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第五章 その自由研究、自由すぎるよ白石くん!

こんにちは。「中2の夏に、白石くんが神様になった」を読んでいただきありがとうございます。


舞台は、2026年の大阪・羽曳野。自由研究に熱中する中学生たちが、応神天皇陵の石室である〈存在〉と出会い、世界の成り立ちを垣間見ていきます。


もしよければ、青春の謎と発見の旅を一緒に楽しんでください。

§5 その自由研究、自由すぎるよ白石くん!



(1)


 9月13日、長かった家族会議の次の日は土曜日だった。

 ゆうべは、寝るのが遅かったから、起きたのは8時半だった。リビングからママたちの気配がするし、コーヒーの香りがしてる。

 パジャマを着替えてたら、机の上のパソコンが立ち上がりっぱなしだったんで、スリープさせようと画面を見ると、メールの着信が! 


「うっ……」


 わたしの頭に、ある予感があって、恐る恐る開封してみると……やっぱり!


==================================

差出人:

件 名:

本 文:あなたは最深階層3へのアクセスが可能です。

     ftp://eganomofushioka_3.va

     PN:moifsdiu

==================================


(うそ、やっぱりあのメールだ)


 まだ続きがあったのかぁ……。

 もう知りたいことは全部知ったと思ってた。イメージしてた全体像は答え合わせしたつもりだったんだけどなぁ。

 どうせまたこのパソコンからは、アクセスできないだろうから、リンクも押さないまま、いろいろと考えこんだ。


 皇学館大学へ行く日は25日だから、あと2週間もあるし。そんなに我慢できるかな。


「ゆーいー」


 リビングでパパが呼ぶ声がする。うーんどうしたものか……。



(2)


 ママは土曜日も出勤で、もう出かけちゃったので、朝食を食べたあとは、リビングで、パパとおしゃべりした。

 応神天皇陵は、観光地でもあるので、管区事務所には祝休日も、誰か人がいなければならない。今月はママが土曜出勤のシフトらしい。


「結はどこかへ出かけるのかい?」


「ううん、どこも行かない」


「パパはね、前に努めていたところに行かなくちゃならないんだ、京都だよ、遠いね」


「電車?」


「ああ、ママが車で出かけちゃったからね」


「そっか、じゃ一人で留守番かぁ」


「おやおや、週末にデートする、ボーイフレンドもいないのかい、結は。 あの白石くんはどうだい?」


「し、白石くんは違うって。そんなんじゃないよ」


「へへぇ、そうかい」


〈Rrrrrrrrr Rrrrrrrrr〉


 スマホが鳴った。LINEだ。

 テーブルに置いたスマホを手に取ると、


(白石くんからだ!)


「おや? デートのお誘いかな」


「違うって、白石くんはそんなんじゃないって!」


「ほら、白石くんだ、ははは」


「もう! メール見るから部屋行くね」


 まだ笑ってるパパにそう言って、自分のお部屋に駆け込んでバタンとドアを閉めた。


——@Haruto

——結ちゃん、自由研究の展示会行ってみようぜ!


 もう! 白石くんったら能天気が過ぎる。

 君の自由研究のせいで、こっちは大変だったんだからね。


 あっ!

 でもひらめいた。


——@Yui

——ねぇ、白石くんパソコン持ってる?


 そうよ、そうよ、白石くんのパソコンで、あのサイトにアクセスできるかもしれないじゃん。


〈Rrrrrrrrr Rrrrrrrrr〉


 すごい速さで返信が来た。


——@Haruto

——あるよ、パソコン


 やった、パソコンあった!


——@Yui

——今日、白石くんのうちに行ってもいい?


……?

 今度は全然返信来ない。


 5分経った。


〈Rrrrrrrrr Rrrrrrrrr〉


——それって、どういうこと結ちゃん? 展示会は?


 うーんまどろっこしい!


——@Yui

——行く! 展示会も行くから、そのあと白石くんのうちに連れてって


 即レス来た。


——@Haryto

——わかった、じゃ住民文化センターの入口に11時ってことでいい?


 よし、うまくいった。


——OK 支度する。じゃ。


(ん? 白石くん、また……結ちゃんって……?)



(3)


 住民文化センターは、いつも行く図書館に並んで建っている。入口に植えられた木の影に立ってると、白石くんは走ってきた。暑いのになんで?


「結ちゃん、ごめん、遅くなって、待った?」


 息をはずませて白石くんが笑ってきた。息苦し気でひきつった笑顔。わたしは肉声で直接聞く「結ちゃん」の破壊力で、少しドキンとした。

 冷房の効いた館内に入り、わたしたちふたりは、お互いに落ち着きを取り戻して、ゆっくりと歩きながら展示を見ていったんだけど、並んで歩く距離感がなかなかつかめないなぁ。

 でも、白石くんの展示に金のリボンが付いてて[優秀賞]と貼ってあるのを見て、思わず白石くんの肩に手をかけて、ブンブン揺すってしまった。


「ちょっと、白石くん、優秀賞だって、どういうこと?」


「どういうって、よくできてたって事なんじゃないかな」


「違うって、こんな〈世界の秘密〉みたいな事、大人が認めたって、一体……」


「もっと軽いノリなんじゃないかな。前方後円墳をテーマにしたってことで、地元的に良い評価をしてくれたんじゃない? よかったよ、2学期の通信簿に影響あるかな、はは」


 白石くんは、いつも呑気なことばかり言う。まぁ、気持ちは和むけど、パパにちょっと似てるとこあるかも。

 他の展示も一通り見て回ったけど、白石くんみたいなぶっとんだ内容のものはなくて、「夏の水生生物の観察」とか「野鳥の生態」とか、まじめなものが多い。そりゃそうだよね、中2の自由研究だからね、こうなるよね。


「もう、全部見たし、お腹も減ったから行こっか」


「うん。ねえ、コンビニでなにか買って、白石くんのうちで食べよ? 近い? 白石くんち」


「えっ、……でもお昼ごはん用意してあるって、お母さんが言ってたから……」


「えっ! いいよ、お母さんに悪いよ手間かけちゃって」


「……いや、だから、…今日家誰もいないから」


(……ん?)


