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第148話

楽しんで読んでくださると幸いです。

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今回も引き続き側近の佐野二郎視点です。


「若殿は如何されたのか?何があったのだ?」

福島殿は部屋に入って、布団を見て行った。

「若殿が倒れられました。医者の話によると過労とのこと」

「若殿!」

「静かになされよ」

「太守様、すみません。取り乱してしまいました。二郎殿も注意してくれてたすかる。焦っておりました」

「まあ伊賀守殿の気持ちも理解できる」

「本当にすまない。本来は若殿が心地よく休めるyぅにも静かにするべきなのに」

「太守様、仕事に戻られる必要が」

「わかった。福島伊賀守、佐野二郎、彦五郎のこと頼んだぞ」

「「はっ」」


太守様が部屋を出て行かれた。

「奥様にはこのことを知らせたのか?」

「いやまだだ」

「早めに知らせるべきでは?」

「しかし若殿と奥様の仲はあまりうまく行っておらぬ。突然、知らされても相手は困るだけだろう。しかし伊賀守殿の意見も一理ある。一応知らせるべきか。しかしどうすればいいのだろうか」

「佐野様、私ならば知らせます」

「竹中殿」

「相手がどう思っていようとこのようなことも知らされないのは、侮辱行為または、軽んじられていると見られるでしょう。一度失った信頼の獲得は難しい。相手は将軍家の姫君。今川家にとっても将軍家は敵に回したい相手だとは思いませぬ」

「確かにな。竹中殿の申されることも一理ある。伊賀守殿は知らせるべきだと考えられるのですよね」

「はい」

「知らせても悪いことは起きないでしょうし知らせましょうか。しかし、誰が行くべきでしょうか。奥に入るには相応の身分が必要です。」

「失礼致します。松井七郎です。警備の交代に参りました」

「松井殿、警備の交代はまだでは?」

「そうなのですが、若殿が倒れられたと聞きまして、居てもたってもいられずに来てしまいました。そもそも私は屋敷で肩身が狭いのです」

「何故でしょうか」


「私の父は、松井家の当主でしたが、私が幼い頃の亡くなりました。その後叔父上と私を推す家臣の二つの派閥があります。叔父上は当主ですが反対派も多いのです。特に現在の立場になってからは家臣団の圧力が高まりまして」

「しかしながら松井殿も自身の知行を持っているはず。わざわざ屋敷に暮らす必要はないのでは?」

「それは、ただ単純に管理が面倒なためです。それに使用人を新たに雇うのも大変ですし、屋敷に暮らしています。まあそれゆえに屋敷も疲れるのです。若殿から頂いている知行は、家臣団の次男や三男を私の家臣として、軍勢は組織しています。何かあった時に若殿を守る必要がありますので」

「それと質問なんですが、どこで若殿が倒れたと聞かれたんですか。我々はそこまで知らせていないはずなんですが。変に噂が立つと困りますし」

「それは成田殿から、任務が終わった後私の屋敷に寄ってくださって教えてもらいました」

「若殿のことは言いふらすべきではないが、成田殿は意外だな。松井殿は若殿の信頼が厚い。それゆえか。若殿を補佐する立場であり、護衛の担当者だ。まあ知らされるべき立場ですし問題はないでしょう。ちょうど奥様に報告する話をしていた」

「そうだったのですか。私が行きましょう。私は松井家の人間です。曲がりなりにも譜代の家柄、そして前当主の嫡男。奥に入ることができる身分かと」

「よろしくお願いします」


私は親衛隊副隊長の松井殿に、奥様への報告を任せた。松井殿は立派なお方だ。我々と同年代だが、幼い頃より苦労されているようで、若殿の信頼も厚い。福島殿、私と並んで若殿の側近衆の筆頭だ。まあ礼儀も心得ているし問題は起こさないだろう。後は奥様がどう動くかだけだ。



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