第140話
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僕は佐竹家の当主、佐竹徳寿丸に会っていた。
「佐竹徳寿丸、よくきたな」
「はっ、東国管領、今川宰相様におかれてはご機嫌麗しゅうございます」
「うむ、徳寿丸はどうだ?」
「今川宰相様のお陰様で、某も幸せに暮らさせていただいています」
徳寿丸が明らかに幼児とは思えぬ話し方であったため鎌をかけてみることにした。まあ半分冗談で緊張を少しでもほぐすためだが。佐竹家の家臣達は、ヒヤヒヤしているのが見えるのだから。
「徳寿丸、その口上覚えてきただろう?」
「はっ、その通りでございます」
「若様、それは言うべきではありませぬ」
「邪魔を致すな。後ろのものも名乗ると良い」
「はっ、佐竹家家臣、小場安房守義忠と申します」
「そなたが徳寿丸の補佐役か?」
「はっ、今川宰相様とも面識はあると思いますが」
「あの時の家老とは違うと思うのだが?」
「あの時は佐竹又七郎様です。私は次席家老にて、又七郎様が、留守居として、領内に残られています。私は、籠城の際には、本丸にてではなく、前線司令官のような立ち位置でしたので」
「そうだったか。徳寿丸を今後とも助けてやれ。この話は正式ではないし、私の考えに過ぎないから、保証はできぬが、私は重臣か一門の娘を父上の養子にして、徳寿丸の妻にすることも考えている」
「それは誠にありがたい申し出です。すぐにでも受けさせていただきとうございます」
「まだ正式でもないし、私の考えに過ぎぬから、本気に致すな。まあそれだけ佐竹家を重視しているということだ」
「宰相様、ありがたきおことば」
「ときに徳寿丸、新たな守護代とはうまくやれているか?」
「はい!」
「そうか。それは良かった。それで徳寿丸は常に何をやっておるのだ?」
「はっ、某は、武術の稽古、そして勉学を行ったのちに、爺から言われた書類に署名をしています」
「それはいけぬ。きちんと書類を読んでから、署名をするようにしなさい。そうでなければ、横領なども招きかねない」
「我が家臣はそのようなことは致しませぬ」
「それは言い切れぬものだ。何があるかわからぬ。それに、いずれ自身で政治を動かす。その時に少しでもわかっていた方が良い。わからないことは周りに聞いて、始めてみよ。いずれ役に立つ」
「宰相様のおっしゃられた通りにさせていただきます」
「よく礼儀はできている。褒めてつかわす。このまま励むように」
「はっ」
佐竹徳寿丸はその年齢にしては立派なようだった。しかし、家臣たちを信用し過ぎている点もあるので、そこは直させたい。僕の手足として、信頼できる優秀な家臣にしたいし。まあ史実から考えても徳寿丸は立派に育つだろう。
しかし、武が目立つだけでなく、文武両道にさせたいし、領内で不始末は起こしたくない。そのためには徳寿丸に立派になってしまう必要がある。いずれ江戸に来させて、江戸に住まわせるか。そこで他の家臣の子供達と一緒に学ばせよう。徳寿丸にとっても良い経験になるだろう。
そして僕がアドバイスした、書類をきちんと読むのは基本だ。良い為政者になりたい、名君になりたいのならば、きちんと自分で政治をする必要がある。まだ幼い徳寿丸は今すぐに自分で政治をするのは難しいが、今から少しずつ勉強していけば、かなり早くから自立できるだろう。佐竹右京大夫殿の死は佐竹家にとってさまざまなことを与えたが、次代の元で少しは持ち直して、今川家の家臣として尽くして欲しい。
今は違う者に常陸守護代を任せているが、いずれは徳寿丸にやらせてもいいし。今の常陸守護代は優秀だし、その手腕を使って常陸の復興を早めているが僕の側近なのでいずれは、老中にしたいと思っているし。それに常陸の中での領地は、佐竹家よりも少ない。今川家の守護代は少し特殊だが、それになれるかは佐竹家次第だ。




