるんじゃないのか!

 と悠長に考えてはいられなかつた。

 ネギシくんが飛びだすや否や、背の高い男の子が動き出していたのだ。

 ネギシくんと女の子2人の間に入るように。女の子たちを庇うように。

 その動きはあまりにも機敏だった。

 背が高いし、バスケットやってそうなんて偏見で考えていたノノだが、その反射神経、運動神経からすれば、当たっているのかもしれない。

 背の高い男の子は右手を飛んでくる爆弾に向けて伸ばした。手を開いて。

 何のために?

 まさか掴む気? それとも叩き落とすつもり? 飛んでくる物体が爆弾だとはわかっていないのか。

 爆弾が背の高い男の子に迫る。

 背の高い男の子の右手のひらの前に突然、半透明の壁が出現した。その大きさは、縦が男の子の自身の身長よもり少し高いくらい、横が肩幅よりも少しあるくらい。つまりは、背の高い男の子自身をすっぽりとカバーできるサイズ。

 考えなしで飛び出したわけじゃなくて、あれで飛んでくる物を防げると判断しての行動だったのか。

 なるほど。そりゃ攻撃以外のサポートに使えるような能力があるのなら、壁というか盾として使える防御の能力があって何の不思議もない。

 せっかくの恵まれた肉体と運動神経の持ち主なのに、戦闘向きの攻撃能力じゃないのはもったいない気もするが。

 いや、奇襲に対し、とっさに飛び出して仲間を庇えたことを考えれば、優れた運動能力を活かせていると言えるか。

 あの透明の壁の強度はいかほどなのか。超強力爆弾なら破壊して、壁の後ろの3人にまで爆風を浴びせかけられるのだろうか。それとも完全に塞がれてまうのか。

 超攻撃力の高い爆弾を出す能力があるのだから、超防御力の高い壁を出す能力があっておかしくない。

 どうなる? どうなる!

 などと、わずかな間にノノは筋道立てて考えていたわけではない。

 実際は直感的に、頭に次々と言葉が浮かんでいた。

 疾い?

 手?

 壁?

 防御?

 意外?

 でもない?

 失敗?

 こんな具合に。

 爆弾が半透明の壁にぶつかり甲高い音を立てた。

 そして大爆発が起きた。


「何が起こったの?」

 息を整えながらノノは聞いた。

 爆弾が大爆発を巻き起こしたあと、ノノたちはヒョウコさんの指示であの場から急いで逃げ出したのだ。

「……ヨシユキちゃんの爆弾が跳ね返されたのよ」

 ヒョウコさんが悔しげかつ不機嫌そうな顔で、ぶっきらぼうに言った。

「あのノッポちゃんの能力ね。攻撃を相手に跳ね返す壁。それで爆弾を跳ね返されちゃって、ヨシユキちゃんは自分の能力の爆発に飲み込まれちゃったわけね」

「ネギシくん——」

 ノノは空を見上げる。

 空のカウントは当然のように19になっていた。

 爆発の後、逃げ出す前にイチズちゃんも「19」と呟いていたし、立ち込める煙の中にネギシくんの影がなかったのは確認できていた。

 木っ端微塵に吹っ飛んだか。そうでなくてもすぐに光となって消えてしまったのだろう。

「惜しかったね」

 しみじみと言う。

 プレッシャーをはねのけて好投を見せたのに。あれで完投、ゲームセットになるとは。

「もう、なんなのよ! 攻撃を跳ね返す能力って!」

 ヒョウコさんが腹立たしげに声を荒げた。

「そんなのあり!?」

「ありなんでしょうね」

 セトくんがヒョウコさんを諌めるように言った。

「ネギシくんの爆弾だって、向こうにとってはそんなのあり? って言いたくなる威力でしょうし」

「考えてみたら、あれほどの威力の武器があるのに、ほかのチームに対処できるような能力が無いってのもおかしな話だわ」

 ヒョウコさんが言った。

「攻撃性能で爆弾クラスのものがある可能性にばかり気を取られていたわ。だから、先制攻撃で相手を壊滅状態に追い込むのが得策だと思っていたのに」

「やられる前にやれってことだね」

 ノノは言った。ヒョウコさんの戦術の基本方針は一貫してそれだった。だけどその方針も見直さないといけないのかもしれない。

「ええ」

 ヒョウコさんは頷いた。

「だからといって、攻撃を跳ね返す能力のことを想定しないなんて。アタシとしたことが——」

 ブツブツ言うヒョウコさん。

 ヒョウコさんは頭は回るけど、生き返りをかけた戦いだの能力だのという、非日常的で非現実的な状況に対応しきれるわけじゃ無いようだ。それもやむを得ない。

「ああ、もう別にアタシだけが思いつかなかったわけじゃないんだから!!

 ヨシユキちゃん自身含めてみんなの責任よ!」

 ヒョウコさんは連帯責任だと主張し出した。

「そのせいで貴重な戦力を失っちゃったわ!! 超強力な武器が無くなっちゃった!!」

 ネギシくんよりも、爆弾の方に重きを置く様な発言だけど、それもやむなし。

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