俺の赤ちゃん作れば何も問題ないから。
「でもさあ、こんな格好で寝室に呼び込んで、何されてもユアは文句言えないよね?既成事実作ってさぁ、たくさん俺の種子流し込んで、赤ちゃん出来ちゃったらユアだって僕を弟なんて言えないでしょ?結婚するしかないし。」
ねっ、とレモンドは笑う。
その言葉に私は固まった。
絶望を宿した瞳は、ビュウの本気さを物語っている。もう誤魔化せる範疇ではなかった。
狂気が満ちていて、昔の可愛いレモンドはどこへやら。
私の瞳からはポロポロと涙が流れて、泣き崩れていることに気づくのにお互い時間が掛からなかった。
「うう……レモンドっ……私、した事なんてないのぅ……ひく……初めてだし、こんな風にキスするのも……ぅ……」
ぼろぼろと零れた涙は、私の腕を掴むレモンドの腕に落ちる。
レモンドは、先程の怒りと悲しみ、そして狂気が混じった目ではなくて、初めて、あたふたするような心配するような目をして、私の涙を拭った。
バレてしまったけど、犯されて娶られるよりはマシかもしれない。重要な選択を無理やりさせられるのは悲しい。
「え、どうして……じゃあなんでユアが誰とでも寝るなんて噂があるのさ……。」
レモンドが私を抱く腕を弱めたので、私はスケスケガウンからいつもの部屋着に着替えて、侍女にホットミルクを持ってこさせて、落ち着くまでレモンドは、じっとしていた。
レモンドの大きな手を私の頭に乗せて、訳を話して欲しそうに見ている。
「なんで、ユアは嘘をついているの?」
「第三皇女として産まれたら、望まない結婚を強いられるからよ…。」
果たして、レモンドが信じてくれるかは分からないがジェイドよりは話してもいいような気がする。
正直に話して、この事は秘密でってお願いすれば可愛かったレモンドは分かってくれるだろう。
多分、今日求婚に来たのだって幼なじみのよしみで事実を確認しに来ただけで……
と都合のいいように考えていた私の頭だが、レモンドの言葉は都合のいいままではいてはくれなかった。
「俺ね、別にユアが誰と寝ててもどうでもいいの。
そりゃ、噂聞いた時、悲しいし凄い腹は立ったけどね、多分ユアが誰ともしてなくても、誰かとしてても、俺の赤ちゃん作れば何も問題ないから。」
話が通じていない。
いや、通じていないのは私の方なのではないかという気さえする。
「ユアの噂聞いた時、嫌悪して暴れるような兄様よりさ、俺はどんなユアでもいい俺のがよくない?
まぁ俺と結婚したら二度と兄様に会わせないけどな。」
私が言葉を咀嚼する前に、言い続けるのは兄弟特有なのか?
「でも、ユアが誰ともしてないのは純粋にすげー嬉しいよ。だから、俺も初めてだから、初めてはもっとロマンチックな所でしようか、こんないきなりじゃなくて。」
さらに続けるレモンドの言葉に、私は安心したらいいのか危惧したらいいのかも分からなかった。