第30話
「若殿、太守様はお許し下さりましたか?」
「ああ。父上は許してくださったが早く結婚しろと言われた。結婚といってもなぁ。僕は興味ないし。まあ良い。休めとのことだ。余が行っている改革を少し進めてくれたそうだ。父上は各国に直属軍も作ってくださったし助かっている。次は四カ国を制覇せねばな。」
「はっ」
僕は休憩をしろと言われたが父上より言われたことを考えていた。武田太郎殿は僕と同い年だ。そして松は確か僕の一個下。年齢的には相応しいだろう。しかし今川家の現在の勢力的に見ると不釣り合いだ。言い方はあれだが、領地の規模的に見ると、武田家の勢力は有力な所だと今川家の一家臣と同じぐらいなのだ。まあそこまでの領地を今川は与えていないが、そういう状況もあり得る状態だ。現在、今川は十数カ国も納めているのだから。
僕としては妹や弟たちとは接触がないため、誰と結婚するかなど気にしないが、武田家も文句は言ってこようと、攻めてはこないだろう。政略的にそこまで重要出ない所には嫁に出さないで良いと思うし、ただでさえ従兄弟で血統も近いのだから近親婚も良くないと思う。そのため、僕は他の家に嫁がせるべきだと思う。
しかし、父上の意見は違うようだ。父上は甲駿同盟を非常に重視している姿勢に見える。今は保留のようだが。僕と父上では考えが違う。しかし僕の正妻はどうするかとの問題もあるようだ。僕としては何処かの公家か西国の大名家になると予想している。西国には僕らには及ばぬといえど五から六カ国持っている大名家が二か三家ある。それらは政略的に結構重要な家だろう。
後は、六角をどうするのかだ。六角の勢力は弱まるであろう。僕は別に六角自体は気にしないが蒲生だけは臣下にしたい。彼らは優秀だ。六角家に揺さぶりをかけるつもりはないが、三好とは敵対するであろう。今までも畿内の争いには関係していた。六角家は三好が気に入らないはずだ。義兄上は六角が三好についたら細川に付くであろう。前六角家当主定頼は烏帽子親だ。それに六角家は先の上様の代から補佐してきた。
しかし、今まで通りにはいかないはずだ。六角家はどこまで勢力を持てるのやら。史実だと観応寺騒動はまだまだ先だが、歴史が変わっている今、いつ起きるのかわからない。場合によってはそのようなことが起きたら今川は介入する可能性がある。六角家の重要な家臣で優秀なものは引き抜きたい。
もう一つ警戒したいのは浅井の動きだ。浅井は裏切るのか裏切らないのか、それがわからない。僕の知識だと、浅井家の家臣は六角に反感を持っているものが多いはずだが。
浅井が裏切るとしたら浅井と懇意の朝倉の警戒する必要がある。領地も接しておるしな。もし、浅井が裏切って無事討伐できなければ義賢の支持は落ちる。しかし、浅井もいきなりは裏切るまい。裏切るとしても今代久政ではなく猿夜叉丸が元服したのちだろう。
噂によると久政は意志が弱いらしい。父、亮政が残した領地を保てず、すぐに六角に従った。まあ今の浅井の家臣たちは猿夜叉丸に期待をしているだろう。どう動くのか。我々に脅威になるようなら潰す必要もあるしな。暗殺をせねばならぬかもしれん。何が起きるかはわからぬ。
それに今の今川家はかなり狙われているはずだ。僕と父上が亡くなったら崩壊する可能性がある。弟もいるらしいが会ったことはないし僧門に入っているらしいしな。その弟ではここまで巨大化したのをきちんとした教育を受けていない以上治められないだろう。普通に考えていきなり政治ができるわけないし。だからこそ、毒、忍びには気をつける必要がある。僕と父上は繋がっているといえどだいぶ離れているが。父上は本館で、僕は離れにて幼い頃から過ごしているしな。




