第126話
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また、今回で週三投稿は終了です。次回よりは、週一の土曜日投稿とさせていただきます
「父上、彦五郎参上いたしました」
「入れ」
父上の声はいつもどおりだった。どうして僕の事を呼んだのかが余計にわからない。本当になんでだ?
「彦五郎、姫君とは仲良くやれているか?」
僕はその問いかけにどう答えるべきかわからず、何も言わなかった。ダンマリを決め込む僕の様子を見て、父上は何か察したようだった。
「その様子ではあんまりか。まあ良い。色々、そなたに任せてしまっていたしな。彦五郎、もう少し仕事に没頭するのをやめよ。そなたにも弟はいる。しかし、そなたの弟は僧門に入って久しい。それに幼い頃から預けているから、そこまで教育が行き届いていない。そなたとお互いに、覚えていないだろう。それ故に、跡継ぎを作るのは急務だ。もし、そなたが家督を継ぐまでに懐妊しなかったら、側室を娶らせる。分かったな」
「父上、某は女性には興味がありませぬ」
「側室に関しては政略的な意味合いもあるのだ。今は保留にしているが。娶るのを避けるのは大変だ。まあそれは良いとして、そなたは仕事を頑張っているようだな」
「はっ」
「それは良かった。余の隠居館を整える必要があるな」
「父上、その心配はいりませぬ。某の指示にて、江戸城に隠居した当主のための館、並びに世子の館を整えています」
「ほう、彦五郎はすごいな。良かろう。して、江戸に移るのはいつのつもりだ?」
「はっ、家督をついですぐに。家督継承の際に、そのことを申し伝えます。もちろん内々には、評定衆に今度の評定で伝える予定です。そして、土地を与えて、館を建てさせようと思っています」
「そうか。それなら早いか。しかし、評定衆以外にも伝えないと反対が起きそうだと思う。それ故に、時間がかかると思うが、それについては考えたのか?」
「それはもちろん理解しています。一門衆に関しては、評定衆に伝えた後に、集めます。重大な発表があると。そこで、このことを発表いたして、屋敷の建造を命じます。また上級家臣に関しても、同様に、一門衆の後に同じことを。そして、中級家臣より下に関しては、新年の際に」
「うむ、そなたの計画は理解した。そなたがそのときには当主だ。そなたがやりたいようにやれば良い」
「はっ」
「駿府はいかがするのだ?」
「代官を置きます。代官の格は、上級家臣か一門衆にする予定です。代官が統治いたします。また菩提寺も、駿府に残します」
「それはわかった。そなたの計画どおりに進めるが良い。しかし、上様への報告はどうする。家督継承の際に、上様からそなたを守護に任じて頂く必要がある」
「はっ、父上が隠居されるのは明確にはいつなのかわからないので、それはまだ決めかねています。」
「うむ、夏といったが、4月だ。余も早く隠居したいゆえな」
「父上、ご冗談を。某は6月ぐらいだと思っていました」
「すまぬな。しかし、もう決めた事だ。彦五郎にならば安心して家督を任せられる」
「父上、某は、家督継承の後、家臣との謁見を行い、直ぐに京に向かいます。そこで、義兄上に謁見して、名目的ですが、家督継承の許可を頂きます」
「そうか。余は、剃髪する」
「父上はまだ37です。そこで隠居と言うのも早いのに、剃髪なさると?早すぎませぬか?」
「余には、若く優秀な後継ぎがいる。それ故だ。そなたは権限を持っていたほうが、動きやすい。ただそれだけだ。他意はない」
「はあー、父上にもう少し引っ張っていただきたかったのですが」
「まあ良い。計画を聞きたかっただけだ。彦五郎、忙しいところにありがとうな。仕事を続けるが良い」
「はっ」
父上の目的はわからないがまあいいだろう。これからも頑張らなければな。




