自己紹介
「いつになったら着くのよーー!」
今、僕達は終わりが見えない道のりを歩いている。幼女に言われた通り扉を開けた瞬間。見えた世界は永遠に続くと思われるような道のりであった。僕はてっきり開けたら過去の間に繋がっているとばかり思っていたのでまさか歩かされるとは思いもしなかった。その間、鹿川さんとは全く話していず、とても居心地が悪い。そんな事を考えを見透かされていたのか鹿川さんが僕に質問を投げかけてきた。
「ねえ、君は名前なんて言うの?」
「あ、えっと僕は陸斗って言います。」
「そう、陸斗君っていうんだね。私の名前は鹿川 なずな。気軽になずな呼びでいいよ陸斗君。」どうやら、僕が自分が殺した人物だとは思っていないようだ。それもそうだ、今の僕の容姿は中学生くらいだし、敢えて衣笠という苗字も明かさないでいた。これから共に試練をクリアしていくのだから正体は知られずに初対面同士ということにしておいた方がよいだろう。
「なずなさんよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくねー。ところで、陸斗君はどうして地獄に落ちたの?その歳で何か悪いことでもしたの?」今更ながらに僕は自分がなぜ地獄に落ちてしまったのかを考えた。しかし、考えども答えがまるで見つからない。僕は自分が地獄に落ちる程の事をした記憶がない。自分が自覚していないだけで大罪を犯していたのかもしれないが、自分が知っている限りでは大罪と呼べるほどの罪は犯していない。せいぜい小学生の頃の野球をしていて、人んちの窓を割ったくらいだ。
「それについては分からないんです。なずなさんはどうなんですか?」覚えていないことを話題にできるはずもないので、僕も当たり障りのない返答をして質問し返すくらいしかできなかった。
「私はね。人を殺したの」僕はそれを知っていた。しかし、なぜ殺されたかまでは分からなかった。僕はその疑問を解消すべく、鹿川さんに質問をした。
「どうして人を殺したんですか?」
「復讐だよ。まあ、そいつを殺した後は虚無感でいっぱいになって自殺しちゃったんだけどね。」そう笑う鹿川さんの心は笑ってなかった。そう見えた。それにしても、復讐とは?僕は生前鹿川さんに殺されるほどの何かをしたということだろう。僕はその理由を知ろうとして―
「あ!見て陸斗くん。あれって出口じゃない?」そう鹿川さんは奥に見える光を指さした。ここいらで1度話は終わりといわん雰囲気。まあ、急がなくてもこれから先まだまだあるので理由を聞くのはまた今度にしよう。
「本当だ!なずなさん、急ぎましょう!」そう言って僕達は足早に光の方へと向かった。