プロローグ
目を覚ますと、真っ暗な空。横を見てみると辺り1面に彼岸花が咲いている。僕はつい先程の事を思い出す。
彼女の今まで見た事のない憎悪を剥き出しにした表情。そんな彼女の手には握られた包丁。僕は彼女に刺殺された。何度も何度も刺され、息は絶えた。もしかすると、息が絶えた後も何度も刺されていたのかもしれない。
「つまり、ここは死後の世界...?」僕ー衣笠 陸斗はそう直感した。刺殺され、意識があり辺り1面に彼岸花が咲いているこれはもう死後の世界で間違いないだろう。ここはちなみに天国か地獄のどちらなのだろう。ふいにそんな事を考えてしまう。彼女にあそこまでの憎悪を抱かれる程、彼女になにかした記憶はないが知らない間になにかしていたのかもしれない。もしくは、忘れているだけなのか。どうであれ、彼女にあそこまで憎悪を抱かれる人間であるならば地獄という可能性があるのかもしれない。出来れば天国であればよいが。
何はともあれまずは状況を知る必要があると思い、立った瞬間僕は自分の体に違和感を持った。なぜ違和感を持ったのか、答えはすぐに出た。生前、僕は26歳であり、その容貌も26歳らしいものであった。しかし、今の僕は26歳ではなく、中学生くらいの容貌に若返っていた。なぜ若返っていたのか答えは出ないので置いておいてとりあえずは状況を確認することにした。そうして歩けども景色は変わらず地面には彼岸花畑が続いている。そうして幾らか歩いた頃であろうか。遠くの方にうっすらと人影が見えた。僕はその人影の方へ走って駆け寄った。近くに来てみるとどうやらその人影は女の子、それも小学生くらいの幼女であった。
「すいません。ここってどこなんですか?」僕は優しく小学生くらいの幼女に声をかけた。すると、幼女は人形のように表情を変えず淡々と「ここは、地獄。待っていました。衣笠 陸斗さん。貴方には生まれ変わる資格が与えられました。」そう言い放ったのだ。