2 職質
ネット検索と図書館通いは基本ですよね。
依頼を受けた翌日、俺は近所の図書館で資料や新聞記事を当たっていた。
協力者との待ち合わせまでまだ時間がある。
[世界的ヴァイオリニスト急死]
日本公演の為、来日していた名ヴァイオリニスト、グスタフ・フンデルト氏が宿泊先の心臓発作で亡くなられた。
70才だった。
同氏は25才の時[ヘンリエッタ・アマティ]の演奏者として選定され、それ以来数々の国際コンクールで優勝。
日本へは2週間前に公演の為、初来日していた。
[ヘンリエッタ・アマティ]
1570年、イタリアの楽器職人のアンドレア・アマティが制作。
制作された当時から名器として名高かったが、アンドレアは「最高傑作にして最大の失敗作」と書き残している。
技量無き演奏者を呪い殺すとの迷信があり、現在はアンドレア財団が所有し、高名なヴァイオリニストに貸し出している。
プロによる盗難の線は薄いか……。
俺は独りごちる。。
有名すぎる美術品や宝飾品は捌くルートがない限りプロは手を出さない。
俺がちょっと調べただけでも、本当の曰くはともあれ、名前が出てくる楽器。
金に変えるのは至難の業だろう。
だがまだ、アーティファクトハンターや[財閥]の連中の可能性もある。
アーティファクトハンターなら、依頼された品をピンポイントで狙ってくるし、[財閥]のエージェントなら更に厄介だ。
そちら系のダークウェブに一度潜る必要があるかも知れない。
そうして思考を巡らせていると、声をかけられた。
「ちょっと、お話聞いても良いですか?よろしければ、お名前や、ここで何をしているのか聞きたいのですが……」
「見りゃ分かるだろう?しかし図書館で職質か?田村。」
「公共の図書館で大きな声はお控え願います。待ち合わせの喫茶店に現れないから迎えにきました。」
だが、腕時計を見ると約束の時間まで15分もある。
俺は無言で腕時計を指さした。
「今時、普通の腕時計している人も珍しいですね。」
笑顔を見せて、はぐらかす。
正体を知らなければ、大抵の奴はこの笑顔に騙されてしまう。
それぐらいの美人だ。
「そうじゃない。まだ時間前だ。」
そう指摘すると、ゆっくり首を振った。
「放おっておくと、資料と思索に没頭して遅れてくる。[ポナペ]のコーヒーとケーキを賭けても良いですよ。」
「刑事が賭けをしても良いのか?」
「今日は非番です。」
冗談にしては微妙だ。。
今時はいつ何処で録音、録画されていても不思議ではないのだから。
「まぁ、例え一円でも賭博は犯罪です。ただ『一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない』とする学説もありますから、大丈夫でしょう。」
「それに、これから哀れな自称探偵を強請ってケーキやコーヒーを、せしめる予定ですし。」
「お手柔らかにな」
俺は苦笑いをして頼んだ。
私の黒歴史がまた1ページ。
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」




