失赫-shikkaku-
同じような顔
同じような体
区別しましょう
あなたは赤ね
思った通り
酷く似合うわ
白の膚と黒の髪
煮染めた赤がよく映えるよ
隠すように巻かれた
太めのリボン
夜の帳を
溶かしこんだような
この閉じた箱に
手取り合う二色
合わせ鏡
写し鏡
光無き室で
互いに何も知る由もなく
同じような声
同じような仕草
区別しましょう
あなたは青緑
思った通り
首を傾げた
白の壁と黒の床
芽吹くような緑が鮮やかだわ
諭すように解かれた
お揃いのリボン
泣きわめく僕らを
照らす陽光
手を伸ばす僕らを
人波が遮る
暗闇から放たれ
水の膜を纏い
漸く馴染んだ双眼
互いを焼き付けた
そして今日も鏡に
額合わせ祈った
言い知れぬ不安が
揺り起こす真夜中
がんじがらめの日々を
振り払うように駆けた
掠れる記憶を
必死に手繰り寄せ
辿り着いた片庭
弾む息と脈
ひっそりと佇む
堅牢の箱
重たい汗を拭って
閂を外した
合わせ鏡
合わせ鏡
剥がされた半身
巻き戻る時間
あの時の風景
ふいに鼓膜を駆け巡る
最奥に こびりつく言葉
双つ星顕るは
一際の凶兆
視界塞ぐ女の
嗚咽が甦る
泣き声を上げたその日に
刻まれた刻印
巻かれた感触を確めるよう
首筋を撫でた
色違いと言った僕
お揃いと言った君
鏡別つ言葉
あまりにも短く
どこか遠い異国で
僕と同じように
鏡に手を合わせ
微笑んでいるはずなのに
お揃いになった色違いのリボン
拾い握りしめ 2つ合わせた
息を吐いて結んで
痕に重ねた
開かれた扉から
差し込む月明かりが
軋んで揺れる影を 長く伸ばした
向かい合わせに、補い合う色。