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 ベッドでゆっくり眠った僕は、翌日元気になっていた。兄様も元気そうで、僕はほっとする。



 兄様たちと一緒に『聖女』様の元を引き続き目指す。

 僕は何だか楽しい冒険気分だったけれど、外に出ると……雰囲気が違った。兄様が怖い顔をしている。兄様には笑ってほしいなぁ。





「クレイズ、あいつら多分俺らの父親が動かしている」

「そうなの?」

「ああ。俺たちはあの父親にとっては、隠しておきたい汚点だろう。その汚点が逃げ出したのだから、探しに来るだろう。連れ戻されるか、それとも殺されるか」

「……怖いね」

「ああ。でもやるしかない」




 外は何だか騒がしかった。騎士たちがうろうろしている。兄様が言うには彼らは、僕たちのことを捕まえようとしているらしい。

 自分達よりも大きな男の人たちに追われると思うと、何だか恐ろしい。





「兄様、どうするの?」

「とりあえず急いで向かう。タレス、ミズ、いくぞ」

「「はい」」




 兄様とタレスとミズと一緒に急いで馬車に乗り込む。とりあえずこの街では捕まらなかったけれど、次の街で捕まってしまうかもしれない。……兄様は最悪殺されてしまうかもしれないなんて恐ろしいことをいう。




 そういうことにはなってほしくない。僕は兄様と一緒に居たいから、兄様と離れたり、兄様がひどい目に遭うのが嫌だ。

 兄様が僕のことを守ってくれると言っているように、僕も兄様を守らないと。






「なぁ、クレイズ。もしさ――『聖女』に一人で会うことになったら、俺が前に教えた歌を『聖女』の前で歌えよ」

「兄様が、教えた歌?」

「ああ。その歌を聞けば、『聖女』は味方してくれるはずだ」




 兄様は馬車から降りて、二人きりの時にそんなことを言った。タレスとミズにはそういうことを言わなかった。兄様は僕にだけこうして秘密のようなものを伝えてくれるのだ。

 でも『聖女』様の元へ行くのならば、兄様と一緒がいいな。歌を歌うなら一緒がいいな。





 兄様は恥ずかしがって中々一緒に歌を歌ってはくれないけれど、『聖女』様の前でなら歌ってくれるかな。僕、兄様の歌声好きなんだ。兄様は僕が歌うと「可愛い」って喜んでくれていたけれども、僕は兄様の澄んだ歌声を聞くの好きなんだ。子守歌は謡ってくれてもちゃんとした歌はあんまり歌ってくれないから、一緒に『聖女』様の元で披露出来たらいいな。






 兄様たちと一緒に、『聖女』様の元を目指している。途中で出会った街の人たちは優しい人達が多かった。

 その人たちから話をきくと、僕たちは罪人のように思われているみたい。僕たちは父親の元から逃げ出したけれど、それはそんなに罪なことなのだろうか。兄様は僕と一緒に幸せになりたいとそう言ってくれた。





 ……僕はそれが、罪だとは思えない。




 僕は自分たちが過ごしていた日々に違和感なんて抱いてなかったけれど、外に出てみるとこんなにたくさんの人がいる。皆限られた世界でだけ生きているわけではなくて、もっと色んな人と関わっている。多分そちらの方が、当たり前なのだ。





 僕も兄様が笑えるような日々を過ごせたらいいな。そして兄様がやりたいと思っていることを沢山出来るような未来にしたい。

 そんなことを呑気に思っていたら、騒ぎが聞こえてきた。

 あれは僕たちのことを追ってきている人たちだ。僕は青ざめる。






「ミズ、注意を引けるか」

「はい。かしこまりました」

「え……兄様、ミズはどうなるの?」

「此処で一旦注意を引いてもらう。その後に離脱して、合流する予定だ。ミズはまだあの騎士たちに顔を知られていないだろうからな。だけど俺たちは顔を知られているだろう。特に俺たちは見た目がそっくりで、双子だからすぐばれるだろうしな」




 兄様はそんなことを言う。

 僕は不安になってミズを見る。




「ミズ、大丈夫なの……?」

「私は大丈夫です。アイルズ様とクレイズ様は『聖女』様の所へいってください」




 ミズは決意した目でそんなことを言う。

 僕はその目を見ると、止められなかった。





「ミズ……絶対に捕まらないでね」

「はい。もちろんですよ!」




 そしてミズとはそのまま別れた。その後、ミズが兄様が言っていたように騒ぎを起こしたのか、僕らの方へ追手がくることはなかった。

 僕はミズがいなくなって不安な気持ちで一杯だ。本当に『聖女』様の元へたどり着けるのだろうか。こんなに追手が迫っていて、僕たちはちゃんと目的を果たせるのだろうか。




「安心しろ。クレイズ。いっただろう。やろうとすれば出来るって言っただろう。だから、俺たちは大丈夫だ」



 兄様は自信満々にそう言った。

 兄様の言葉に僕は頷いた。




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