第167話
僕は帝のおそばにて、帝と対面していた。周りには誰もいない状態だ。
「参議、枕元に来てくれ。」
「はっ」
何で帝はこんなに僕を近づけたがるのか気になるが、命令だし、仕方が無いだろう。
「方仁は、其方より年上だが、朝廷が貧乏な故に、様々な苦労をかけてきた。未だ経験も浅く朝廷の職務である戦を止めるなどを行うのは難しいだろう。参議は未だ若い。なのにも関わらず、こんなにも功績を立て、朕の夢たる戦無き世のために奔走してくれている。西が未だ戦に包まれていることは心残りであるが、東が安定しているのは一重に其方のおかげだ。感謝している。」
「ありがたきお言葉」
「参議は最も頼りになる臣だ。方仁を頼む。朕は直ぐに死ぬことになろう。参議は朕の一番の忠臣である。参議、其方を中納言に昇進させる。朕の名で最後にそれだけはさせる。其方の父は、大納言にする。既にその宣旨を出させた。朕が最後に参議にできることだ。参議、其方にこの国を日本を任せた。我が子や義輝をよく補佐してやってくれ。」
「必ずや。」
そういうと帝は目を閉じられた。
「帝!」
部屋の外に出ていたが、周りにいた侍従が、僕の叫び声を聞くと駆け込んできて医師が診察した。医師によるとただ寝ているだけだが、かなり危険な状態だそうだ。
「今川殿、父上は今川殿をとても気に入られていた。ここに少しいてくれ。幕府の仕事があるのも理解できるが、頼む。先程も2人で話すのを望まれていたが、それだけ信頼なさられているのだ。」
「わかりました。皇太子殿下の命令ですので。連れの者に御所に連絡をさせても良いでしょうか。」
「そうだな。少し言ってくるが良い。」
僕は家臣に伝えると、帝のところに戻った。まあ頼りにされるのは悪い気はしない。しかし義兄上には迷惑をかけるかもしれない。まあでも自分の息子とたくさん過ごしたいだろうし。ていうか、義兄上来なくて大丈夫なのかなあ。一様、将軍だし、身分もあるし来た方が良い気もするけれど。
「今川殿、」
「何でしょうか?関白様」
「今川殿の父君に大納言に任ずる宣旨を正式に、伝える勅使が帰ってきた。それ故に、中納言に任じようと思ってな。帝が、ずっとお望みであった。帝の願いだった。帝は、今川殿が家督を継がれるのを待つ意向だったようだが御自身がもう長くないと悟られてから、急いで、宣旨を書かせて駿府に使者を遣わした。今川殿がこちらにつかれるのと入れ違いぐらいに使者は京を発し、駿府に行ったのだが、帰ってきたのだ。それゆえに長幼の序を気にされる必要もないと考えてな。」
「そうだったのですか。わざわざありがとうございます。」
「帝の意向だ。それでだ、帝の目の前で宣旨を行いたいのだ。帝が望まれていた事柄だからな。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
そう言いながらも内心焦っていた。急に言われてもなあ。まあご好意を無碍にするわけにもいかないのだけれど。




