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第176話

四月になった。もうここ2ヶ月はあっという間だったが、どうにか全て間に合わせることができた。父上は家督を譲る事を宣言し、僕が今川家の当主となった。これから京に上洛して、守護職に任じて貰うのと家督継承を承認してもらうつもりだ。それが終わったらすぐに帰ってきて、江戸へ引っ越しする。


そして、明日京に挨拶しに行くという前日、父上が僕の所にやってきた。

「父上、わざわざ参られなくても言われれば私から行きます」

「彦五郎はもう当主だ。私はただの隠居。彦五郎の所に私が来るのが通りだ。立場は変わったのだ」

「それで父上、何用ですか?」

「彦五郎の側室のことだ」

「側室?」

「忘れていたのか?上杉殿の養女を側室として貰い受ける。後はあくまでも提案なのだが、北条を再興しないか?初代は家臣として本当に尽くしてくれた。それに北条系の家臣も多い。それでだ、其方の従兄弟で現在は僧門に入っている、北条相模守の娘(早川殿)を側室としないか?」

「父上、何故今更?」

「考えたのだ。今川家は現在急速に力を伸ばしている。それにしては最近出家させ続けていたせいで、近い近親の一門が少ないとな。それでだ、分家を増やすべきだと考えた。それで何かしらの名跡を継がせれば良いのではないかとな?それで北条は丁度良いと思っただけだ。これは其方に決断を任せる。本人に会ってから決めても良い。強制力はない」

「わかりました。家臣と話した上で決めます」

「うむ、これはただの提案の過ぎぬが、未だに降伏しときながら、領地を無くし、銭雇いになったのもあって北条を好ましく思っている連中がいる。そ奴らを懐柔するのに便利だろう。別に生まれた子は、一門でありながら、僻地に北条恩顧の家臣をつけて追い遣っても良いしな。うまく追放のようにする口実にもなるだろう」

「政略的にも利益があるのならば受けてもいいかもしれません。どうせ1人側室を娶るのであれば2人いても一緒ですから。ただし、今川家の継承権は最下位で、まず最初に政姫様の子を、次に上杉の側室の子としましょう。争いは避けたいのです。後ろ盾も弱いでしょうし」

「それは勿論だな。話はこれで終わりだ。他にも側室に迎えたい娘がいたら教えてくれ。迎える準備を代わりに進めよう」

「今の所はいませんし興味もわきません」

「そうか、それは困るのだが。まあ私はここで失礼しよう。側室に迎える準備は全て行っておくから心配するな。そういえば政姫様に世田谷御所を与えていたが、側室たちにも与えるか?」

「そうですね。いきなり側室を迎えるのは少しかわいそうですし、北条の娘は、既に5、6年近く僧門にいると思うので、慣れさせる意味も含め、小田原に屋敷を与えましょう。少し慣れ、政姫様か、上杉の側室が懐妊したら、江戸に入れましょう。継承的にも長男は、政姫様が良いのですが、上杉は政略の事もあって、難しいので。北条の娘にはなるべく継承争いの火種を作って欲しくないですし」

「確かにそうだな。なぜわざわざ本拠地であった小田原という疑問はあるが、まあよかろう。そうしておく。心配はするな。そこは全て父に任せておけ」

「よろしくお願いします」


こうして、僕が2人の側室を迎えることが決まった。1人は史実での妻、早川殿で、1人は史実ではいなかった娘だ。小田原に住ませることにしたのは、早川殿と呼ぶためだ。そちらが印象深いし、記憶的に楽だから。



更新遅れてすみません。定期テストなど色々重なってしまいまして存在忘れていました

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