この日々を続けられたら幸せよ。
レモンドは無事に別邸に帰ったようで、その後夕食を摂る頃に庭園に出ると、お姉様や侍女のレモンドに付きまとう声が聞こえてきた。
どうにかお姉様と結婚してほしいものだ。
私は、レモンドもそうだがジェイドとも顔を合わせたくないので自室で夕食を摂る事にした。
「皇女殿下、お夕食は殿下のお好きな羊の肉でございますよ。どうにか、お疲れをお鎮めくださいませ。」
可愛い侍女が夕食を持ってくると、やっと気持ちが落ち着いてきた。
こんな、未来のない第三皇女に良くしてくれる侍女は全員かけがえのない家族同然である。
「ありがとう…。」
「皇女殿下…、私殿下が毎回求婚者と寝ていないことなど分かっております。」
男は基本10分ほどで泣いて帰るのだから、侍女を誤魔化せるはずがない。
私が黙っていると、侍女は続けた。
「殿下、こんな自傷のような事はやめてくださいませ…。殿下には幸せになって欲しいのです…。」
別に自傷のつもりでやっているわけではない…と言おうと思ったが、もしかしたら生まれながらにして政略結婚を強いられる身分への自傷のような気持ちも含まれていたのかもしれない。
「リン…ありがとう。私はあなたとこの宮殿に居られたらそれで幸せなのよ。」
私も、第一皇女なら……いや、身分の低い貴族や平民なら恋愛とか出来たのかなぁ…。
夕食が終わり、微睡んでいると、気づいたらベッドで眠りについていた。
夕食後に本を読むために火を付けたロウソクも、とうに尽きたらしい。
口腔の清掃もしないで寝てしまった。
服は一日中部屋着なので問題はないけど…。
侍女も部屋を離れたようで、朝の薄暗い光が部屋に差し込んでいた。まだ早朝のようだ。
今日も…いや、これからも、何も起きない日常が続きますように。