「そ、そっか、じゃあ、こ、このまま白石くんち、い、行こっか」



 白石くんのお家には、文化センターから、歩いて10分くらいで着いた。素敵な一戸建だ。玄関のドアを鍵で開けた白石くんは


「さ、どうぞ」


「……お、おじゃま、し、しまーす」


 冷房をつけっぱなしで出てきたみたいで、家の中は快適だった。白石くんの言ってた通り、家族はみんな出かけているようで、二人っきりだ。

 案内されたダイニングルームのテーブルには、おにぎりとお煮染めが置かれていて、ラップがふわっとかけてある。


「おにぎりかぁ、せっかく結ちゃんが初めてうちに来てくれたのに……。僕が結ちゃんの家に行ったときは、お父さんがおいしいクロックムッシュ作ってくれたのに……」


「えっ、い、いいよ、わたしおにぎり大好き」


 それは嘘じゃないんだけど、女の子が男の子のうち、初めて入ったときに言うセリフとしてはどうなんだろう。


「まぁ、いいや、レンチンするね」


「お、おそれ、い、いります」


「はは、変な返事」


 なんか、わたしすごい緊張してる。パパに言ったように、白石くんとは全然そんなんじゃないんだけど、なんかわたし、すごい緊張してる。


「そっちで食べよっか、パソコン使いたいんだよね、今持ってくるよ」


 と白石くんがソファの方を指して、


「座ってて」


 自分の部屋らしき方へ行っちゃった。


(……ふぅー。なんか変だ、なんか変だ、なんか変だ)


 適当な服で飛び出してきちゃったけど、スカートにすればよかった。今、わたしはショートパンツとTシャツで、まるで体操服みたいだよ……。


チーン!


 レンジの音がして、わたしはビクッと背筋を伸ばした。

 白石くんはなんと、ノートパソコンの上に、レンチンしたお煮染と、おにぎりをのせてきた。テーブルに置くと、向かいのソファにふわっと座った。


「うーん、まずは食べよっか、どうぞ」


「は、はい……い、いただき、ま…す……」


 お腹は、たしかにペコペコで、


(もうやけくそ)


 とおにぎりにパクついた


「ごめんね、こんなお昼ご飯で」


「そんなことないよ、わたし、おかかのおにぎり大好き」


「へへえ、よかった」


 白石くんは、まるでパパみたいな相づちでニコッとしたので、わたしはまたドキッとした。


(ダメダメ、使命を思い出せ! わたし)


「白石くんのパソコンって、ペアレンタルコントロールの制限かかってる?」


「ん? なにそれ」


 おにぎりを食べながら、白石くんがこっちを見た。


「わたしたち子どもが、いけないサイトとかに、アクセスしちゃったりしないように、親がアクセス制限できるの」


「多分そんなのないよ、お父さんのパソコンだったやつだから」


(そっか、やった!)


「えっ、結ちゃん、変なサイトを見たいってこと?」


「うん、変なサイトではあるんだけど、大丈夫なサイトだから。前にも矢納さんのパソコンでアクセスしたことあるし」


「ふーん、まあいいよ、好きに使って。ぼくも見てもいい?」


「いいよ、白石くんなら見ても」


 なぜか、白石くんの顔が真っ赤になった。



 例のサイトにはうまくアクセスできた。白石くんも隣に移ってきて、私の斜め後ろから画面を覗き込んでる。

 ち、近いです、白石くん……か、肩が触れそう。


 雑念を振り払って肝心の内容を見る。前回と違って、階層3には、テキストのファイルばかりがリストに並んでいるけど、数はそんなに多くはない感じ。

 日本語で読めるものは3つあるみたい。他のファイルは、多言語用なのかも知れない。その先頭のファイルを開いてみた。


==================================

●対処が急がれる問題の報告


人類の統一と融合に関する脅威の調査報告


 AOBより、地球の生成以来の環境変化のサイクルについての情報が報告された。本件は思念体との接触によってもたらされたものである。

 地球生成46億年間の期間で、人類発生以降、存続に大きな影響のある環境変化は以下の6回であると告げられた。


・4534000000 大隕石落下

・4594200000 地軸逆転1期

・4597200000 地軸逆転2期

・4598000000 第四紀氷河期

・4599200000 地軸逆転3期

・4599988000(BC・4000) 核汚染

・4599995605(BC・2370) 大規模海面上昇


各現象の詳細ファイルは以下である。


********


 このサイクルから予想される、次回の環境変化については、約180年後であるとの具体的な情報が、思念体からもたらされた。

 信憑性について、世界的な議論があったが、AOBからは、ほぼ100%の有意性がある、予想であると報告されている。


 本庁においては、既存の研究を急速に進め、上位次元への移行を目指すものと決定された。

==================================


 うーん、あいかわらずよく意味がわからない。


「すごい、なにこれ。都市伝説のオンパレードじゃん。これもあの神様の話?」


 あの夏休みの、すごい体験で得た情報の、一部しか知らされていない白石くんは、そんなリアクションを見せた。

 これは、やっぱり矢納さんに相談しなくっちゃ。


「こんなサイトを見てるなんて、結ちゃん、僕のことヤバいなんて、からかえないんじゃない?」


 うん、本当にそうかもね。




(つづく)7月13日投稿予定

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