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八木探偵事務所忘備録  作者: 弓納持水面
2/3

2 職質

ネット検索と図書館通いは基本ですよね。

依頼を受けた翌日、俺は近所の図書館で資料や新聞記事を当たっていた。

協力者との待ち合わせまでまだ時間がある。


[世界的ヴァイオリニスト急死]

日本公演の為、来日していた名ヴァイオリニスト、グスタフ・フンデルト氏が宿泊先の心臓発作で亡くなられた。

70才だった。

同氏は25才の時[ヘンリエッタ・アマティ]の演奏者として選定され、それ以来数々の国際コンクールで優勝。

日本へは2週間前に公演の為、初来日していた。


[ヘンリエッタ・アマティ]

1570年、イタリアの楽器職人のアンドレア・アマティが制作。

制作された当時から名器として名高かったが、アンドレアは「最高傑作にして最大の失敗作」と書き残している。

技量無き演奏者を呪い殺すとの迷信があり、現在はアンドレア財団が所有し、高名なヴァイオリニストに貸し出している。


プロによる盗難の線は薄いか……。

俺は独りごちる。。

有名すぎる美術品や宝飾品は捌くルートがない限りプロは手を出さない。

俺がちょっと調べただけでも、本当(・・)の曰くはともあれ、名前が出てくる楽器。

金に変えるのは至難の業だろう。

だがまだ、アーティファクトハンターや[財閥]の連中の可能性もある。


アーティファクトハンターなら、依頼された品をピンポイントで狙ってくるし、[財閥]のエージェントなら更に厄介だ。

そちら系のダークウェブに一度潜る必要があるかも知れない。

そうして思考を巡らせていると、声をかけられた。


「ちょっと、お話聞いても良いですか?よろしければ、お名前や、ここで何をしているのか聞きたいのですが……」


「見りゃ分かるだろう?しかし図書館で職質か?田村。」


「公共の図書館で大きな声はお控え願います。待ち合わせの喫茶店に現れないから迎えにきました。」

だが、腕時計を見ると約束の時間まで15分もある。

俺は無言で腕時計を指さした。


「今時、普通の腕時計している人も珍しいですね。」

笑顔を見せて、はぐらかす。

正体を知らなければ、大抵の奴はこの笑顔に騙されてしまう。

それぐらいの美人だ。


「そうじゃない。まだ時間前だ。」

そう指摘すると、ゆっくり首を振った。


「放おっておくと、資料と思索に没頭して遅れてくる。[ポナペ]のコーヒーとケーキを賭けても良いですよ。」


「刑事が賭けをしても良いのか?」


「今日は非番です。」

冗談にしては微妙だ。。

今時はいつ何処で録音、録画されていても不思議ではないのだから。


「まぁ、例え一円でも賭博は犯罪です。ただ『一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない』とする学説もありますから、大丈夫でしょう。」


「それに、これから哀れな自称探偵を強請(ゆす)ってケーキやコーヒーを、せしめる予定ですし。」


「お手柔らかにな」

俺は苦笑いをして頼んだ。



私の黒歴史がまた1ページ。


本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。




Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.


Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.


PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」

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