第130話
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僕は1日かけて、駿河国西部を見ながらゆっくり進んだあと、国境付近にある国衆の館で1夜過ごした。そして、遠江に入った。遠江も駿河国とそこまで変わらなかった。農民は裕福とまではいかないけれど、生活に余裕がある様子だった。彼らも感謝を伝えてくれてよかった。やっぱりかんしゃされるとうれしいものだ。
「若殿、農民たちの暮らしぶりは安定しているようですね」
「そうだな。悲しきところは、こちらは肌寒いことことか。苦労しても実りは少ない。西国は暑いのだが」
「それに関しては、若殿の命にて、新種の栽培を進めさせているので解決したのでは?」
「北方領ではな。奥州は少しだ。遠江は比較的豊かだが、もう少し進めさせたい」
「若殿、そのことはあとでも良いのでは?遠江似てなにか重要な案件があるとも聞きましたが」
「そうだな。寺社との所領争いだ。面倒なことこの上ないが、寺は何かと仏様を口実にいたすし、一向宗のときのような、農民との戦いは避けたい。その上に美濃の鉱山もあって、視察に出ることを昨日急遽決めた。日が暮れそうになってきたな。急ぐか」
「はっ」
「そういえば帰りは道を変える。そのように手配しておけ」
「はっ」
そうして僕は遠江の中心とされている浜松についた。
遠江国の守護代が城下町に来るところで迎えてくれた。そして、浜松城に案内された。とはいっても今川家の城だ。守護代は城下の屋敷に住んでいる。そして城を仕事の際のみ、登城して仕事を行う。まあただの代官に過ぎないということだ。
僕は本丸に入ると、訴訟のことをきいた。どうやら、どこかの寺(名前はどうでもいいし興味ない)が今川家に守護不入の権を侵されていると訴えたらしい。もう面倒だし、遠江守護の嫡男としてではなく、幕府の特別幕政参与、並びに東国管領としてさばこうと思う。今川家ではなく、幕府がさばく形になる。まあ事実上は今川家の中で完結しているのだが。
その僧を連れて参るように命じた。僕自ら、裁判をする。そしたら、相手も納得するだろう。相手は今川家嫡男で将軍家の信頼も高い、今川宰相だ。それに東国二十九ヵ国を将軍から直々に命じられて、預かっている。いいように言っては、父上よりも格上だ。
僕は信長とは違って、幕府の下につくことを嫌わないから、幕府の役職を受けている。とはいえど、父上を尊重して、父上の官位より上になったりしないようにしている。まあその配慮もほとんど無駄だけれど。義兄上が僕をなんか謎に新たに作った役職に任命するから。それによって、なんか戦いとかがあったら僕が裁定することになるのだろうし、東国管領は東国二十九ヵ国内では管領と同等の権限を持つらしい。そこに特別幕政参与という役職も伴って、幕府の家臣第一席だ。まあ東国管領という役職があるから、京に居なくても非難されづらくなった点は非常に良かった。




