本気で私を娶るつもり?!
本当にどうしよう。
身体が震えそうである。
こんなに男を惑わすふりをしても所詮は生娘。
身体に触れられるのすら緊張するのだ。
そんな私の気も知らず、男は抱いた私の身体さらにぎゅっと力を入れて包み込んだ。
「姫の身体を好きにしていいんですよね?1日10回も、俺のすべてを求めてくれるんでしょ?ああ、想像しただけでもおれ…おかしくなりそう。ユア……。」
掴まれた腕がアザになりそうなくらい強くベッドに押し付けられ、私の心臓はバクバクと音を立てていた。
男からは、目を見るだけで強い欲情が伝わってきて、耳元に唇を寄せる彼の図体は私が逃げる隙間もないくらいガッチリと覆いかぶさっていた。
悦に入った表情は整っていて、私の心臓は限界を迎えていた。
彼は本当に私の身体を犯す気でいるのだ。
「っ!!!!!」
いきなり両腕を押し付けられたまま、彼の唇は私の唇に合わさり、食べられそうなくらいの勢いで私の呼吸をすべて飲み込んでいった。
初めてなのに〜と泣き言を言いたくなるが、それでは作り上げてきた私が台無しだ。
「ふはっ!!!!!!ちょっと!ちょっと何するのよいきなり!」
やっとその唇が離れた時には、彼の欲望に熱を帯びた瞳が目に入る。そして、恋焦がれた少年のように涙で今にも潤みそうだった。
「なんで?キスなんていくらでもしてるでしょ?淫売の誰とでもする皇女殿下様。」
「あなた……!」
その緑色の瞳を見ていたら、遠い記憶が呼び起こされてきた。
ふわふわで栗色の毛が顔に擦られて擽ったい。
正気なのか、正気じゃないのかも分からない声色で彼は言った。
「誰とでもするなら、おれともするよね。なんでこんな世界で1番美しい女抱いてみんな結婚しないのかな?
俺がユアの事、絶対娶るから、満足させてあげられるように頑張るね。毎日10回、ううん20回ユアの事抱き潰して、部屋からなんて出してあげないんだ…。」
熱を帯びた緑の目、ふわふわの栗毛、そしてユアと呼ぶ声、噂でしか聞いた事なかったけどこのデカい図体。
隣国のファビエンヌ王国次男、レモンド。
それよりも、何怖いこと言ってるのかしら?
抱き潰す?部屋から出さない?
フル回転する脳みそは彼の言葉に追いつかず、この男が隣国の皇子だと分かったことで精一杯だった。
「あ、あああなたレモンドね!」
演技なんて忘れて、私は逃げる姿勢に入る。
バタバタと這いずり出ようとした足をレモンドは離すことはなかったが。
「そうだよ??」
大事そうに髪の毛や首に口付けをするビュウの抱擁から逃げようとしても、30cmくらいある身長差と、筋肉隆々の彼の腕からどうにも逃げることができない。
「ま、待ちなさいよ!ファビエンヌ王国は、結婚した相手以外と関係を持ったら死罪でしょ?!」
ファビエンヌ王国は、婚前の情事は許されない。離婚しない限り、夫婦以外の相手と関係を持ったら死罪なのだ。
「うん、だから今日求婚に来たんだよ。
婚前前のセックスがダメなわけじゃないんだ、その子と結婚すれば。
別にユアが誰に抱かれていても、ユアはユリシア出身だから、俺がユアとしかしてなきゃいいんだもん。まあ、結婚してもユアが他の奴とヤッたら死罪だけどね?」
今思い出したが、昔のレモンドは可愛かった。私より小さくて泣き虫で、いつも私とジェイドを追いかけていた。
待て、考えてる場合ではない。太ももにかかった腕は私のドレスを脱がそうとしている。
このまま関係を持ったら結婚?
毎日20回、部屋からも出さず飼い殺し?
性奴隷は私の方じゃないの。
既にズボン越しでも分かるほど、ビュウのお腹の辺りにはもはや張り裂けそうな程………主張していた。
「待って!ごめんなさい!無理!ダメ!やめて!助けて〜!!!」
私が叫ぶと、レモンドの腕が止まった。
「……他のやつには抱かれてるのにおれは嫌なの?」
悲しそう、とかを通り越して恨めしそうだ。
「そう!そうなの!あなたは弟みたいな存在ながら!ダメ!」
一生懸命、投げかける言葉を聞くレモンドの目は、あの時の会食で見たジェイドの目によく似ている。