表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

三つの世界と三つの種族。この世界は種族ごとの世界で生きている。

地上に住む人間。天界に住む天上人。地底に住む悪魔。

人間は天上人を崇拝し悪魔を蔑んでいた。

天上人は人間を災害や疫病から守る存在。

悪魔は人間に災いを与える存在だと。

それが人間界の常識だった。

彼にとってもあの出会いがあるまでは。

地上世界のとある小さな村。村の少年カイルは陽が昇る前に日課である剣の素振りをしていた。とはいっても村で練習していたらうるさいと言われてしまったので、少し離れた小高い丘で朝も早くから汗を流していた。

自分の村は地上世界と地底世界を結ぶ封印された門を見張る為にできた村らしい。もしもの為に強くならないと。彼はそんな想いから剣を降っていた。


(実際に見たことはないけど・・・)


話は聞かされるけど生まれてこのかた見たことのない存在をそう簡単には信じられなかった。でも両親も長老も真剣にその話をしてくるので、正直半信半疑といったところだ。


「499・・・500・・!」


区切りの数を終えて、タオルを取ろうとしたそのとき。

風が吹き、タオルがふわりと舞い上がる。慌てて追いかけて足元のタオルを踏み止めようとしたその時、大地の裂け目に気づかず足を滑らせてしまう。


「うわぁぁぁぁぁ!」

 

ズザザザと音をたてながら転がり落ちて硬いなにかにぶつかって止まった。体を起こそうとしたらズキッと痛みが走った。足を挫いてしまったようだ。幸い穴というより坂という感じだったので、登れば帰れそうだけど足が痛んでちょっときつそうだ。

剣は丘の上に置いてきてしまった。持ってくればせめて杖代わりになったのに。そんな後悔をしつつとりあえず這い上がろうとしたその時、背後からキィ・・と重々しい金属音がしたかと思うと、


「なにしてるの?」


と声がした。ビクッとしながら声の方へ振り返るが暗くてよくみえない。


「誰!?」


思わずそんな声が出てしまったが、声の主は気にするでもなく淡々と、


「人間?怪我してるの?」


そう聞いてくるのだった。

相手の姿はよく見えないけど声や雰囲気からして同い年くらいの子供とわかる。そんな子がなんで穴に?と疑問に思ったけど手助けがないとなかなか帰れそうもない。


「滑り落ちて足を痛めたみたいなんだ。」


とりあえず素直に言ってみる。するとその子は


「まだ陽は出てない?」


そう聞いてきた。なんでかとも思ったけど余計なことを聞いてる余裕はない。


「日の出まではもうちょっとあるよ。」

「じゃあ上がれるように手伝ってあげるよ。」


その子は俺の手を取って引っ張ってくれた。その手は冷たく、そして力強かった。

手を借りたおかげでなんとか出ることができた。

 

 ―夜明け前の薄暗い地上に出て、その子の姿が見えた。

 

 ―姿形は人間と同じだけど


 ―目は赤く光り、薄暗くてもわかるくらい肌は白かった。


話で聞いていただけでもすぐにわかった。彼がいわゆる[悪魔]なのだろう。余程驚いた顔をしていたのか、彼はなにかを察した様子で「じゃあ」と去ろうとした。


「あっ待って!」


思わず呼び止めた。彼は足を止めて振り返る。


「助けてくれてありがとう。俺はカイルっていうんだ。」


少なくとも助けてくれたんだ。ちゃんとお礼は言わなきゃ。そう思ったとき自然と声がでた。


「・・・僕はリグ。地底世界の住民・・・。」


さっき僕があんな顔をしたからだろう。遠慮気味にそう答えた。だから今度は笑顔で聞いてみた。


「明日また会える?」


今度はリグが驚いたような顔をした。


「今日と同じような時間なら・・・。」

「じゃあまた明日ここで会おうよ。」

「・・・わかった。」


リグがちょっとだけほほ笑んだような気がする。

これが僕たち人間と悪魔の出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